ネット通販の世界最大手アマゾンの米国人創業者がドイツの会社から「優れた経営者」として表彰されることに抗議して、ドイツや欧州各地のアマゾンで働く労働者や市民約700人が24日、ベルリン市内をデモ行進しました。(ベルリン=伊藤寿庸 写真も)

アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏は世界有数の大富豪。ドイツ最大の出版・メディア複合企業アクセル・シュプリンガー社は同日、「傑出したイノベーション(革新)をもたらした人物」としてベルリンの本社で同社の名前を冠した賞を授与しました。

過酷な労働条件
 これに怒ったのが、アマゾンで過酷な労働条件に苦しむ労働者。ドイツでは統一サービス労組(ベルディ)が、アマゾンと労働協約を結び、労働者の使い捨てをやめるよう求めてストライキでたたかってきました。またアマゾンが正当な賃金や税金を支払うよう求める市民も「メイク・アマゾン・ペイ(アマゾンに支払わせよう)」という団体を設立、労組とともに行動を組織しました。

 ベルリンでのデモ・集会には、23日から3日間のストを実施している東部ライプチヒや西部ウェルネなどのアマゾン労働者がバスで参集。ポーランドやスペイン、フランスのアマゾン労働者も合流しました。

世界一金持ちが
 独西部ノルトライン・ウェストファーレン州ウェルネから参加した正社員の女性は「残業手当もなく、病気で休むとボーナスがなくなる。世界で一番お金持ちのベゾス氏が、社員にまともな賃金を払っていない」といいます。

 アマゾンの配送センターで「ピッカー」(注文品をカートで集める職種)などで働く労働者の中には、繰り返しの多い単純労働で腕や肩、腰、足などを痛める人が多い。労働者の中からは「『イノベーション』を支えているのは、われわれの体だ」と悲鳴に似た声が聞かれました。

 集会では「24日にスペインのアマゾンで初めてストライキをやった。95%の社員が参加した」(スペインの労働組合の代表)、「労働協約を認めない会社には、社会が罰を与えなければならない」(左翼党のリークシンガー共同党首)などの発言が続きました。

 アクセル・シュプリンガー社 ドイツで最大の部数を持つ保守系大衆紙「ビルト」を保有する出版・メディア企業の最大手。近年はテレビやネットメディアなど経営の多角化を図っています。2015年には英経済紙フィナンシャル・タイムズの買収を日本経済新聞と争い、敗れました。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-27/2018042706_01_1.html