東洋経済ONLINE 2018年04月20日
https://toyokeizai.net/articles/-/217317

山田:フェイスブックから8700万人分の個人情報が流出した件が大きな話題になっています。
今のインターネット広告における2強といえば、グーグルとフェイスブック。広告業界に与えるインパクトも
小さくありません。

笠松:利用者のプライバシーに対する感覚は、いままさに過渡期にあると思います。問題を指摘する人たちの声は
大きいのですが、デジタルネイティブ世代が多数派になり、利便性とのトレードオフが明確であれば、
それほど問題視されなくなるのではないかと思います。

世の中のインフラとしてフェイスブックやアマゾンのようなデジタルプラットフォーマーが出てきている。
それを拒絶したり、機能を制限して使うことは可能なんだけど、たぶんそれでは日常生活が不便になるだろうなと
思うんですね。

もはやデジタルプラットフォーマーを必需品として取り込まないかぎり、生活そのものがつまらなくなって
しまう時代です。逆に、デジタルプラットフォーマーに問われているのは「プライバシーの一部を
さらすに値する満足度があるか」ということ。気に入らなければ、人は集まらない。その相互関係が
いちばん重要なポイントだと思っています。


(中略)

広告業界全体にとって最大の競合は?

(笠松:)
実は、広告業界全体にとって最大の競合がいるとすれば、それはアマゾンだと思っているんです。
あの勢いで取り扱うアイテムをどんどん増やしていったら、広告活動も彼らのプラットフォームの上で
かなりの部分が賄われちゃうかもしれない。アマゾンのレコメンド機能が最強のマーケティングに
なるのかもしれない。だから、アマゾンさんには「あなたがたは広告業界をディスラプト(破壊)
するんですよね?」って聞いてみたい。そうとは絶対に言わないでしょうけど、意識せずとも
広告業界を良い意味で破壊していくんだと思います。

僕はそのことに対して敵対心を持っているわけではなく、ある種のあこがれの心を持っています。
心の底からアマゾンって本当にすごいなあ、と思う。すごい時代になってきたな、と思います。

山田:アマゾンのサイト内でどのように表示されるかがてきめんに売り上げに影響する。アマゾンでの表示を
うまく最適化できれば、ベンチャー企業の商品であっても飛ぶように売れる。モバイルバッテリーなどの
スマートフォン周辺機器では、多くのベンチャー企業が「アマゾンで売ること」に集中することで、
効率的に成長しました。

笠松:データマーケティングでアマゾンは先端を行っており、ほかを突き放している。僕はそれでいいと思うんです。
そういうものを止められないし、止める必要はない。アマゾンという存在があることを粛々と受け止めつつ、
足りないパーツって何だっけ?と考えていく時代なのかもしれない。アマゾンがやっていないことを考え、
どうするともっとみんなが幸せになるのか、ということをやっていくのが広告業界の仕事になるのかもしれません。

山田:アマゾンが笠松さんのようなプロのマーケッターを何人も雇う日が来るのかもしれませんね。もし、
「ぜひ来てください」と言われたらどうしますか?

笠松:即、行きます。断る理由がありません。


今はルールチェンジの時代

笠松:今はあらゆるものが混沌としている時代です。カオスの時代であり、広告業界においてもゲームチェンジ、
ルールチェンジが始まっている。だから、今までにないほどの大きなチャンスがあると思うんですよ。

ゲームのルールが変わるタイミングにビジネスをできているというのは、超幸せなこと。なにしろ広告業界は
過去50年、ゲームチェンジなんてなかった。(電通の)吉田秀雄さんが築いてくれたすばらしい
ビジネスモデルのおかげで、誰も困ることなく、みんなが成長できた。それが今このタイミングでゲームチェンジ、
カオスのタイミングが来たというのは、すごくチャンス。資産をたくさん持っていない会社であっても、
何かのアイデアひとつだけで突破できる可能性がある。大手だけが勝ち組になるかどうかは、もはや分からない。
広告業にとって、今はとても楽しい時代だと思います。


(全文は記事元参照。全3ページ)