23日の東京外国為替市場で円相場が1ドル=104円台に上昇した。米大統領選でトランプ氏の勝利が判明した2016年11月9日以来およそ1年4カ月ぶりの円高・ドル安水準となった。米中の貿易摩擦への懸念や米国の政権運営を巡る不透明感で投資家心理が悪化。リスク回避から円を買う動きが強まっている。

 安全資産とされる国債を買う動きも広がった。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは前日比0.015%低い0.020%と17年11月22日以来4カ月ぶりの低水準となった。

 トランプ米政権は22日、中国による知的財産権の侵害を理由に、同国製品に高関税を課す制裁措置を正式表明した。鉄鋼とアルミニウムの関税を引き上げる輸入制限も発動する。

 米国の保護主義的な姿勢が強まり、各国の経済にも悪影響が及ぶとの見方から世界的な株安が進行。投資家が運用リスクをとる際に売られやすい円が買い戻される動きがあり、「主要通貨に対して円が全般的に上昇している」(野村証券の高松弘一氏)。

 米ホワイトハウスは22日、マクマスター大統領補佐官が辞任し、後任にボルトン元国連大使をあてる人事を発表した。「米政権運営がさらに不安定になるとの見方も投資家のリスク回避姿勢を強めている」(ソシエテ・ジェネラル銀行の鈴木恭輔氏)との声があった。

 実需面での円高圧力を指摘する声も多い。「年度末になり、国内の輸出企業が海外で稼いだ利益を円に替える需要が強い」(為替ディーラー)ためだ。市場では円高の進行余地について「米大統領選の直後に付けた101円台前半が次の節目として意識されやすい」(高松氏)との見方が出ている。

2018/3/23 10:04 (2018/3/23 13:07更新)
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28476930T20C18A3MM0000/