【シリコンバレー=中西豊紀】米フェイスブックは9日、米大リーグ機構(MLB)が2018年に主催する野球ゲームのうち25試合を独占的にインターネット配信する権利を得たと発表した。米国ではアマゾン・ドット・コムやツイッターもプロスポーツの配信権の買い取りを進めている。放送局とネット企業が番組を取り合うことで権利価格も高騰が始まっている。

フェイスブックが権利を買ったのは平日午後に開催されるシーズン中の25試合。同社としては初めての米プロスポーツの独占配信で、米ブルームバーグ通信によると、契約料は3000万ドル(約32億円)から3500万ドルに達したもようだ。フェイスブックのアプリにある「ウォッチ」と呼ぶ動画配信機能を通じて配信する。

生中継のスポーツは米国で人気の高いコンテンツとされ、動画配信の強化を狙うフェイスブックは幅広く配信権を集めてきた。17年にはMLBの同シーズン20試合分の権利を購入したほか、欧州サッカー連盟(UEFA)が主催する「UEFAチャンピオンズリーグ(CL)」の試合も配信している。

スポーツ配信は他のネット企業も注目している。アマゾンは17年にプロアメリカンフットボール(NFL)の一部試合を自社の動画サービス「プライムビデオ」を通じて配信した。グーグル傘下のユーチューブも地上波などの番組を配信する「ユーチューブTV」を通じてMLBの試合コンテンツの拡充を進めている。

ただ、資金力のある大手ネット企業同士が限られたコンテンツの配信兼を取り合うことで価格が高騰しているもようだ。NFLの試合を巡ってはツイッターが16年に1000万ドルを払った権利に対し翌年アマゾンが5000万ドルを提示しライバルを退けたとされる。

スポーツ番組はネットフリックスなど新興の動画配信企業に市場を脅かされている既存のメディアにとっても重要なコンテンツだ。米ウォルト・ディズニーのボブ・アイガー最高経営責任者(CEO)は傘下のESPNを通じたスポーツ中継のネット配信で「ライバルとの違いを出す」と話している。

ケーブルテレビを解約し動画の視聴をネット経由に一本化する若者が米国で増えていくなか、プロリーグ機構もコンテンツの新たな供給先を探している。今後も新旧メディアによる動画配信用のスポーツコンテンツの買い取り合戦は続く見通し。高騰する権利価格はさらなる再編の呼び水にもなりそうだ。
2018/3/10 9:40
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27968100Q8A310C1EA5000/