東京、大阪、名古屋の三大都市圏は地価上昇が続き、商業地が5年連続、住宅地は4年連続で値上がりした。繁華街での再開発の進展や訪日客の増加を受けて店舗やホテルの出店意欲が引き続き強い中、地方の主要都市でも地価の回復傾向が広がった。

国土交通省が19日発表した2017年基準地価(都道府県地価調査、7月1日時点)によると、三大都市圏の商業地の前年比上昇率は3.5%と10年ぶりの上昇幅となった。安倍晋三政権下の13年以降、年々上昇幅が拡大している。地方の一部にも地価の上昇が波及し、札幌、仙台、広島、福岡の地方主要4都市は商業地、住宅地とも三大都市圏を上回る値上がり率となった。

昨年の訪日客数が2400万人を突破する中、銀座や京都では店舗、ホテル需要が引き続き旺盛。全国の商業地上昇率1位は京都市で、上位10地点のうち5つを同市が占めた。米総合不動産サービスのJLLよると、1−6月期の日本の商業用不動産投資額は前年同期比15%増の2兆1950億円だった。

  都市未来総合研究所の常務執行役員の平山重雄氏は、大都市を中心に再開発の動きがあり、テナント需要も堅調だとし、「実需に支えられて地価の上昇基調は続く」と予想する。同氏は「大都市中心の商業施設への投資意欲は高いが、価格上昇や物件不足のため、投資対象が地方にも向かっている」と指摘。訪日客が増える中、「京都などの観光スポットの近隣や人気のリゾート地などが注目されている」と述べた。

  外資系法人による日本の不動産投資意欲も高く、銀座の大型複合施設「GINZA SIX」の区分所有を米ファンドが取得した。都市未来総合研の集計によると、17年4−8月の不動産売買は外資系法人の取得額は5291億円となり、Jリートの2762億円を上回り、取得額全体の4割を占めた。

地方も上昇波及
地方主要4都市での地価上昇地点数の比率は商業地が95%(前年92.4%)、住宅地は80.1%(同75.6%)に増えた。国交省によると、Jリート(日本版不動産投資信託)が投資対象とする都道府県の範囲は2001年の16都道府県から、17年3月末では45都道府県とほぼ全国に広がった。地方全体では商業地、住宅地とも1990年代初め以来の下落が続いているものの、下落幅はこの数年、縮小傾向にある。

都道府県別の上昇率のうち、住宅地は沖縄が2年連続1位。那覇市中心街では飲食店やホテルによる高い土地需要が続いており、全国の住宅地上昇率上位10地点のうち3、4位が同市だった。

名古屋は27年のリニア新幹線開通に向けた大規模再開発などが地価を押し上げ、商業地の最高価格では名古屋が大阪を上回った。名古屋市中村区は1平方メートル当たり1500万円と東京・新宿3丁目の同1600万円に近づく水準となった。

住宅需要
住宅地は雇用情勢の改善や低金利による住宅需要の下支え効果が持続し、三大都市圏を中心に上昇傾向が広がった。一方、高額物件が立ち並ぶ都心部では住宅地の上昇幅が縮小に転じた。中央区の上昇率は住宅地が4.8%(前年5.5%)、商業地は8.0%(同10.4%)と鈍化した。

東京カンテイ主任研究員の高橋雅之氏は、「都心のマンション価格は高騰し過ぎてしまっているので、開発用地は都心以外のエリアにシフトしている」との見方を示した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-09-19/OW77056JTT3M01