ソニーは27日、ミラーレス一眼カメラの新製品「α73」を3月23日に発売すると発表した。被写体を選ばず、幅広い撮影に向き、「ベーシック」と呼ぶ普及機に位置づける。プロや愛好家向けの中上位機種でシェアを高めるソニー。一眼レフに強いキヤノンもミラーレスに注力するなか、新商品投入で地歩を固める。

「革新的でなく付加価値に欠けるという『ベーシック』の概念を打ち破る商品だ」。27日、都内で開いた説明会で、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの長田康行シニアゼネラルマネジャーはα73を手にしながら断言した。

 新開発のフルサイズ裏面照射型CMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサーを採用し、2420万画素の高画質や、最大ISO感度20万4800の高感度性能を実現した。薄暗い場所でもノイズの少ない高感度の撮影ができる。画像処理システムも刷新している。

 被写体が動く状態でも瞳を検出・追従してオートフォーカスする機能も搭載した。オートフォーカスした状態で、シャッター音を出さずに1秒間に10コマの高速連写も可能としている。価格はオープンだが、市場想定はボディで23万円前後で、レンズキットで25万円前後としている。

 ミラーレス市場は拡大が続いている。17年のレンズ交換式カメラ市場では一眼レフが10.1%減少だった一方、ミラーレスは29.2%増と大きく伸ばした。スマートフォン(スマホ)などにも広く使われるイメージセンサーの開発・生産部隊とともに手がける強みを生かし、ソニーの存在感は増している。

 フルサイズCMOSセンサーを搭載したミラーレスカメラ「α7」を投入したのが、2013年。17年にプロに高く評価される「α9」、高解像度とスピードの両立を実現した「α7R3」を投入するなど、「業界をけん引してきた」(長田氏)という自負がある。当初は周囲から疑問視されることもあった戦略の確かさに、自信を深めている。

 成長市場を巡る争いは激化している。キヤノンは一眼レフで広く浸透する初級モデル「EOS Kiss」シリーズで初めてのミラーレス型を発売した。富士フイルムはハイエンド機種「Xシリーズ」で、本体の剛性も高めて過酷な環境でも使える最上位モデルを3月1日に販売を始める。低価格から上位機種まで、ミラーレス市場に向けられる視線は熱い。

 「フルサイズに限れば、α73より下のモデルをつくる理由はない」。長田氏は新商品をフルサイズミラーレスの基準とする考えを示した。どんな相手でも上位機種では譲らない。そんな気概が表れていた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27435790X20C18A2X20000/