新年早々に開催された米ラスベガスでの家電見本市や、現在デトロイトで始まった北米自動車ショーでは、各社とも自動運転などの最新技術を提案した。こうした新技術がニュースの話題にならない日はない。1月16日付日本経済新聞は1面で、島津製作所が人工知能を使って2分間でがんを判別できる装置を開発したと報じた。

技術革新によって、新しい商品がこれから続々と生まれてくるだろうが、昨今の日本企業で起こるトラブルを見ていると、肝心の「品質」は大丈夫なのだろうかと思わざるを得ない。

今年に入ってすぐに、旭硝子の子会社で顧客と取り決めた検査を一部実施せずに出荷していなかったことが発覚した。昨年は、日産自動車やSUBARU(スバル)による「無資格者の完成車検査」が世間を騒がしたほか、日本経団連会長企業である東レの子会社でも製品検査データを改ざんしていた。


「P→D→C→A」の次の文字は?
その高い品質力を持っている証のデミング賞がいま、危機に直面している。同賞取得のための「TQM(トータル・クオリティ・マネジメント)」活動をする企業が減少しているのだ。00年から17年までの受賞組織数は海外の45に対して日本は23。さらに大学から品質管理工学の講座が減ったことで、このままではいずれ審査する研究者すらいなくなる状況だという。

デミング賞凋落の理由の一つには、企業がISO(国際標準化機構)の認証取得に傾注したことが挙げられる。

TQM活動の特徴は、経営トップと現場が一体化しながら、現場で起こっている課題を解決していくことだ。その典型的な手法が「PDCAサイクルを回す」だ。組織を挙げてP(計画)→D(実行)→C(確認)→A(再実行)のプロセスを踏んで仕事をしていく。実は、Aの後にS(スタンダイゼーション=標準化)が来ることを知らない人も多い。

「サイクルを回す」というのは、いったん標準を作った後でも、再びPDCAを実行して標準のレベルを進化させていくという意味だ。繁忙であったり、生産品目が増えたり、人員の増減があったり、あるいは新しい設備が入ったりして仕事の現場は常に変化する。その変化に合わせて標準作業を進化させていかなければ、品質問題などのトラブルが起こりやすくなるのだ。

これに対して、ISOは決められているSを守っているか否かに焦点が当てられる。新しいSを創り出すことに主眼が置かれていない。たとえるならば、ISOが択一式マークシート試験、TQMが論文試験だ。TQMが衰えたことによって、上から下まで組織全体の「考える力」が低下しているのではないか。
以下ソース
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54166