日銀の黒田東彦総裁は26日、都内での経団連の会合で講演し、「賃金の上昇を促す環境は間違いなく整いつつある」と述べた。人手不足を起点とした賃上げ圧力は「企業に販売価格の引き上げや労働生産性の向上を促している」と指摘した。

 黒田総裁は「強力な金融緩和を粘り強く進めていく」とし、賃上げしやすいよう環境面での後押しを約束した。そのうえで、企業の成長には「それなりの賃金を払ってでも優秀な人材を確保していくことも必要だ」と経営者に呼びかけた。賃上げと物価上昇が共存する中で「家計や企業の支出活動が活発化していく」と展望した。

 人手不足は経済成長の制約にならないとの持論も語った。石油危機や東日本大震災でも、省エネ投資や生産拠点の再構築で危機を乗り越えてきた事例を紹介。「経済は短期的には制約と思われることがあっても、それを乗り越えていくことで成長していく」と経営者に期待を寄せた。


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