訪日外国人向けにサービス整備の必要性も指摘されているモバイルデータ通信の国際ローミングや無料Wi-Fiについて、現在の課題や今後の展望を語る「国際ローミングの世界とWi-Fiサービスの今後」と題したセッションが11月30日、「Internet Week 2017」内で行われる。

国際ローミングについては、佐々木秀幸氏(BBIX株式会社企画課課長)が「モバイルローミングにおけるInternet Cultureの導入」と題して講演する。

 国際ローミングは基本的にテレコムキャリアが担っており、実は“ブラックボックス”の世界となっているため、例えば日本からアジアの国にローミングしようとすると、ヨーロッパを経由している――といったことなどはよくある話だという。事業者同士のメジャーな接続ポイント(GRX:GRPS Roaming eXchange)がアジアにないことが原因なのだそうだ。

 こうした国際ローミングにインターネットのカルチャー、すなわち相互が対等に接続する“ピアリング”を取り入れることでデータローミングを改善しようとする取り組みを、佐々木氏が紹介する。BBIXでは、ローミングピアリングエクスチェンジ(RPX)を設置し、こうしたローミングサービスを提供。東京、香港、シンガポールに拠点がある。

 これまでローミング通信がどこを経由しているか不明でパケット代も高いという問題があったのが、ダイレクトであればコネクティビティもよくなり、料金も安くなるなど成果が出てきており、アジア間のローミングの品質はよくなっているという。

 Wi-Fiサービスについては、真野浩氏(コーデンテクノインフォ株式会社)が「安心と利便性を実現する公衆無線LANのあり方」と題して講演する。

 公衆無線LANサービスはここ数年、観光地政策などによって観光地やスタジアムなどで整備が進められているが、その一方で、なりすましWi-Fiアクセスポイントやサイバー攻撃の踏み台とされてしまう危険性などが、かねてから指摘されている。あわせて、スタジアムなどのユーザーが高密度な環境では電波利用効率の改善も求められ、無線LANの認証・接続にかかる時間を0.01秒以内に短縮する新規格「IEEE 802.11ai」(Fast Initial Link Setup)など、新技術の導入も期待されているという。

 真野氏は1996年、世界初のワイヤレスIPルーターを開発。屋外での使用が可能な仕様で製品化し、その後、1999〜2003年に最初期の公衆無線LANサービスを手掛けた経験から、11aiの標準化をIEEEに提案。タスクグループの議長を務めた経歴がある。

 折しも総務省では有識者会議「公衆無線LANセキュリティ分科会」を設置し、11月24日に第1回会合を開催。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて整備・普及が進められている公衆無線LANのセキュリティ対策とセキュリティに配慮した公衆無線LANサービスの普及について検討を開始した。真野氏は、同分科会のメンバーにも名を連ねている。

 今回のセッションでは、Wi-Fiでの認証の重要性や、Wi-Fi Allianceをはじめとした国際的なWi-Fiの動向を整理し、公衆無線LANの第一人者である真野氏が自ら、今後あるべきWi-Fiサービスについて説明するとしている。
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1093244.html