増え続ける中国からの観光客らを無許可で送迎する「白タク」が各地の空港や観光地で横行している。警察は違法なタクシー営業をしたとして、取り締まりに乗り出しているが、配車予約から支払いまでインターネット上で完結するため、摘発が難しいという。国土交通省など関係団体などとも連携し、警戒を強めている。

11月上旬の羽田空港国際線ターミナル前。大きな荷物を抱えた中国人観光客とみられるグループが次々と降り立つ。ターミナルの出口近くにある車の乗降場には、白いナンバープレートをつけた一般車両がずらりと並んでいる。一団はまっすぐに車へと乗り込むと、都心へと走り去った。

 警視庁によると、国交相の許可を得ずに客を有償で送迎するのは「白タク」と呼ぶ違法行為だ。利用を申し込む中国語の大手配車アプリには、日本国内の運転手数千人が登録され、顔写真や利用客の評価といった情報が掲載されている。訪日客向けの白タクは、アプリなどで「(運転手は)母国語が堪能で、日本国内での長年の運転経験もある」「現地のタクシーを使うよりも安い」などと宣伝しているという。

 こうした「白タク」行為は、無許可での有償送迎を禁じた道路運送法違反にあたり、大阪府警は10月下旬、中国人4人を同法違反などの疑いで逮捕した。関西空港から大阪市内まで通常のタクシーよりも3千円ほど安く運んでいた。府警によると、容疑者らが日々異なる訪日客を車に乗せ、空港と大阪市内を頻繁に送迎している実態を確認。白タクの営業をしていると判断したという。沖縄県警も6月下旬に中国人2人を同容疑で逮捕した。

 もっとも、摘発件数はそう多くなく、捜査のハードルは高い。今回の「白タク」は通常、利用希望者が中国国内でインターネットを使い、日時や場所、希望の運転手を予約し、決済する仕組み。警視庁幹部は「日本国内では支払いが行われず、利用客のクレジットカード情報などを調べない限り証拠もない。金銭のやりとりがなく、『知人を無償で送っているだけ』と説明されればそこまで」と捜査の難しさを明かす。

 全国ハイヤー・タクシー連合会(東京・千代田)の事務局によると、中国からの観光客らを対象にした「白タク」が国内で目立ち始めたのは2年ほど前から。同連合会の担当者は「タクシーを利用するはずの客が白タクに流れれば、売り上げが減少してしまう」と訴える。

 白タク行為に対応するため、関係機関は対策に乗り出している。

 「タクシー以外の車が、有料の送迎を行うのは違法です」。警視庁東京空港署員は管轄の羽田空港で、一般車両の運転手に呼びかけている。

 関東運輸局は9月末、タクシーの業界団体や空港、警察を集めた初の対策会議を実施。今後、対策を検討するという。沖縄総合事務局は今夏、中国語や英語で白タクが違法であることを伝えるチラシを作製。那覇市や石垣島の港でクルーズ船が到着した時などに配布している。

 2016年の訪日外国人客は前年に比べ、約2割増の約2403万9千人で過去最高を更新した。政府は東京五輪の20年までに4千万人に増やす目標を掲げる。警視庁幹部は「白タク営業の車両を見分けることは難しいが、地道に啓発していきたい」と力を込めた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23844530T21C17A1CC1000/