神奈川のシニア層雇用継続策は牛の歩み――。神奈川労働局が県内に本社機能を持つ企業を対象に高年齢者の雇用状況をまとめたところ、70歳以上まで働ける企業の割合は21.2%にとどまった。前年から1.1ポイント高まったものの、他県では3割を超える事例もあることから、対策が遅れている現状が明らかになった。

2017年6月時点で従業員31人以上の企業を対象に調べ、98%にあたる7127社から回答を得た。従業員300人以下を中小企業、同301人以上を大企業としている。

 70歳以上まで働ける企業は前年から108社(1.1%)増えて1509社となった。中小企業で105社増の1390社、大企業で3社増の119社だった。規模別の内訳では中小企業で22.0%、大企業で14.8%と中小の取り組みが先行している。

 神奈川労働局は「数字自体は増えているものの対策の広がりは不十分」と指摘する。70歳以上雇用の割合を都道府県別で見ると、神奈川県は35位で全国平均も下回る。首都圏では全国最下位の東京都(17.0%)は上回るものの、千葉県(29.7%)、埼玉県(24.7%)との差は大きい。

 シニア層の雇用については法律で65歳までの安定した雇用確保策の導入が義務付けられており、法律の基準に基づいた対策の実施率は県内で99.7%にのぼる。一方で法律の枠組みを超えたものとなると数字が急激に落ちるのが現状だ。

 中小企業に分類される県内のある製造業経営者は「人件費だけでなく従業員の配置の問題もあって、なかなか一足飛びに継続雇用拡大とはいかない」と台所事情を明かす。労働局は対策が遅れる大企業については「給与体系や手当などの待遇面で全従業員に不公平感が出ないような制度を設計するのに時間がかかるとの声が多い」と説明する。

 シニア雇用の拡充に向け、労働局は今後厚生労働省の外郭団体の高齢・障害・求職者雇用支援機構の神奈川支部などとの連携を強める。高齢者雇用の先進事例を紹介するセミナーの定期的な開催などを通して浸透を進めていく。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23818410S7A121C1L82000/