国民年金の保険料の滞納者に対する強制徴収の実施状況について、会計検査院が調べたところ、日本年金機構が文書で催促するなど適切な対応をしなかったために徴収できていない保険料の延滞金が、昨年度までの3年間でおよそ4億7000万円に上り、このうち1億7000万円余りが時効で回収できなくなっていることがわかりました。
国民年金には全国の自営業者などおよそ1500万人が加入していますが、保険料の納付率は65%にとどまっていて、日本年金機構は一定の所得がある滞納者に対し、未納期間分の延滞金を請求するとともに、財産を差し押さえるなど強制徴収の手続きを進めています。

会計検査院が昨年度までの3年間に25の都道府県のおよそ150の年金事務所が行った強制徴収の手続きを調べたところ、延滞金およそ4億7000万円が徴収できていないことがわかりました。

このうち1億7000万円余りはすでに時効で、回収できなくなっているということです。検査院によりますと、年金機構は延滞者が未納の保険料を支払ったあとに延滞金の納付書を1度送付しただけで、その後、文書で催促するなどの適切な対応をしていなかったということです。

会計検査院は日本年金機構に対し、延滞金についても文書や電話などで繰り返し催促し徴収するよう求めることにしています。

日本年金機構は「国民年金事業に関する検査は受けているが、詳細な中身は現時点では確認していない」と話しています。
国民年金の現状と強制徴収
国民年金は国内の20歳以上60歳未満のすべての人に加入が義務づけられている公的年金のうち、自営業者やパート従業員などが加入するもので、今月1日の時点でおよそ1503万人が加入しています。しかし保険料の納付率は昨年度の時点で65%にとどまり、2年以上滞納している人は179万人に上っています。

このため日本年金機構は滞納が続いている人に対して、文書や電話、戸別訪問を繰り返し支払いを求めていますが、それでも応じない場合は一定の所得がある人などに限り強制徴収の手続きを進めています。

強制徴収では改めて支払いを求める「催告状」や「督促状」を送ったうえで、それでも払わない場合、最高で年14.8%の延滞金を課したり、所得や資産の状況によって、預貯金など財産を差し押さえたりします。昨年度の時点で強制徴収の手続きを始める際の最終催告状の送付は8万5000件余りに上り、財産の差し押さえはおよそ1万4000件となっています。

一方、こうした未納の保険料の徴収のためには年間70億円以上の費用がかかっており、いかに滞納者を減らし、未納分についても効率的に回収していくかが課題になっています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171020/k10011183501000.html