原子力規制委員会は4日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(新潟県)の再稼働の前提となる安全審査で、事実上の合格証となる「審査書案」をまとめた。一般からの意見公募などを経て年内にも正式合格する。福島第1原発事故を起こした東電の原発が合格内定するのは初めて。福島第1原発と同じ沸騰水型の合格も初めてとなる。

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 柏崎刈羽6、7号機の審査はヤマ場を越えた。再稼働には地元の同意が必要だが、新潟県の米山隆一知事らは慎重な姿勢で、再稼働の時期は見通せない。

 審査書案は全485ページある。想定される最大規模の地震の揺れを1209ガル(ガルは加速度の単位)、想定される津波の高さを8.3メートルに設定し、耐震補強や防潮堤などの対策を講じた。電源を失って重大事故が起きるのを防ぐ対策などについても記載した。規制委はこうした安全対策について、新規制基準に適合していると結論づけた。

 規制委は東電が福島第1原発事故を起こしたことから、原発を運転する事業者としての適格性も審査の議題に取り上げた。福島第1原発の廃炉を完遂し、原発の安全を最優先する姿勢を法に基づく保安規定に盛り込むことを東電に確約させた。

 審査書案は約1カ月間の意見公募の後、正式決定される。電力事業を所管する経済産業相から意見を聞き、東電を監督・指導することも確かめる。その後の手続きで、保安規定などの審査を進める。

 これまでに、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)など6原発12基が審査に合格しているが、いずれも福島第1原発とは違う加圧水型と呼ぶ原子炉だった。沸騰水型では、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)や東北電力女川原発2号機(宮城県)などが審査中だ。柏崎刈羽原発が合格の「ひな型」となったことで今後、審査が進みやすくなるとみられる。

 東電ホールディングス(HD)は柏崎刈羽原発の再稼働を経営再建の柱と位置づけている。6、7号機が動くと、年間1千億円程度の収益改善効果がある。ただ、新潟県の米山知事は「福島第1原発事故の検証なしに再稼働の議論は始められない」という考えで、検証には3〜4年かかる見通し。同原発が立地する柏崎市の桜井雅浩市長は再稼働の条件として、1〜5号機の廃炉計画の策定を求めている。

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https://www.nikkei.com/article/DGXLASFB04H0I_U7A900C1EAF000/

2017/10/4 13:22
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21871390U7A001C1MM0000/?dg=1&;nf=1