銀行のカードローン拡大に批判が強まっています。過剰融資を懸念する声や、消費者金融並みの高金利である一方、貸金業法で定められた融資額の制限が
銀行には適用されず、多重債務対策の抜け穴になりかねないためです。金融ジャーナリスト、浪川攻さんがこの問題について解説します。【毎日新聞経済プレミア】

 ◇カードローン利用者は“大切な顧客”か

 全国銀行協会の平野信行会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)はこうした批判に対して、「資金ニーズのあるお客様に、返済能力のある
範囲内でしっかりと応えていくことを通じて健全な消費者金融市場を育成する」と反論する。だが、銀行は、カードローン利用者を“大切な顧客”として扱っているのかどうか。
銀行はそこから問われている。

 銀行が取り扱っているカードローンは通常、年率3〜14%程度の金利設定となっている。住宅ローンや企業向けローン、さらには個人向けの目的別ローンに
比べると、極めて高い金利水準と言って間違いない。もし銀行業界が、カードローン利用者を“大切なお客様”と位置付けているのならば、頻繁に利用する利用者には、
利用貢献度の高さに応じて優遇金利が提供されていい。要するに「顧客還元」である。

 ◇どれだけ利用しても変わらない「高金利」

 しかし、実際にはそのような顧客還元は行われていない。ある銀行の幹部は「頻繁に利用する人は信用リスクが高く、金利を下げられない」と言う。
したがって、カードローンなど消費者金融の領域では、利用度に応じた金利設定というメカニズムがほとんど働かないでいる。

 さらに言えば、いわゆる「貸しっぱなし」の問題がある。銀行は現在、若者を主な対象として、さまざまな金融教育のイベントを開催している。もちろん、
そのようなイベントも重要だが、むしろ、実際に借りた利用者向けの適切なアドバイスを丹念に行うことのほうが実践的な金融教育になるはずである。

 しかし、多くの銀行がそうした利用者へのフォローをしていない。「貸しっぱなし」のビジネスモデルである。平野会長が言うように「健全な消費者金融市場を育成する」
のならば、利用者向けのアドバイスはなおさら重要なはずである。

 ◇銀行は「貸しっぱなし」の“カネ貸し業”か

 海外の先進国のなかには、金融機関が消費者ローンを提供する場合、金融機関の職員が定期的に利用者を訪問して、返済計画の確認や、場合によっては
カウンセリングを行うことがルール化されているケースもある。「健全な消費者金融市場の育成」を言うのであれば、わが国でも、カードローンを取り扱う銀行は
定期的に顧客を訪問し、カウンセリングを提供したほうがいい。

 銀行の個人向けカードローン残高は、今年3月末で5兆6000億円まで膨らんでいる。その後も残高は伸び続けていると言われている。しかし、拡大すれば
拡大するほど、社会的な批判も高まるはずである。

 それを回避するには、銀行がかつての消費者金融専門会社とは異なって、「貸しっぱなし」のカネ貸し業でないことを明確に示す必要がある。金融庁の幹部も
「顧客本位の業務運営のなかにカードローンも含まれていることを銀行業界は強く認識すべきである」と、銀行業界の現状に不満げである。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170806-00000024-mai-bus_all