新しいビジネスモデルで日本の国内市場にいわば“開国”を迫っている“21世紀の黒船”が、アマゾン、ウーバー(Uber)、エアビーアンドビー(Airbnb)だ。ウーバーが日本でなかなか事業を拡大できずにいるなか、経営コンサルタントの大前研一氏が、日本でも圧勝のにおいが見え始めたエアビーアンドビーについて考察する。

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 既存業者を取り込んで“圧勝”し始めたのがエアビーアンドビーだ。日本政府観光局統計によると、2016年に日本を訪れた外国人数は過去最高の約2400万人に達したが、国内のホテルや旅館などに宿泊した人数は約1900万人しかいなかった。では、その差500万人はどこへ消えたのか?

 実はそのうち370万人はエアビーアンドビーを利用したことが判明した。違法な民泊が問題視されていたにもかかわらず、実際には日本最大のホテルチェーンよりも多くの訪日外国人客が利用していたのである。

エアビーアンドビーのホストサービス料(仲介手数料)は宿泊料金の3〜5%だ。これは、仲介手数料が宿泊料金の10%以上と言われている「エクスペディア(Expedia)」「アゴダ(agoda)」「ブッキングドットコム(Booking.com)」など従来のオンライン旅行サイトよりも格段に安い。

 そのため、もともと既存のホテル・旅館は民泊に反対していたが、集客に苦労している宿泊施設は、今や続々と仲介手数料が安いエアビーアンドビーに登録している。こうなると、もうここから先はエアビーアンドビーの天下だろう。

 たとえば、中国人観光客は大人数で来日するケースが多く、ホテルや旅館の場合は複数の客室を確保しなければならないので、宿泊費が嵩んでしまう。しかし、エアビーアンドビーならマンションの広い1室や戸建て住宅・別荘の1棟貸しがあり、大人数でも同一料金で宿泊することができる。長期出張で1か月貸しということも可能である。

 しかも、宿泊料金はホストが随時自由に決定・変更できるし、利用者からの評価やトラブル客への対策も進んでいる。エアビーアンドビーはゲストにとってもホストにとっても、極めてメリットが大きいのだ。日本ではカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と事業提携したので、いっそう市場が拡大するだろう。もはやエアビーアンドビーの“猛威”に逆らうことは不可能だと思う。

さらに6月に「民泊新法」が成立し、1年以内に施行されることになった。「年間の営業日数の上限は180日」という条件付きだが、エアビーアンドビーに登録している宿泊施設の年間平均営業日数は100日だから、何の問題もない。このままいくと、オンライン旅行サイトはエアビーアンドビーの“独り勝ち”になる可能性もあるだろう。

 すでに今年1〜5月の訪日外国人客数は1140万人を突破した。単純計算だと年間2700万人以上に達する。日本にはその受け皿となる宿泊施設がないのだから、「民泊」が最も有望なビジネスの一つであることは間違いない。
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