政府税制調査会(首相の諮問機関)は19日、総会を開き、ICT(情報通信技術)を使った納税手続き簡素化の議論を始めた。政府税調の委員がエストニアや韓国など7カ国を視察して得た先進事例について報告。外国の例を参考に、ネット上で納税手続きが完結する電子納税の拡大策をまとめる。

 日本では大企業の電子申告を使った法人税申告は5割程度にとどまっている。国税と地方税の電子申告・納税システムの連携も途上で、企業から使い勝手の悪さを指摘する声も上がっている。

 例えば国税と地方税では、電子申告でも同じ内容をそれぞれ別に入力させられるケースがある。法人を設立する届け出を電子的に手続きする時にも手間がかかることがあり、こうしたシステムの見直しが課題になる。

 国を挙げてICT化を進めるエストニアでは、国税当局が給与や社会保険料などがあらかじめ記入された「記入済み申告書」をポータルサイトで提供する。利用者はスマートフォン(スマホ)やパソコンで修正して送信するだけで手続きが終わる。

 電子申告の利用率が9割を超える韓国では、医療費控除などの情報を国税当局が収集する。あらかじめ税務手続きシステムに登録することで、納税者が必要な書類を集める手間を省けるという。

 日本でも民泊やカーシェアといった「シェアリングエコノミー」が広がり、税務当局の目が届きにくい経済活動が増えている。政府税調会長の中里実東大教授は「納税をめぐる環境変化に対し、ICT化の推進や税務情報の処理のありかたを中長期的に議論する」と話す。

 政府は規制改革推進会議で、電子納税を普及させて企業の事務作業費などを2割削る方針を打ち出した。政府税調は所得税の年末調整に必要な書類の電子化も目指す。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS19H4Q_Z10C17A6PP8000/