今回、東洋経済新報社が開催した「超・生産性会議」では、重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長、キャリア形成コンサルタントの伊賀泰代氏、そして、まちビジネス事業家でエリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉氏の3人に問題点を整理してもらい、議論を交わしてもらった。

中略

問題は「現場」よりも「マネジメント側」にあり
人材コンサルタントの伊賀泰代氏は、工場以外の生産性という前提で、日本企業の生産性の問題は、現場よりもマネジメント側にあると指摘した。

「生産性はある意味、現場の人がきびきび働いているかどうかとは関係のないところで決まる。たとえば、無駄な作業を一所懸命きびきびやっても、あるいは対価が取れないサービスを一所懸命に提供しても、生産性は上がらない。生産性の良しあしは、現場ではなくマネジメントの問題に帰着する。また生産性が低い要因は、労働賃金が安かった時代の成功体験が、そのままマネジメントの考え方に残っていて、稼ぎ方を変えようという意識が希薄だからだ」

生産性は、企業だけの目線ではとらえられない。地方行政にも、さまざまな無駄が隠れている。

エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉氏は次のように話す。「地方は、大勢の人を動かしながら、1銭にもならないことをやっていることが少なくない。夕張市はその典型例で、炭鉱が次々に閉山された後、テーマパークやスキー場の開発などリゾート開発に力を入れたものの、失敗。その揚げ句、粉飾を重ねて財政再建団体になった。また、たとえば全国にある『道の駅』は、約8割が行政の設置。わずかな成果をあげるために、過剰な投資が行われる」と指摘。補助金が入る結果、生産性が低くても、施設の運営が維持されてしまう「地方の構造問題」を指摘した。

税収不足の昨今、本当の意味で生産性を高めなければならないのは、地方公共団体のほうなのかもしれない。

では、どうすれば生産性を向上できるのか。この点について、伊賀氏は次のように説明する。

「研究活動、営業活動、人材育成、管理業務、意思決定のそれぞれにかかわっている人が、各人で生産性を向上させているかどうか自問することが肝心。たとえば人材育成なら、研修に参加することが生産性を向上させるきっかけにつながっているのか。また、意思決定にかかわっている人なら、1分1秒でも速い意思決定を行っているかどうかを、それぞれ振り返るようにする」

また、会議時間を短縮させることが生産性の向上につながるという人もいるが、「それは間違い。生産性の高い意思決定ができたかどうかが大事であり、会議時間を短縮できたかどうかは、その結果にすぎない」。
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