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 「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法の適用範囲には、会社法や法人税法、所得税法、特許法、著作権法、金融商品取引法など企業や経済にかかわる法律も多く含まれる。そのため「共謀罪法案に反対するビジネスロイヤーの会」など企業法務を専門とする弁護士は、一般の企業が摘発される危険を指摘する。(吉田通夫)

 例えば、メーカーは商品を開発する際に、過去の特許権やデザインなどの意匠権を侵害していないかなどを調べる。結果的に侵害することが判明して開発をやめても、検討した資料が残っていれば「準備行為」があったとして、摘発の対象になりかねない。

 個人も無関係ではない。退職金を節税しようと税理士に何度も相談した時、脱税と捜査機関に判断されかねない手法が含まれていたら、検討しただけで所得税法違反(脱税)の共謀罪に問われる恐れが生じるという。

 このように、共謀罪は企業などの経済活動を萎縮させる懸念が消えない。利益を上げるために法律に抵触しないか、探りながら手段を練っている企業や自営業者も、捜査機関が「組織的犯罪集団」とみなせば検討の場に違法な手段があがっただけで摘発されかねない。
 企業法務の専門家は「自由に議論できる社会でなければ、経済は発展しない」と警鐘を鳴らす。

 消せない懸念に対し、政府は「通常の経済活動は適用対象にならない」と説明してきた。共謀罪の適用対象は、一般的な企業や個人は対象外という理屈だ。
 しかし、企業が違法と判断されそうな事業や製品を計画して取りやめることは日常茶飯事で、場合によってはあえて「グレーゾーン」を攻めることもある。自営業者や個人が、弁護士や会計士らと節税対策を相談するケースも多い。こうなると捜査機関の見方次第で、違法行為を探り続ける「組織的犯罪集団」と認定される危険が出てくる。

 企業法務に詳しい上柳敏郎弁護士は「いくら政府が否定しても、法律の条文を読むと一般企業も摘発される危険はあり、まじめな企業ほど萎縮してしまう」と指摘。「自由な発想を開陳できる社会でなければイノベーション(技術革新)は起きず、経済も発展しないだろう」と語った。
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