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 政府は9日にも、平成24年12月の安倍晋三政権発足以来5度目の成長戦略を閣議決定する。これまでの成長戦略を振り返ると、数値目標が未達など「道半ば」の取り組みも目立つ。人工知能(AI)普及の取り組みも他の先進国より遅いとの指摘があり、反省を今後に生かす視点が重要だ。(山口暢彦)

 過去の戦略で成果が顕著なのは観光だ。32年を目指していた「年間の訪日外国人客数2000万人」は28年に突破し、目標は4000万人へ引き上げられた。中国人へのビザ発給要件緩和が大きい。国際的に高いと批判された法人税実効税率の20%台への引き下げは前倒しで実現し、企業統治の強化も進んだ。

 一方、目標達成が遠いものもある。25年の戦略で「32年までに先進国3位以内を目指す」とした世界銀行の「ビジネス環境ランキング」の順位は昨年、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中26位にとどまった。国内の行政手続きの数や費用が他国よりかかることが障害だ。

 年間の企業の開業・廃業数を企業全体の10%台まで高める目標も、27年度時点で開業は5・2%、廃業は3・8%にとどまる。

また、政府は昨年の成長戦略で、AIなどの活用による「第4次産業革命」を打ち出したが、大和総研の熊谷亮丸氏は「初動が遅れた。(AIが学習を繰り返し理解を深める)ディープラーニング(深層学習)導入は欧米より4年遅い」と批判する。

 モノやサービスを有償で貸し借りするシェアリングエコノミーも本格的に普及せず、熊谷氏は「既得権益層の抵抗が強い分野や、変化を嫌う国民性に触れる分野は改革が進まない。政府も企業も素早く変革を決められる組織に変わらなければならない」と訴える。

 今年の成長戦略には、企業が行政手続きに要するコストを2割削減する目標が新たに入ったが、企業がこうした仕組みを積極的に活用できるかも焦点となる。
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