日本は、資源の枯渇が懸念されている太平洋クロマグロについて、国際的な取り決めに基づいて、重さ30キロ未満の小型のマグロの漁獲規制におととしから取り組んでいますが、すでに今期の漁獲量はことし6月末までの1年間に割り当てられた量の99%を超え、上限を上回ることが確実になっています。

これについて、環境NGOのWWF=世界自然保護基金ジャパンの山内愛子海洋水産グループ長は都内で記者会見し、現在、日本を含めた各国が取り組んでいる太平洋クロマグロの漁獲規制は、長期的な目標がなく、資源管理としては不十分だと指摘しました。

そのうえで、山内さんは「日本では資格のない漁業者がマグロ漁をするなど、違反操業がたびたび行われている」と述べ、漁業規制の目標はより厳しい内容に改めるべきだと訴えました。

太平洋クロマグロをめぐっては、25日から東京で資源管理について話し合う国際会議が開かれる予定で、WWFジャパンは「日本は太平洋クロマグロの最大の漁獲国かつ消費国として大きな責任があり、より高い目標や厳しい資源回復計画の合意形成に向けてリーダーシップを期待する」という声明を出しました。

太平洋クロマグロについて、国際的な環境NGOが日本の漁獲規制をより厳しい内容に改めるべきだと訴えたことについて、マグロの水揚げ量が多い和歌山県那智勝浦町からは、資源の保護と地元産業の維持の両立を図れるか、戸惑う声が上がっています。

那智勝浦町の勝浦漁港は、長い1本の縄にいくつもの針を仕掛けて釣る、はえなわ漁による生鮮マグロの水揚げが、年間1万トン余りと全国一で、地元の暮らしを支える重要な産業となっています。

那智勝浦町にある和歌山県漁連勝浦市場では、資源の保護と地元の産業の維持の両立を今後図っていけるのか、戸惑う声が聞かれました。

丸山一郎参事は「将来的にクロマグロを残すためには規制も必要だと思うが、世界への公約を守るだけでは、地域の産業を苦しめることにもなる。国にはそうした状況も踏まえ、規制を考えてもらいたい」と話しています。


4月24日 20時17分
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