琵琶湖のアユがかつてない不漁に陥っている。昨秋にはアユの産卵量が平年値の倍以上観測され、今年初めからの漁でも豊漁が期待されたが、ふたを開けてみれば漁獲量は昨年の10分の1程度。深刻な事態を受けて滋賀県が原因を調査したところ、気候の影響で成育が遅れているらしいことがわかったが、他にも植物プランクトンの大量発生が影響している可能性も指摘され、原因の特定には至っていない。「早くなんとかしてほしい」。中には休業に追い込まれた漁師もおり、漁協関係者らはいらだちを募らせる。果たして、琵琶湖のアユはどこへ消えたのか。(江森梓)

■豊漁と思いきや…

 「45年漁師をやっているけど、こんなことは初めて。最悪の事態や」

 大津市でアユ漁を営む竹端五十夫さん(62)はこう嘆く。船を出してもアユがほとんど捕れないため、アユ漁を一時休業し、フナ漁に切り替えた。

 「隣の漁師はまだ続けているけど、捕れても1回当たりに1〜2キロ。船のガソリン代の方が高くついてしまっている。もうどうしようもない」

 琵琶湖のアユ漁は毎年12月から始まり、年明けから本格化する。県漁連によると、今年は1〜3月の琵琶湖の活アユ漁獲量が1051キロで、昨年同時期(1万2377キロ)の10分の1以下だった。

 一方、県水産試験場が昨秋に琵琶湖周辺の主要な河川でアユの産卵状況を調べたところ、推計産卵数は平年値(106億粒)の倍以上の213・8億粒だった。このため一部関係者の間では、豊漁を期待する声も上がっていたのだが…。

■沖合へ集中?

 なぜこんな事態になったのか。同試験場は、アユの成育の遅れの可能性を指摘する。

 3月中旬に沿岸の水深30メートル地点で行った通常調査では、アユは平年の3%程度の13群しか観測できず、過去最低だった。一方で、琵琶湖を東西に横断して沿岸と沖合をまんべんなく観測する調査では、昨年比1・2倍となる252群を観測した。

 昨年は9月中旬まで雨が少なくアユの産卵環境がなかなか整わなかったとみられ、観測した卵の約8割は9月末から10月初めにかけて確認したものだった。これらは10月初めから中旬ごろに孵化(ふか)したとみられ、例年よりやや遅い。

 アユは大きなものから沿岸部に移動して川へ遡上(そじょう)する習性があり、今年はアユの成育が遅れているため、沖合に偏って分布しているとみられるという。同試験場は、沿岸でまとまって漁獲され始めるのは4月以降になると推測する。

■琵琶湖の異常事態か

 しかし他にも気がかりな要因がある。ある外来植物プランクトンが琵琶湖で大量発生しているのだ。

 その名は「ミクラステリアス ハーディ」。オーストラリアやニュージーランドなどで生息が報告されているが、日本の湖沼では珍しい。県琵琶湖科学環境センターによると、琵琶湖では数年前から時々観察されるようになり、昨年11月から12月にかけては北湖中央部で前年の約10倍の量が観察された。

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2017.4.24 12:00
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