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[東京 19日 ロイター] - 日銀は19日、金融システムの現状と展望をまとめた「金融システムリポート」を公表した。低金利環境が長期化し、人口減少で地域経済の縮小が懸念される中、金融機関同士の競争激化に対し、一段と収益力を弱め、経営を不安定化させるリスクがある、と警鐘を鳴らした。

近年、増加を続けている不動産向け貸し出しのモニタリングも強化する。

今回のリポートでは、低金利環境の長期化によって金融機関の預貸金利ざやの縮小が続く中、収益減や人口減少などの構造要因を背景とした、金融機関間の競争激化の現状と経営への影響を初めて分析した。

分析の結果、地域金融機関の市場支配力はほぼすう勢的に低下しており、「金融機関間の競争が強まっていることが確認できる」と指摘。貸出・金利引き下げ競争激化の背景には、長めの金利の低下に伴う国債投資妙味の低下や、地方圏を中心とした人口減少による顧客の囲い込み、地方から都市部への出店増の影響が大きいことが分かった。

今後も地方を中心に人口減少が避けられない中で、「競合する金融機関数に変化がない場合、金融機関は一層厳しい競争環境に直面する」とし、金融サービスに対する需要の減少が「人口減少という各金融機関にとって共通のショックで引き起こされている場合、過度の競争を通じて全体として経営を不安定化させるリスクがある」とした。

リポートでは「提供する金融仲介サービスの均質化が進んでいる」とも指摘。収益の改善には「金融機関間の合併・統合も選択肢の1つ」とする一方、「金融仲介サービスの差別化など、個々の金融機関が自らの強みを活かした取り組みを進めていくことも重要」と多様なビジネスモデルの展開も促している。

近年、急速に伸びている不動産向け貸出について「全体として過熱の状況にはない」としながらも、一部のJ─REIT(不動産投資信託)投資の動向など「引き続き注意深く点検していく必要がある」との認識を示した。

中でも増加が著しい賃貸アパート・マンション向けは「地域によっては、賃貸住宅の空室率が高まっている」とし、「これまで以上に入口審査や中間管理の綿密な実施が重要」と指摘。不動産向け貸出を増加させている金融機関へのモニタリングを強化していく方針を示した。

(伊藤純夫 編集:吉瀬邦彦)

2017年 4月 19日 9:01 PM JST