「『モーレツ社員』という考え方自体が否定される日本にしていく」。残業時間に罰則付きの規制などを盛り込んだ政府の「働き方改革実行計画」は、力強くこううたい上げた。しかし、かつての「モーレツ社員」は危惧している。「一生懸命働くことが否定され、自分が社会に貢献しているという手応えを失ってしまわないだろうか」と。家電販売に革命を起こした“リアル島耕作”が、政府の働き方改革に加え、東芝など没落する電機メーカーを一喝した。(社会部 天野健作)

■藍色のロゴ「it’s」

 昭和35年に三洋電機に入社し、35年間勤めた熱田親憙(ちかよし)さん(80)=大阪府寝屋川市=は、家電業界の中では知る人ぞ知る伝説の人物だ。

 三洋は59年、一人暮らしを始める大学生や社会人を対象に、小型で低価格な家電シリーズを売り出した。後に藍(あい)色のロゴが有名になった「it’s(イッツ)」だ。熱田さんはそのプロジェクトを主導し、デザイン家電の先駆者となった。

 「新しいことをやるときは楽しかった。ロマンだね。業界にムーブメントが起きて、押せ押せムード。売れに売れた」

 熱田さんはこう振り返る。ダイエーの「価格破壊」が下火になりつつあり、「安ければ売れる」が通用しなくなった時代。そこで熱田さんは価格や性能ではなく、「コンセプト」を前面に出し、「生活文化」を提案することで売ることを考えた。

 入社当時は宣伝部に所属し、マーケット調査に携わった。旧弊に縛られず、新しい道を開拓した熱田さんの働き方は、漫画「島耕作」に通ずる。島耕作も大手電器メーカーに勤め、宣伝広告業を中心に、自らの信念に基づいて行動したサラリーマンだ。

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2017.4.19 12:00
http://www.sankei.com/premium/news/170419/prm1704190002-n1.html