海、北京、広東省広州など、中国の大都市では2016年から「自転車シェアリング」が爆発的に増殖している。騰訊科技などの中国メディアが2017年3月9日付で中国自転車協会の統計として伝えたところによると、既に全国30強の都市で自転車シェアリングを導入しており、台数の合計は200万台。うち上海は45万台で、1都市の規模としては世界最大。中国全土で参入企業は15〜20社だという。

 図1は、上海市内に駐輪された自転車シェアリング用の自転車である。提供している企業ごとに、黄色、オレンジ、水色等々フレームカラーやスタイルを変えて特徴を出している。このおびただしい数と色を見れば、確かにものすごい勢いで普及していることが分かると思う。

 自転車シェアリングは、日本でも導入する自治体が増えている。中国と日本を比較すると、同じ所もあれば、全く違うところもあって面白い。利用料金が掛かることや保証金が必要なこと、利用料金を電子マネーやクレジットカードで払うところなどは同じだ。最も違うのは、自転車の乗り捨て方だろう。

 図2は、横浜市の自転車シェアリング「横浜コミュニティサイクルbaybaike」の自転車ポートだ。自転車シェアリングといって日本人がイメージするのは、この写真のようなものだろう。

 市内何カ所かにある決められた自転車ポートに出向き、設置してあるICカードリーダーに登録したICカードをかざすか、スマートフォン(スマホ)にインストールした専用アプリで受け取った暗証番号をポートに設置してある機器に入力。自転車の施錠を解除し、利用を終えたらまたポートに返却しに行ってクレジットカードなどで料金を支払う、というものだ。

 利用の説明文に「どこで乗り捨ててもOKだからとても便利。借りたのと同じ場所に返却しに行く必要はありません」と書いてあっても、もちろん、ポート以外の場所に乗り捨てるのはNGだ。

 日本人の感覚なら「そんなこと当たり前だろう」と思うだろうが、中国の自転車シェアリングは自宅前、バス停、地下鉄駅、会社の前、交差点などの路上、コンビニの前などなど、どこで乗り捨てても構わない(図3)。

最近になって、自転車シェアリング各社が、「できればここに止めてくれるとうれしいな」的に、特に利用者の多い駅やバス停近くの路上に白線で描いた囲いを設けることが増えてはいる(図4)。ただ、それはあくまで目安であって、日本のように自転車ポートに必ず返さなければならないというシステムではないのだ。

■本当に「どこでも乗り捨て」

 ここで「自転車ポートがなければ、どこに自転車があるかも分からないじゃないか」と疑問に思う読者もいるだろう。

 では、どのようにして自転車がある場所を把握するのかというと、スマホにインストールした専用アプリである。自転車にGPS(全地球測位システム)を搭載することにより、スマホの地図上で自転車の分布が一目で分かる仕組みになっている(図5)。

 さらに自転車の解錠もスマホを自転車に付けられたQRコードにかざすか、借りる自転車のダイヤルロックの番号がスマホに送られてくるというスタイルだ。決められた自転車ポートに施錠・料金精算の機器が固定されている日本の方法とは大きく異なる(図6)。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO14644070Z20C17A3000000/?n_cid=DSTPCS003