柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
7/15(金) 10:24
 
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今回の研究レポートは……。
子どもが友達とケンカになったときの罵り言葉といえば、「いつ言った? 何時何分何秒? 地球が何回まわったとき!?」である。
もう何十年も使われ続けているようだが、考えてみれば立派ではないか。ケンカの最中に「地球の回転数」を考えようというのだから。
まあ、子どもたちはそんなつもりじゃないのかもしれないけど、科学的にはなかなか興味深い問題だ。
地球がこれまで何回まわってきたかを細かく計算して、誰かに「いつ言った? 地球が何回まわったとき!?」と言われても、冷静に対処できるようにしておこう。





◆自転は遅くなっている
地球は1日に1回、自転している。また、1年に1回、太陽のまわりを公転している。その「1年」とは、正確には365.25219040日だ。
地球が生まれたのは、46億年前と考えられている。太陽のまわりを回っていた岩石が集まってできたので、生まれたときから自転も公転もしていた。
そして本日は、2022年7月15日。
ちょっと強引だが、本日からピッタリ46億年前に地球が誕生した、と仮定しよう。
その場合、上の要素から、地球が22年7月15日までに自転してきた回数を計算すると、次のようになる。
365.25219040×46億=1兆6801億6007万5840回
よーし、明日からはこの数字を使ってケンカしよう! と思ったあなた、少しお待ちいただきたい。
科学的にきちんと考えるなら、この数字はまだ甘い。
なぜなら、地球の自転のスピードは一定ではなく、少しずつ遅くなっているからだ。
生物が化石に残した痕跡から、6億年前、1日は22時間だったことがわかっている。つまり、地球は22時間で自転していた。
また地球が誕生した46億年前は、1日は4時間だったとも、6時間だったともいわれている。いまよりはるかに速くグルグルまわっていたのだ。
なぜ地球の自転が遅くなっているかというと、その原因は「潮の満ち引き」にある。
地球の「月に向いた側の海面」は、月の重力に引っ張られて盛り上がっている。また、反対側の海面は、他の場所より月の重力が弱いので、やはり盛り上がっている。
このため、宇宙から見ると、海はわずかにゆがんで、卵のような形になっている。
その盛り上がった海に、地球の自転によって、陸地がぶつかる。これでエネルギーが失われるため、地球の自転は少しずつ遅くなっている。
こういった状況まで考慮に入れて計算するならば、地球が22年7月15日までに自転した回数は、3兆1184億5150万4961回となる。
また、別の日の回転数を知りたければ、ここに「22年7月15日から知りたい日までの日数」を足せばよい。
たとえば、2023年1月1日なら、7月15日から170日経っているわけだから、右の回転数に170を足して、3兆1184億5150万5131回。ふむ。これで「地球が何回まわったとき?」と聞かれても、科学的に正しい答えを返せることになる。

https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagitarikao/20220715-00305673