今回の自民党総裁選の「有力候補」と目される人物が、選挙の顔としてどのような人々から支持を集めているのか、
これまでに行われてきた各種世論調査のデータをもとに紹介していきたい。

■支持トップの石破氏
石破茂元幹事長は、長らく「ポスト安倍」を問う各社世論調査の結果で筆頭に名前が挙がってきた人物だ。
しかし、その内訳を見ると、立憲民主党を中心とする野党支持層からの支持が厚かったのが特徴だった。

6月の朝日新聞の世論調査でも、次の自民党総裁に相応しい人として石破氏は立憲民主党・
国民民主党両党の支持層の50%以上から支持を得ている。こうした傾向は、長らく各社の調査で共通するものだ。
数字上は、よく言えば野党支持層に食い込める候補であり、悪く言えば肝心の自民党支持層からの支持が微妙な候補だった。

ところが、最近はその傾向が変わってきている。安倍首相の支持率が下がり、どことなく退陣が近づく雰囲気の中で、
自民党支持層からの支持も多くなっているのだ。今月中旬のJX通信社と選挙ドットコムの合同調査(電話調査)では、
石破氏は自民党支持層から約2割の支持を集めている。
この割合は、安倍氏を除くと最大だ。3度の総裁選出馬経験があり、知名度の高さも手伝ってか次の総裁候補として名前が挙がりやすくなっている。

性別で見ると、女性よりも男性の方が支持が多い。また、年齢層別で見ると、比較的高齢の層の支持が厚い。
これらもまた、安倍政権を支持しない層の傾向と似ており、
同氏を支持する世論は知名度のみならず「反・安倍」のスタンスにも依っていることが窺える。

■若い世代から支持される河野氏、菅氏
現職の防衛大臣である河野太郎氏は、複数社の調査で、40代までの比較的若い世代では石破氏に迫る支持を得ている。
今月中旬に実施したJX通信社と選挙ドットコムの合同調査では、20代、30代からの支持で石破氏を上回った。

比較的若い世代から支持される傾向にあるのは、菅義偉官房長官も同じだ。
前述のJX通信社と選挙ドットコムの合同調査では、菅氏は主に20〜40代で一定の支持を集めている。
6月の朝日新聞の世論調査でも、30代からの支持の割合が最も高かった。

これまで菅氏は公に出馬の意欲を示したことはなく、且つ世論調査も安倍氏が自民党総裁に在任している前提で、
安倍氏を含めた質問を行っていた。
こうした状況のためか、菅氏の名前はそもそも回答として挙がりにくい傾向にあったが、
今後仮に出馬し、本命候補と見なされるようになれば、安倍首相の支持基盤を受け継いで大きく数字を伸ばす可能性もある。

現在環境大臣を務めている小泉進次郎氏は、主に50代までの比較的若い世代から支持を集めている。
とはいえ、高齢層からの支持の割合も他候補と比べて低いわけではなく、全世代で一定の支持があるのが特長だ。
知名度先行タイプの内容と言える。

一方で、長らく安倍氏の「意中の人」と見られてきた岸田文雄政調会長は、そもそもの知名度の低さが祟ってか、
世論調査では支持すると答える有権者が少ない。そのため、内訳から支持者の傾向を読み解くのは難しい。

8/30(日)
米重克洋 報道研究者 JX通信社 代表取締役
https://news.yahoo.co.jp/byline/yoneshigekatsuhiro/20200830-00195654/

■上記の記事は、ポスト安倍の世論調査で菅氏が支持トップの調査結果が出る前の記事