雷が大気中で核反応を引き起こし、
自然界にほとんど存在しない反物質(陽電子)を生み出す現象を、
京都大の榎戸輝揚特定准教授や東京大などの研究グループが突き止めた。
世界初の観測成果として、英科学雑誌ネイチャーで23日発表する。

研究チームは、雷の仕組みを解明するため、冬に雷雲が頻発する日本海沿岸に注目。
新潟県柏崎市に、雷による高エネルギーのガンマ線の観測機器を設置した。
2017年2月、雷雲が機器上空を通過した際、
雷発生から0・05秒後までの間と、35秒後にそれぞれガンマ線を検出した。

雷発生直後のガンマ線は、大気中の窒素の核反応で生成された中性子によるものとみられる。
窒素の核反応では中性子ができた後に陽電子も生じることが知られている。
35秒後の数値は約0・51メガ電子ボルトで、
陽電子と電子がぶつかって消滅する際の特徴的な値と一致した。
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理論的に予測されていた雷による核反応と、
反物質を含む雲が一時的に存在することを直接計測した世界初のデータという。

今回、研究資金の一部を市民から募る「オープンサイエンス」の手法をとっており、榎戸准教授は
「市民参加型の研究で最先端の成果を得られた意義は大きい。より多くの観測機器を配置し、
 全ての雷で核反応が起こるか検証が必要だ。将来的に落雷予測にもつなげたい」と話している。

■反物質
通常の物質と質量などが全く同じだが反対の電気的性質を持ち、物質と衝突すると消滅する。
初期宇宙には、物質とともに大量にあったが、現在の宇宙にほとんど存在しないと考えられている。
マイナスの電荷の電子とは反対のプラスの陽電子や、陽子に対する反陽子などが見つかっている。

以下ソース:京都新聞 2017年11月23日 03時00分
http://www.kyoto-np.co.jp/environment/article/20171122000201