沖縄県の翁長雄志知事は7日、県庁で記者会見し、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、政府が進めている埋め立て工事の差し止め訴訟を、国を相手に提起する方針を発表した。20日開会予定の県議会定例会に議案を提出する。議案は7月14日予定の最終本会議で可決される見通しで、沖縄県は可決後速やかに提訴する。あわせて判決が出るまでの工事中断を求める仮処分も申し立てる方針。

 辺野古移設をめぐっては、仲井真弘多前知事による埋め立て承認の取り消しを求めた翁長氏の処分について政府と沖縄県が訴訟を繰り広げ、昨年12月の最高裁判決で県側の敗訴が確定した。双方の対立は再び法廷の場に持ち込まれる。

 漁業権が設定された水域で海底の岩石などを壊す作業には知事の岩礁破砕許可が必要だが、政府は地元漁協から漁業権放棄の同意を取り付けたことを理由に、3月末で期限が切れた許可を更新せず、4月25日に埋め立て護岸工事に入った。

 沖縄県側は「知事の免許が出ていないため漁業権は消滅せず岩礁破砕許可は必要」と主張。許可を申請するよう複数回、沖縄防衛局に行政指導した。しかし同局は「許可は不要」とする水産庁の見解を根拠に工事を進めている。県側は、工事が県の漁業調整規則に違反しているとして提訴に踏み切る判断に至った。

 翁長氏は会見で「政府はなりふり構わず埋め立て工事着手という既成事実を造ろうと躍起だ。かけがえのない財産である辺野古の海を埋め立て、基地を建設することは到底容認できない」と強調した。

 もっとも、審理対象となる「法律上の争訟」に当ることなどを裁判所が認める必要があり、県の訴えが門前払いされる可能性は小さくない。それでも翁長氏が提訴を決断した背景には、辺野古移設反対を叫ぶ支持基盤の「オール沖縄」の結束が揺らぎつつあるなか、工事を座視していては県政への不満や不信が強まるとの懸念がある。政府関係者は「翁長氏は無駄を覚悟でファイティングポーズをとっている」と指摘する。

 翁長氏はこの日、「あらゆる手法を用いて辺野古に新基地を造らせないとの公約実現に向け、不退転の決意で取り組む」と述べ、前知事による埋め立て承認の「撤回」を最後のカードとして温存する考えを示した。だが撤回に踏み切っても政府に執行停止で効力をなくされるため慎重にならざるを得ないのが実情だ。

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