近年、自動車が絡む人身事故に対しては厳罰が求められるようになりました。
平成19年以前は、自動車による人身事故は刑法第211条第1項の「業務上過失致死傷罪」が適用されていました。しかし、過失とは到底いえない危険な運転により人を死傷させた事故が相次いだことから、自動車などによる人身事故の罰則強化を求める声が高まりました。自動車運転過失致死傷罪は、刑法の業務上過失致死傷罪から交通事故に関する規定を独立させたもので、最高刑は懲役5年から7年に引き上げられています(刑法211条第1項にも業務上過失致死傷罪がそのまま残り、飛行機事故や船舶事故、医療事故、労災事故が適用対象となります)。
刑法208条の2には、危険運転致死傷罪が設けられています。危険運転致死傷罪もまた厳罰化の一連の流れを受けて平成13年に新設されたものです(平成19年には自動二輪も対象になりました)。具体的には(1)アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態での走行進行を制御することが困難な高速度での走行、(2)進行を制御する技能を有しないでの走行、(3)人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転、(4)赤信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転など、以上のような運転行為により死傷事故を起こした場合に適応されます。
しかしながら、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態」などの立証が困難なケースが少なくないことから、平成19年に自動車運転過失致死傷罪が新設されました。