【軒並み】今買えばいい株1071【暴落】
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市況1板
http://hayabusa8.5ch.net/livemarket1/
・証券コード、銘柄名を併記してください。
・判断材料をできるだけ明確にお願いします。
・注目銘柄の事実に基づいた情報共有が目的なので、単なる買い煽りや自慰行為は控えてください。
*コテハンを付ける方は投資一般板やみんかぶ、ブログやツイッターを強く推奨しています。
*ブログの宣伝行為、スレの私物化は控えてください。
*コテハンなどの話は別のスレでお願いします。
*オマエら丁寧な言葉を使って下さい。下品です。
●風説、店板、インサイダーなどの通報はこちら
証券取引等監視委員会 情報提供窓口
http://www.fsa.go.jp/sesc/watch/index.html
〇5ちゃんねる初心者の方は必ず使用上のお約束をお読みください。
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避難所
http://jbbs.shitaraba.net/business/5380/
●次スレは原則>>700が立てること
※スレ番が正しいか確認してから立てること。
※重複を避けるためスレ立てする前に、既に次スレが立っていないか確認してから立てること。
※スレタイに特定の銘柄名をつけるのはやめましょう。トラブルの原因です。
※スレタイの先頭には【急騰】を、途中には通し番号をつけるのをお忘れなく。
※700はホスト規制などでスレ立てができない場合、その旨を明示し、即日退場すること。
※700がスレ立てできないことが分かった時点、或いは800以降次スレがなければクソコテが立てること。
(乱立防止のためスレ立て宣言推奨) 」
※前スレ
【急騰】今買えばいい株11066【含み益は何処?】
http://egg.5ch.net/test/read.cgi/stock/1537916893/
【急騰】今買えばいい株11067【KATERU】
http://egg.5ch.net/test/read.cgi/stock/1537923128/
【急騰】今買えばいい株11068【ねえのかよ】
http://egg.5ch.net/test/read.cgi/stock/1537933121/
【急騰】今買えばいい株11069【○○長官相場】
http://egg.5ch.net/test/read.cgi/stock/1537936404/
※前スレ
http://egg.5ch.net/test/read.cgi/stock/1537944427/ 混沌未分天地乱,茫茫渺渺无人?。自从?古破?蒙,?辟从?清?辨。 覆?群生仰至仁,?明万物皆成善。欲知造化会元功,?看西游?厄?。 盖?天地之数,有十二万九千六百??一元。将一元分?十二会,乃子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥之十二支也。
?会?一万八百?。
且就一日而?:子?得?气,而丑???;寅不通光,而卯?日出;辰?食后,而巳?挨排;日午天中,而未?西蹉;申??而日落酉,戌黄昏而人定亥。
譬于大数,若到戌会之?,?天地昏?而万物否矣。 再去五千四百?,交亥会之初,?当K暗,而??人物?无矣,故曰混沌。又五千四百?,亥会将?,?下起元,近子之会,而?逐??明。
邵康?曰:“冬至子之半,天心无改移。一?初??,万物未生?。”到此天始有根。 再五千四百?,正当子会,?清上?,有日有月有星有辰。
日月星辰,?之四象。故曰天?于子。又?五千四百?,子会将?,近丑之会,而逐???。
《易》曰:“大哉乾元!至哉坤元!万物?生,乃?承天。”至此,地始凝?。 再五千四百?,正当丑会,重?下凝,有水有火有山有石有土。
水火山石土,?之五形。故曰地辟于丑。又?五千四百?,丑会?而寅会之初,?生万物。?曰:“天气下降,地气上升;天地交合,群物皆生。
”至此,天清地爽,??交合。 日本和装の株主優待は結構いいな
いつの間のプレミアム倶楽部に変更になったんだ カスBー本体がが2160で買いまくってんなwwwwwwwwwww 哀れな極東
投資歴22年を舐めるでない
極東630明確に抜けて推移することは絶対に無い
そうなったら首でもなんでもつってやるよ
レス保存しておけハゲどもw 哀れな極東
投資歴22年を舐めるでない
極東630明確に抜けて推移することは絶対に無い
そうなったら首でもなんでもつってやるよ
レス保存しておけハゲどもw >>70
なに系の会社なのか?面接官たまにやるからアドバイスになればだけどな ショーケース、フォロワー数気づかれたかwwwwwwwwwww 哀れな極東
投資歴22年を舐めるでない
極東630明確に抜けて推移することは絶対に無い
そうなったら首でもなんでもつってやるよ
レス保存しておけハゲどもw わいせつ行為をした中国籍の男逮捕
男は自宅でアダルトビデオを見た後、外をうろうろしていたと供述
TBSの女子アナこれ読みながら思わず笑っちゃってたけどええんか?w ここいま買えスレですらないぞ
みんなこっちいるぞ
【急騰】今買えばいい株11074【ちゃんと建てろや】
https://egg.5ch.net/test/read.cgi/stock/1538023919/ さて、ノーベル生理学と化学関連でも仕込んでおくか。
このギャンブル性が堪らないんだよなwww たてる何とか底は打ったみたい
服部幸應のちんぽこウェルテイスト 前回8連騰後に6連敗してるからなぁ
まあ今年は月初はポジ軽く >>93
え???
まさかまだリバ狙いしてんの???www >>95
だた
え???
まさかまだリバ狙いしてんの???www 丸紅とか総合商社くっそ強いし伊藤忠売った奴アホなん? シノケン上がらないと立てないとか700言ってたからな 遂にここまで来た!
スプレッド『ドル円0.0pips〜 』『ユーロドル0.3』
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もはや国内業者でやる意味無し?
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シノケンそろそろ上がれや
750 名前:山師さん[sage] 投稿日:2018/10/01(月) 13:45:02.68 ID:L8zOuTRx [6/6]
シノケン上げないとスレTATENAI
TATANAI ソフロン引け前に120ぐらいまでダイブするパターン 俺twitterやってないしここだけなんだよね早よたてろや ネオスウソでしょ?
トイレ行ってたら
乳首おったた フロンティア切らされたわ。
たちわりーな。
こっからは買えんし。 ネオス材料出るはず
ウソでしょ?
乳首がおっタタなの ネオス材料出るから
買いホールドで行く
乳首がおっタタの ネオスやめてこれ以上下げないひで
損でちゃうカマドピュ んなによ
イケズうううううううううううううううううううううううううううううううう
ウホ ネオスどうなんのよ引けまでに
ちんちん挿れてほめて ネオスやばい嵌められたかもあたひ会費高いから肛門から粒あん 駄目だ!ポークビッツさんの言葉のチョイスは真似できない!! さすがのポークビッツマンもペニルンには愛想尽かしたようだね 台風24号 どこかの猫が家の中に避難しにきたよ、という報告が続々「知らん猫おる」「突然の訪問」 [741292766]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538373543/ ラーメン屋で120キロのデブが男性踏んで死なせた後「最後の晩餐だ」と言いラーメンセット注文 [264950841]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538298346/ 【高校・大学】「学費無料・定員100人」こういう学校作ったらいきなり偏差値75の学校出来ね? [816970601]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538399013/ 4大たまにやってるのを見かけると嬉しい番組 「SASUKE」 「大食い王決定戦」 「オールスター感謝祭」、あと一つは? [604928783]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538381522/ つぼみさん、ピアノを購入、自宅に搬送した際に、Hビデオがあることを業者の人に見られてしまい赤面 [832445921]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538311175/ 最近、自民党の生活保護者いじめって国民の「民意」なんだなって気付いた これって凄く恐ろしい事じゃないか…? [582136955]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538270115/ 親「家は貧乏だから私立の中学に行けないから諦めて」子供「こんな貧乏な家に産まれたくなかった」 [509143435]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538292015/ 沖縄の26歳シングルマザー「日本は神様に守られているから沖縄を狙う中国の方に台風が行くんだよ!」 [741292766]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538401816/ ZOZOのオーダースーツ、もうめちゃくちゃ オーダーなのにサイズがおかしい、遅延に次ぐ遅延で商品が届かないなど [166962459]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538354057/ 世界に誇る日本の木材。圧倒的な芳香と高級感でセレブを魅了するヒノキ。強靭で耐久性のあるケヤキは質に拘るプロ達の憧れである [626952319]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538383984/ 【悲報】11月の中旬に高認のテストがあるんだけど、まっったく勉強してない。本気でヤバイ。どうすればいいの。 [676450713]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538395596/ 【悲報】定食屋「IHしか知らないゆとり中学生がコンロの火に驚いて水かけて壊れたので休業です」 [324064431]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538321027/ なぜ車は信号機のない横断歩道で止まらないのか 「ドライバーの意見に触れないのはおかしい。止まったらかえって危ない」 [324064431]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538404204/ JRってどうして台風のたびに同じ失敗を繰り返すんだ? 間引き運転やめて午前中は運休にするだけでよい話じゃん [945517963]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538396106/ 【悲報】 テレ朝・モーニングショーさん、沖縄県知事選を完全スルーか? 樹木希林の葬儀に30分くらい費やす [582136955]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538354285/ 「ガンスリンガー・ガール」って内容がガチ過ぎてオタもドン引きだったな。オタはまどマギみたいなゆるふわ萌えアニメでも見てなさいw [954437832]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1538200549/ シカゴファンドの投資戦略
CHICAGO FUND INVESTMENT STRATEGY
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SELL:Dollar/yen
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世界成長曲がり角=見通し下方修正も (IMF専務)
貿易紛争の代償 見通し下方修正も
日本やユーロ圏に「減速の兆しがある」
ワシントン時事
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事
●各国が同時に成長軌道に乗る局面が曲がり角に差し掛かっている
●深刻化する貿易摩擦などを憂慮、来週公表する世界成長見通しが下方修正される可能性
●日本やユーロ圏に「減速の兆しがある」
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19年の景気は停滞期へ 米国は今がピーク
●ドル円:5%下落
BNPパリバのエコノミスト
来年は今年に比べると各地域経済成長が減速していく。米国の成長加速はすでに終盤に入ってきており、関税引き上げが中国の成長を下押ししてしまう
●合意なきBrexit ポンド実効為替レート: 25%下落
●イタリアの財政悪化 ユーロ実効為替レート: 10%下落
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SELL:Dollar/yen
ドルが下落に転じる転換点にきている ドルはすでに最高地点
インベスコの債券グループのポートフォリオマネジャー
●年末までに104円も
BNPパリバ・アセット・マネジメント
●年末までに104円も
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●米FRB、追加利上げの必要なし=ミネアポリス連銀総裁
10月2日
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中間選挙で民主党が有利な情勢 弾劾の声は高まる
民主党が議会の主要委員会での決定権を握れば
●トランプ氏の経済活動やセクハラ疑惑などについて、調査に着手できる
●民主党が下院で過半数を確保すれば、トランプ氏弾劾を求める声はさらに高まることが予想される
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株式投資への増税が19年度税制改正で浮上、軽減税率の財源確保で
相場は今年がピーク
●株式課税
前回10⇒20% 今度は25or30%
●消費税10%+株式課税=株価は下落へ オバマ前大統領が、2012年の一般教書演説で「がん細胞だけを殺す新しい治療法が実現しそうだ」と世界に誇ったように、これまではアメリカで研究が進められてきました。
そして遂に、国内での治験が、国立がん研究センター東病院で始まりました。
実は、世界が注目する、その研究を主導しているのは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の日本人研究者、小林久隆主任研究員なのです。
世界の製薬トップ50社中41社でMetrohm NIRSystemsの近赤外分析計が採用
↓
〇〇〇はMetrohm NIRSystems社との40年の関係
※Metrohm NIRSystems社は近赤外分析のパイオニアであり18,000を越す実績を持つ世界のリーディングサプライヤー
●Mira M-3:FDA 21 CFR Part11準拠。
医薬品の原料受け入れ検査に最適。
●Mira-DS:税関・治安・防衛向け。
不法薬物や危険物の検知、発見。 リニカルの下落すげーな
上でつかんだ奴どうすんだ? アルベルト買い増し。
これは貼り付くでしょ。
メチャ買ってる奴いる。 防衛関連は買っといたほうがいいかな
お守り代わりに 9176佐渡汽船 260円+5円
日朝首脳会談の開催期待で、佐渡の観光増加も期待で注目されます。 3694 オプティム
逆日歩 9.5円 注意喚起(2018年9月5日)
本日火曜日、今日もそうなら28.5円(100株で2850円)
http://www.taisyaku.jp/search/detail/pcsl/4795 6425 ユニバーサルエンタ
逆日歩 高料率8円
注意喚起(2018年9月27日)出ています。
今日最高料率なら12.8円(100株で1280円)
http://www.taisyaku.jp/search/detail/pcsl/5136 任天買ってない奴ww
ガイジン好きだぞこういう材料w 2019年後半って普通に変更もありえるぐらい先やな アマガサ買って2、3年寝かしとけばなんとかなるだろ(鼻ほじ) SBI証券
【2018年11月末まで500円⇒5,500円に大幅アップ!】
口座開設+5万円入金+アンケート回答だけで現金5,500円
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期間 2018/09/30(日) 〜2018/11/30(金)
※取引の必要なし、入金のみ
※家族で4口座作れば合計22,000円
. みずほって毎日出来高トップ3入り記録を目指してんの?www 周瑜ってまだツイッターやってるの?もうサムライとか恥ずかしくて出てこれないよねw ダウ先wwwwwwwww
おんぎぃいいいいいいいいいいいいいいいwwwwwwwww 以前予言して2ヶ月遅れて現実化してきた新興、マザーズの大暴落が始まったようだ。
下がる時は新興株は日経平均の倍以上の下落で長く続くので、恐らくマザーズ指数800までは一気にいきそう。
ここは1日か2日程度の騙し上げに騙されず、少なくともカラ売りで半年持ってれば爆益が鉄板だと思う。 3661 エムアップ
逆日歩24円(100株で2400円)
注意喚起(2018年6月13日)〜継続中
http://www.taisyaku.jp/search/detail/pcsl/6723 テリロジー S安 買い
MT S安 買い
ニチリン +7% 売り
ユニバーサル +7% 売り
KeyHolder +5% 売り
うんこ 発 禿 同 彡⌒ミ 彡⌒ミ 争
生 同 .じ (´・ω・`) (´・ω・`) い
.し 士 .レ 〃⌒` ´⌒ヽ γ⌒´‐ − ⌒ヽ は、
.な で .ベ ( V~つ)人.゚ノV~つ)) 〉ン、_ `{ __ /`( )
.い し .ル ヽ_/〃仝ミ/~ヽ_/ (三0_´∧ミ キ )彡ノヽ`ヽ)
.! ! か の /~~~~~~~ヽ、  ̄ ノ~ミ~~~~.| 0三)
|__|\_ヽ / ヽレ´ |  ̄
〉 ) 〉 ) /_ へ \
// / / \ ̄ィ. \ )
(__) (__) i__ノ |, ̄/
ヽ二) 売り豚ぁあああ 引けピンで担がれるなよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
買い豚は全力買いでOK!!! しかしイボキンとユニバだけでかなり含み損を帳消しにしてくれてるわ
まじ感謝 テリロジー明日寄らないかもな
買いポジ持ってる奴投げといた方がいいぞ
私言いましたからね 3661 エムアップ
逆日歩24円(100株で2400円)
注意喚起(2018年6月13日)〜継続中
http://www.taisyaku.jp/search/detail/pcsl/6723 フィスコ352は金の卵っぽいな
お前らいくらなら買う? このショートは必ずりかくしてみせる(΄◉◞౪◟◉`) 株は儲けより先にリスク管理 手仕舞い様子見が無難 高みの見物といこうか MTアホー板より
18:35 ふえ
まだ含み益だけどさすがに胃が痛くなってきたw
今PTSで狼狽売りを集めてるのがT氏じゃないかなーなんて思ってみたり。
まだ終わるとは思ってないからガチホだわ。
wwwww
マジでコイツらトンピンいなかったらトップレベルのヘタクソだらけだなw 今日持ち越すのはギャンブラーだが
人生かけて持ち越すのはありだと思うな SQをどこにしたいのかを読めれば、今晩の値動きが読める( ˙-˙ ) 下げてきたあああああああああああああああああああああああ MTジェネはPTSといい怖すぎて手が出ない
市場が決める適正価格とは何だったのか もともと子会社だったのに、いつの間にか親会社を抜いてしまった企業といえば? >>324
こーいう上田下田だけ言ってる奴はいつまでも勝てない( ˙-˙ )
大口の考えをよみとけ( ˙-˙ ) ダウより日本株の方が痛いのは、ここ一週間下降トレンド暴落続きでの大暴落だからね。 指数のわりにはワイの持ち株は寄り底であんま下げんかったな
だからこそ何かキモイけど ダウは日経の一週間以上の暴落下降トレンドの後の大暴落と違い、つい最近まで史上最高値更新続けてからの大暴落
これは長く続きそうだ なぜなら下げ幅が幾らでもあるからね。 ダウが下がったからって、ビビって売っちゃった香具師らwww 上がる理由ないのに上がった分が戻っただけなんだよな
アメリカ景気後退の兆しかチャイナショック来たら逝くと思うけど
来年かな 地合い崩壊してたが、ゲーセクホルダーはダメージ少なそうだな
ポケGOの再来、妖怪ウオッチワールドのガンホー
キングダム&虫&テトリスで材料宝箱のモブ
こういう銘柄を丁寧に拾うことが延命の王道かねぇ >>331
ヤマダ電機かな
内需はこういうときやっぱ強いな 今居酒屋だけど、隣で株の話してるな。
俺は億トレだがこういう株の話ができない。
どうやって勝つしか考えてない >>338
中国はみんなが一斉に動き出す傾向がある。だからよけいその加速傾向を強めてしまう。
↑↓どちらに行くにしても、その傾向をさらに強め加速してしまう。世界同時↑↓の振れ幅を大きくしてしまう国民性がある。 ちょっと待て
さっき近くの全く客いねーコンビニで100円のコーヒーだけ買ったら
ボソッと100円かよってババアに言われたw 中国って住宅バブルで浮かれてた時は、建設ラッシュで とんでもない価格で取引されていたが、
住宅バブルが一旦弾けると、跡形もなく、誰も入居しない高層高級マンションが乱立したゴーストタウンがいっぱいある。 >>348
そのババアの台詞からプロファイリングすると、
キャプは舐められる容姿をしているということになる。
お前、眼鏡の大人しそうに見えるガリ男だろ? サンキャピまだやってるんだな
何も無いのによくやるね もうどうにでもな〜れ
*゚゚・*+。
| ゚*。
。∩∧∧ *
+ (・ω・`) *+゚
*。ヽ つ*゚*
゙・+。*・゚⊃ +゚
☆ ∪ 。*゚
゙・+。*・゚ >>351
残念した。視力どっちも2w
中肉中背の髭生やして、ワイルド系やで 大幅に下がったものもあるが
数日前に下がってて、今日は小さく下げた程度の銘柄まで
多種様々だが、それでも今回の下げ幅なんて大した事ないっしょ
信用全力でも死なないレベル 哲人投資家・大重さんが、VIXと円高で、大儲けしたようだ
1552
国際のETF VIX短期先物指数
12,670 前日比+2,250(+21.59%) 一昨日くらいに、今日の大暴落予想してた奴いたよな。
信じて全力で印旛部に入っとけばよかった。 つーか、人いなすぎない?www
まだ、電車止めるのは早すぎですよwwwwwwwwwwwwww 全力でモチモチしました
1000円以上の下げだから
当然リバるでしょ
アメリカ下げすぎ 信用全力で死ぬわけねーじゃん
7万株信用全力おじさんだって生き残ってんだぞ?
それは特定の銘柄が半額にまで下がっての事だが
今日だけで半額になった銘柄なんて、そうそうないだろ? >>368
7万株とかバカ丸出しだから書き込みしないほうがいい うちこまんのヤフー板の複垢作ってプロスペクト売り煽って利益上げたぐらいは許せたけど爆破予告は超えちゃいけない線超えたから通報したよ
ニュースになってないから流されたかもしれないけど警察から連絡くるかもな ∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧
<USA!USA!USA!USA!USA!USA!USA!USA!USA! >
∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨
、 、 、 、 、
/っノ /っノ /っノ /っノ /っノ
/ / ∧_∧ / / ∧_∧ / / ∧_∧ / / ∧_∧ / / ∧_∧
\\( )\\( )\\( )\\( )\\( ) 騙されるな
騙し上げだよ
こっから釣瓶落としで大暴落くっぞ どっちみちリバるのわかってるのに、なんでみんな今日ぶん投げちゃうの?
不思議でならん よしよしきてるきてるな
いったろ
日経+400は行くって だ・・・駄目だ まだ笑うな・・・
こらえるんだ・・・
し・・・しかし・・・
500・・・+500で勝ちを宣言しよう 6796 クラリオン
逆日歩 高料率3.5円(最高4円のところ)
今日最高なら100株で400円
http://www.taisyaku.jp/search/detail/pcsl/5206 毎日毎日ひたすらロスカットをくりかえすカリスマFX職人ドラ
なんと今回は「ドラは生まれ変わった、利益を呼び込む招きドラ」と高らかに宣言し
放送では1億円を超えるトレーダーになることを約束!
もーこれは見逃せないぞ
https://www.youtube.com/watch?v=8KudRPd3vmM 本当なー貧乏人のために軽減税率やるつもりなら情報弱者にも確り還元できる仕組みにしないと意味がないわな イーソル集められてるのは俺でも何となく分かるんだけどスライムの俺には付き合えるだけの体力がねぇ・・・ シカゴファンドの投資戦略
CHICAGO FUND INVESTMENT STRATEGY
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■■■ダウが上昇する季節を迎えた■■■
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ショートカバーで急リバウンドへ
日経225先物に売りが山積 いつ急騰してもおかしくない状況!
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ダウが上昇する季節を迎えた
米国では小売り、Eコマース業界が忙しくなる11月の年末商戦(クリスマス商戦)時期に備え始めている。
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■■■STRONG BUY DOLLAR■■■
Dollar Bulls Dig In, Raise Bullish Bets to 21-Month High
揺るぎないドル強気派、ネットロング1年9カ月ぶり高水準
ウニクレディトのストラテジスト
株式市場の混乱を踏まえるとドルの「なだらかではない道のりは続く」だろうが、米金利の正常化がドルに「持続的な追い風」をもたらす公算が大きい
============================== 【株終了のお知らせ】
株はもう終わりました
アメリカ経済の破綻に端を発し、世界経済の終わりの始まりです
ダウが下がればその二倍下がるのが日本株
今しがた私は全力で先物売りました
直ちに命を守る行動をとってください
みなさん生きてこそですよ KYBとシノケン仕込んどけ
張り付き祭りに遅れるなよ
わたしゆいましたからね KYB(旧カヤバ工業)の免震偽装、不適合品が取り付けられた物件の実際のところの耐震性について : 市況かぶ全力2階建 https://t.co/FxGSaG44Ck
KYB全力買いだろwこんなんw 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:b73a9cd27f0065c395082e3925dacf01) 何じゃこりゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ベンツ10台分買ったぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ダウジョーンズ30 12月 2018 25,460.0 25,460.0 25,279.0 +32.0 +0.13% 12:40:18
米SPX500 12月 2018 2,770.50 2,770.50 2,749.75 +3.00 +0.11% 12:40:17
ナスダック100 12月 2018 7,129.25 7,129.25 7,057.50 +22.75 +0.32% 12:40:18
独30 12月 2018 11,554.5 11,554.5 11,458.5 +19.0 +0.16% 12:40:32
英100 12月 2018 7,027.0 7,027.5 6,976.0 +23.0 +0.33% 12:40:14
Incredible rise!
上海総合株価指数 2,656.87 2,656.98 2,565.64 +106.40 +4.17% 12:35:00
SZSE Component 7,716.95 7,723.49 7,464.92 +329.21 +4.46% 12:04:00
China A50 11,609.92 11,611.11 11,185.56 +424.36 +3.79% 12:30:00
香港50 26,107.00 26,108.00 25,569.50 +545.60 +2.13% 12 >>422
チミぃ長いこと豊和工業に捕まっとるねぇ? 3−1も危険なスコアというのは、結局は2−0が危険みたいなものだ おいおい、日経マジかよ・・・
俺の多木化学2300株大丈夫だよな 空売りしようとしたら取引注意とか出てきて意味わからん・・
急落したのって急落してる最中でないと注文が間に合わないの?
うまく出来てるな〜 ,,-''ヽ、
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/\ アベノミクス \
__ //\\ 自民党 \
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(⌒ヽ、_,ノ⌒Y" Y .....⌒)
(⌒ヽー゛ ....::( ..::....... .__人.....::::::::::::::::::::
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// ll__ヽ_::::::::::::::::::::::::::::::ヽ....( ´∀`)< うわ〜!逃げろ〜!
「 ヽO≡≡O:::::::::::::::::::::::::::::::::::/ つ _つ \____
゛u─―u-――-u サクラ大戦とペルソナ4は神ゲー( ^ω^)
円高・株安・金融危機の第一人者といえば、哲人投資家の大重さんだな!!。 みんなに聞きたいんだけど
なんで含み損かかえたままライザップ株なんて持ち続けてるの? オリンピック開催国の前年度は織り込まれて下がる
増税した年は下がる
来年いっぱい手をつけないほうがいい
普通に2万割れてるから 余力は10万しか入れてないですが
持ち株は合計で時価80万くらいあります
少ないのは分かっていますが
これで信用の審査は通るでしょうか 寝る前は200ドル以上上がっていたのが200ドル以上下がっている 最近はショートしかしてなかったら今日は戸惑ったぞ しかしアドバンテストの決算持ち越しギャンブル勝利で少しプラスで終われたわい 新日鉄少しショート持ち越し こないだ、ニトリバク揚げを予想したら叩かれたけど、
日曜日だけじゃなく、月曜日も、ニトリ特集をやったんだなw(ネットで人気ある、弘中アナの番組)
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これで昨日の株価は、東証値下がり率上位の大幅マイナスだもん、もう、どうしろと・・・ だからノーポジにしとけって言ったのになぁーーーーーーーーーー 9176佐渡汽船
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近江め 逆風吹いているものほど、ここで強さを見せられるかだろうな・・・・ ゴーンに高額報酬払わなくてよくなるから
日産には好材料 シカゴファンドの投資戦略
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11月20日
米国住宅関連指数に要注意!
22:30 米10月住宅着工件数
22:30 米10月住宅建築許可件数
19日発表の米11月NAHB住宅市場指数
■60予想の67を大きく下回る エクストリームまだ上がるらよ
あたひの股間おペロッと
おナメ フジトミまだ上がるらよ
あたいのイチモツを
ペロッと近江め フジトミまだ上がるらよ
イチモツ酸っぱいシャブって近江め
油女紫乃 フジトミまだ上がるらよ
鬼から
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ちんちん酸っぱい匂い フジトミあたい
ストップ高ヤル
ちんちんエッチな風合めぐみ GMOのゴミ売りが後から後から湧いてきてるから初動やぞ? お前らはいつも上がる株は黙るよな
薄いから仕方ないけど 東京エレクトロン逃げとけよ。尊師のお告げや _,,.. -──‐- .、.._
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i i Yahooファイナンスの株式掲示板にて殺人予告または殺人幇助と受け取れる文章を発見しました!!大至急サイバー犯罪窓口への通報、またはSNSによる拡散を宜しくお願い致します!!
◆埼玉県警察本部サイバー犯罪相談窓口
http://www.police.pref.saitama.lg.jp/c0070/kurashi/joho110-cyber.html
〒330-8533 埼玉県さいたま市浦和区高砂3丁目15番1号
#殺人予告 #殺人幇助 #サイバー犯罪窓口
↓↓↓↓↓↓↓↓
【埼玉県警察本部サイバー犯罪相談窓口様へ】
Yahooファイナンスのスルガ掲示板にて、
ush〜というHNの者から、殺人予告または殺人幇助に値すると思われる脅迫があったので通報させて頂きました。
当人はマズイと思ったのか、
すでに投稿を削除して逃げておりますが、
その時のスクショは保存してあります。
Yahoo様のほうにはログがあるはずです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Yahooファイナンス スルガ銀行掲示板
ush★★★★★ 2018/11/23 0:27
今度生意気ぬかしやがったら
出刃包丁持った男がおまえの家に
ガラス割って入ってくるぞ
覚悟しとけ No.197902
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Yahooカスタマーへは通報済みです!!
危険な人物からの犯罪を防止する為にも、
大至急、容疑者の身柄確保また逮捕を宜しくお願い致します!
↑↑↑↑↑↑↑↑
https://i.imgur.com/JScNxk1.png ふと見たらビットコ50万切ってるやん
つい最近70くらいだったような 初めて株に手を出しました
とりあえず震える指で日産の株を100株買いました
次執るべき行動を教えてください!!(>-<) >>565
日産の臨時株主総会に行って卵投げつける >>565
靴磨きまでが株を買いに来たようなので売ります。 注目度高く
だけど超大手株
信用全力奴例え勝利でもオワコン
センスあるわ ここでいいのか?
ビットコインまた下値トライ来たぞ 原油、仮想通貨と資金流出やばいな
月曜はマザーズ暴落やな。 シカゴファンドの投資戦略
CHICAGO FUND INVESTMENT STRATEGY
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ゴーン氏事件についての“衝撃の事実” 〜“隠蔽役員報酬”は支払われていなかった
ゴーン氏、ケリー氏だけ刑事責任を問うことは困難だ
郷原信郎 弁護士
郷原総合コンプライアンス法律事務所代表 2018年11月20日 17時19分
血液で大腸がん早期に発見 島津製、19年開始目指す
島津製作所は、患者の血液を分析することで早期に大腸がんを見つける診断技術を開発した。10月から京都市の病院で試験的に導入を始めており、2019年にも検査サービスを始め、数年内の全国展開を目指す。
新たな検査は同社の高精度の分析機器を使い、血液中のアミノ酸や脂肪酸など8種類の物質を測定。それらの含有量や構成比などから、がんの有無を判定する。費用は数万円となる見込み。
現在の大腸がん検査は検便法が一般的で、痔などでも陽性と判定されることがあるが、同社の技術ではこれまで早期段階を含む大腸がんを96%の正確さで判定できたという。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2018112001002176.html 坂井は明日大勝利が約束されているのがうらやましいわ
俺はそれに乗っかるイナゴ 小さいコロッケ屋の年商3億5000万だって・・・・ ぱーしーラーメン屋だって
ラーメン ラーメン超絶で
立地条件いいなら
燃焼系だわ >>583
ジャストp?
なんかよく分からないけど
酒井マン逆進だわ 買方で酒井マンやぱーしー買ったら
俺買ってたらまず逃げる
これここ超絶 ラーメン屋に立地も値段もあまり関係なさそうだけどな
ふらっとくるのより、食べに行こうって狙い撃ちする方が多い。 >>589
書き込みから頭の悪さと学歴低さが伝わるね >>591
頭悪いっていうより 実際会ったら 同情するレベルやで 不憫なウナギ >>592
ないよ
俺なら全力で逃げる
酒井マンとペロペロはガチ 世の中頭悪い奴も必要らしいわ
そうじゃなきゃお前ら
自分維持出来ないんだし >>594
いくら勉強しても、ダメなタイプだね。知能の低さがうかがえる。 >>598
いくら勉強しても
不可逆
わかるそれ
これここ 求めても求めても掴めない幻想
メビウス
その掴み錨を
馬鹿に求めて
安定が保たれる
あれここ ぱーしーがもし仮に12パーセントの可能性で
ラーメン屋開いたら
約束するわ
生きてるなら食べに行く 明日は万博関連のベタな銘柄買っても
大して儲からんと思う。
深読みして警備関連とかどうかね? まぁ年末年始はみんなお金が必要だし仮想通貨なんてマネゲ対象は換金しないとね ローソク足を見ただけで勝率98%以上のトレード実績!拍子抜けするほどシンプルに、10万円、20万円、30万円と毎日利益は増えるばかり!?
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実は、この損とは、お金を払う方ではなく、お金を受け取れたのに受け取っていないという意味なのです。いわゆる、機会損失が毎回の食事で1万円発生しているということです。
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確かに、そんなこと”ありえない”と思います。
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報道陣から「(金額の)上がったり、下がったりは?」と聞かれると 「ラジバンダリです」 キャッシュリッチ、ディフェンシブ銘柄
男は黙って、日和産業。 こころ
夏目漱石
私わたくしはその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けな い。これは世間を憚はばかる遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。私はその人の記
憶を呼び起すごとに、すぐ「先生」といいたくなる。筆を執とっても心持は同じ事である。よそよそしい
頭文字かしらもじなどはとても使う気にならない。 私が先生と知り合いになったのは鎌倉かまくらである。その時私はまだ若々しい書生であった。暑中休
暇を利用して海水浴に行った友達からぜひ来いという端書はがきを受け取ったので、私は多少の金を工面
くめんして、出掛ける事にした。私は金の工面に二に、三日さんちを費やした。ところが私が鎌倉に着い て三日と経たたないうちに、私を呼び寄せた友達は、急に国元から帰れという電報を受け取った。電報に
は母が病気だからと断ってあったけれども友達はそれを信じなかった。友達はかねてから国元にいる親た
ちに勧すすまない結婚を強しいられていた。彼は現代の習慣からいうと結婚するにはあまり年が若過ぎた 。それに肝心かんじんの当人が気に入らなかった。それで夏休みに当然帰るべきところを、わざと避けて
東京の近くで遊んでいたのである。彼は電報を私に見せてどうしようと相談をした。私にはどうしていい
か分らなかった。けれども実際彼の母が病気であるとすれば彼は固もとより帰るべきはずであった。それ で彼はとうとう帰る事になった。せっかく来た私は一人取り残された。
学校の授業が始まるにはまだ大分だいぶ日数ひかずがあるので鎌倉におってもよし、帰ってもよいとい
う境遇にいた私は、当分元の宿に留とまる覚悟をした。友達は中国のある資産家の息子むすこで金に不自 由のない男であったけれども、学校が学校なのと年が年なので、生活の程度は私とそう変りもしなかった
。したがって一人ひとりぼっちになった私は別に恰好かっこうな宿を探す面倒ももたなかったのである。
宿は鎌倉でも辺鄙へんぴな方角にあった。玉突たまつきだのアイスクリームだのというハイカラなもの には長い畷なわてを一つ越さなければ手が届かなかった。車で行っても二十銭は取られた。けれども個人
の別荘はそこここにいくつでも建てられていた。それに海へはごく近いので海水浴をやるには至極便利な
地位を占めていた。 私は毎日海へはいりに出掛けた。古い燻くすぶり返った藁葺わらぶきの間あいだを通り抜けて磯いそへ
下りると、この辺へんにこれほどの都会人種が住んでいるかと思うほど、避暑に来た男や女で砂の上が動
いていた。ある時は海の中が銭湯せんとうのように黒い頭でごちゃごちゃしている事もあった。その中に 知った人を一人ももたない私も、こういう賑にぎやかな景色の中に裹つつまれて、砂の上に寝ねそべって
みたり、膝頭ひざがしらを波に打たしてそこいらを跳はね廻まわるのは愉快であった。
私は実に先生をこの雑沓ざっとうの間あいだに見付け出したのである。その時海岸には掛茶屋かけぢゃ やが二軒あった。私はふとした機会はずみからその一軒の方に行き慣なれていた。長谷辺はせへんに大き
な別荘を構えている人と違って、各自めいめいに専有の着換場きがえばを拵こしらえていないここいらの
避暑客には、ぜひともこうした共同着換所といった風ふうなものが必要なのであった。彼らはここで茶を 飲み、ここで休息する外ほかに、ここで海水着を洗濯させたり、ここで鹹しおはゆい身体からだを清めた
り、ここへ帽子や傘かさを預けたりするのである。海水着を持たない私にも持物を盗まれる恐れはあった
ので、私は海へはいるたびにその茶屋へ一切いっさいを脱ぬぎ棄すてる事にしていた。 私わたくしがその掛茶屋で先生を見た時は、先生がちょうど着物を脱いでこれから海へ入ろうとすると
ころであった。私はその時反対に濡ぬれた身体からだを風に吹かして水から上がって来た。二人の間あい
だには目を遮さえぎる幾多の黒い頭が動いていた。特別の事情のない限り、私はついに先生を見逃したか も知れなかった。それほど浜辺が混雑し、それほど私の頭が放漫ほうまんであったにもかかわらず、私が
すぐ先生を見付け出したのは、先生が一人の西洋人を伴つれていたからである。
その西洋人の優れて白い皮膚の色が、掛茶屋へ入るや否いなや、すぐ私の注意を惹ひいた。純粋の日本 の浴衣ゆかたを着ていた彼は、それを床几しょうぎの上にすぽりと放ほうり出したまま、腕組みをして海
の方を向いて立っていた。彼は我々の穿はく猿股さるまた一つの外ほか何物も肌に着けていなかった。私
にはそれが第一不思議だった。私はその二日前に由井ゆいが浜はままで行って、砂の上にしゃがみながら 、長い間西洋人の海へ入る様子を眺ながめていた。私の尻しりをおろした所は少し小高い丘の上で、その
すぐ傍わきがホテルの裏口になっていたので、私の凝じっとしている間あいだに、大分だいぶ多くの男が
塩を浴びに出て来たが、いずれも胴と腕と股ももは出していなかった。女は殊更ことさら肉を隠しがちで あった。大抵は頭に護謨製ゴムせいの頭巾ずきんを被かぶって、海老茶えびちゃや紺こんや藍あいの色を
波間に浮かしていた。そういう有様を目撃したばかりの私の眼めには、猿股一つで済まして皆みんなの前
に立っているこの西洋人がいかにも珍しく見えた。 彼はやがて自分の傍わきを顧みて、そこにこごんでいる日本人に、一言ひとこと二言ふたこと何なにか
いった。その日本人は砂の上に落ちた手拭てぬぐいを拾い上げているところであったが、それを取り上げ
るや否や、すぐ頭を包んで、海の方へ歩き出した。その人がすなわち先生であった。 私は単に好奇心のために、並んで浜辺を下りて行く二人の後姿うしろすがたを見守っていた。すると彼
らは真直まっすぐに波の中に足を踏み込んだ。そうして遠浅とおあさの磯近いそちかくにわいわい騒いで
いる多人数たにんずの間あいだを通り抜けて、比較的広々した所へ来ると、二人とも泳ぎ出した。彼らの 頭が小さく見えるまで沖の方へ向いて行った。それから引き返してまた一直線に浜辺まで戻って来た。掛
茶屋へ帰ると、井戸の水も浴びずに、すぐ身体からだを拭ふいて着物を着て、さっさとどこへか行ってし
まった。 彼らの出て行った後あと、私はやはり元の床几しょうぎに腰をおろして烟草タバコを吹かしていた。そ
の時私はぽかんとしながら先生の事を考えた。どうもどこかで見た事のある顔のように思われてならなか
った。しかしどうしてもいつどこで会った人か想おもい出せずにしまった。 その時の私は屈托くったくがないというよりむしろ無聊ぶりょうに苦しんでいた。それで翌日あくるひ
もまた先生に会った時刻を見計らって、わざわざ掛茶屋かけぢゃやまで出かけてみた。すると西洋人は来
ないで先生一人麦藁帽むぎわらぼうを被かぶってやって来た。先生は眼鏡めがねをとって台の上に置いて 、すぐ手拭てぬぐいで頭を包んで、すたすた浜を下りて行った。先生が昨日きのうのように騒がしい浴客
よくかくの中を通り抜けて、一人で泳ぎ出した時、私は急にその後あとが追い掛けたくなった。私は浅い
水を頭の上まで跳はねかして相当の深さの所まで来て、そこから先生を目標めじるしに抜手ぬきでを切っ た。すると先生は昨日と違って、一種の弧線こせんを描えがいて、妙な方向から岸の方へ帰り始めた。そ
れで私の目的はついに達せられなかった。私が陸おかへ上がって雫しずくの垂れる手を振りながら掛茶屋
に入ると、先生はもうちゃんと着物を着て入れ違いに外へ出て行った。 私わたくしは次の日も同じ時刻に浜へ行って先生の顔を見た。その次の日にもまた同じ事を繰り返した
。けれども物をいい掛ける機会も、挨拶あいさつをする場合も、二人の間には起らなかった。その上先生
の態度はむしろ非社交的であった。一定の時刻に超然として来て、また超然と帰って行った。周囲がいく ら賑にぎやかでも、それにはほとんど注意を払う様子が見えなかった。最初いっしょに来た西洋人はその
後ごまるで姿を見せなかった。先生はいつでも一人であった。
或ある時先生が例の通りさっさと海から上がって来て、いつもの場所に脱ぬぎ棄すてた浴衣ゆかたを着 ようとすると、どうした訳か、その浴衣に砂がいっぱい着いていた。先生はそれを落すために、後ろ向き
になって、浴衣を二、三度振ふるった。すると着物の下に置いてあった眼鏡が板の隙間すきまから下へ落
ちた。先生は白絣しろがすりの上へ兵児帯へこおびを締めてから、眼鏡の失なくなったのに気が付いたと 見えて、急にそこいらを探し始めた。私はすぐ腰掛こしかけの下へ首と手を突ッ込んで眼鏡を拾い出した
。先生は有難うといって、それを私の手から受け取った。
次の日私は先生の後あとにつづいて海へ飛び込んだ。そうして先生といっしょの方角に泳いで行った。 二丁ちょうほど沖へ出ると、先生は後ろを振り返って私に話し掛けた。広い蒼あおい海の表面に浮いてい
るものは、その近所に私ら二人より外ほかになかった。そうして強い太陽の光が、眼の届く限り水と山と
を照らしていた。私は自由と歓喜に充みちた筋肉を動かして海の中で躍おどり狂った。先生はまたぱたり と手足の運動を已やめて仰向けになったまま浪なみの上に寝た。私もその真似まねをした。青空の色がぎ
らぎらと眼を射るように痛烈な色を私の顔に投げ付けた。「愉快ですね」と私は大きな声を出した。
しばらくして海の中で起き上がるように姿勢を改めた先生は、「もう帰りませんか」といって私を促し た。比較的強い体質をもった私は、もっと海の中で遊んでいたかった。しかし先生から誘われた時、私は
すぐ「ええ帰りましょう」と快く答えた。そうして二人でまた元の路みちを浜辺へ引き返した。
私はこれから先生と懇意になった。しかし先生がどこにいるかはまだ知らなかった。 それから中なか二日おいてちょうど三日目の午後だったと思う。先生と掛茶屋かけぢゃやで出会った時
、先生は突然私に向かって、「君はまだ大分だいぶ長くここにいるつもりですか」と聞いた。考えのない
私はこういう問いに答えるだけの用意を頭の中に蓄えていなかった。それで「どうだか分りません」と答 えた。しかしにやにや笑っている先生の顔を見た時、私は急に極きまりが悪くなった。「先生は?」と聞
き返さずにはいられなかった。これが私の口を出た先生という言葉の始まりである。
私はその晩先生の宿を尋ねた。宿といっても普通の旅館と違って、広い寺の境内けいだいにある別荘の ような建物であった。そこに住んでいる人の先生の家族でない事も解わかった。私が先生先生と呼び掛け
るので、先生は苦笑いをした。私はそれが年長者に対する私の口癖くちくせだといって弁解した。私はこ
の間の西洋人の事を聞いてみた。先生は彼の風変りのところや、もう鎌倉かまくらにいない事や、色々の 話をした末、日本人にさえあまり交際つきあいをもたないのに、そういう外国人と近付ちかづきになった
のは不思議だといったりした。私は最後に先生に向かって、どこかで先生を見たように思うけれども、ど
うしても思い出せないといった。若い私はその時暗あんに相手も私と同じような感じを持っていはしまい かと疑った。そうして腹の中で先生の返事を予期してかかった。ところが先生はしばらく沈吟ちんぎんし
たあとで、「どうも君の顔には見覚みおぼえがありませんね。人違いじゃないですか」といったので私は
変に一種の失望を感じた。 私わたくしは月の末に東京へ帰った。先生の避暑地を引き上げたのはそれよりずっと前であった。私は
先生と別れる時に、「これから折々お宅たくへ伺っても宜よござんすか」と聞いた。先生は単簡たんかん
にただ「ええいらっしゃい」といっただけであった。その時分の私は先生とよほど懇意になったつもりで いたので、先生からもう少し濃こまやかな言葉を予期して掛かかったのである。それでこの物足りない返
事が少し私の自信を傷いためた。
私はこういう事でよく先生から失望させられた。先生はそれに気が付いているようでもあり、また全く 気が付かないようでもあった。私はまた軽微な失望を繰り返しながら、それがために先生から離れて行く
気にはなれなかった。むしろそれとは反対で、不安に揺うごかされるたびに、もっと前へ進みたくなった
。もっと前へ進めば、私の予期するあるものが、いつか眼の前に満足に現われて来るだろうと思った。私 は若かった。けれどもすべての人間に対して、若い血がこう素直に働こうとは思わなかった。私はなぜ先
生に対してだけこんな心持が起るのか解わからなかった。それが先生の亡くなった今日こんにちになって
、始めて解って来た。先生は始めから私を嫌っていたのではなかったのである。先生が私に示した時々の 素気そっけない挨拶あいさつや冷淡に見える動作は、私を遠ざけようとする不快の表現ではなかったので
ある。傷いたましい先生は、自分に近づこうとする人間に、近づくほどの価値のないものだから止よせと
いう警告を与えたのである。他ひとの懐かしみに応じない先生は、他ひとを軽蔑けいべつする前に、まず 自分を軽蔑していたものとみえる。
私は無論先生を訪ねるつもりで東京へ帰って来た。帰ってから授業の始まるまでにはまだ二週間の日数
ひかずがあるので、そのうちに一度行っておこうと思った。しかし帰って二日三日と経たつうちに、鎌倉 かまくらにいた時の気分が段々薄くなって来た。そうしてその上に彩いろどられる大都会の空気が、記憶
の復活に伴う強い刺戟しげきと共に、濃く私の心を染め付けた。私は往来で学生の顔を見るたびに新しい
学年に対する希望と緊張とを感じた。私はしばらく先生の事を忘れた。 授業が始まって、一カ月ばかりすると私の心に、また一種の弛たるみができてきた。私は何だか不足な
顔をして往来を歩き始めた。物欲しそうに自分の室へやの中を見廻みまわした。私の頭には再び先生の顔
が浮いて出た。私はまた先生に会いたくなった。 始めて先生の宅うちを訪ねた時、先生は留守であった。二度目に行ったのは次の日曜だと覚えている。
晴れた空が身に沁しみ込むように感ぜられる好いい日和ひよりであった。その日も先生は留守であった。
鎌倉にいた時、私は先生自身の口から、いつでも大抵たいてい宅にいるという事を聞いた。むしろ外出嫌 いだという事も聞いた。二度来て二度とも会えなかった私は、その言葉を思い出して、理由わけもない不
満をどこかに感じた。私はすぐ玄関先を去らなかった。下女げじょの顔を見て少し躊躇ちゅうちょしてそ
こに立っていた。この前名刺を取り次いだ記憶のある下女は、私を待たしておいてまた内うちへはいった 。すると奥さんらしい人が代って出て来た。美しい奥さんであった。
私はその人から鄭寧ていねいに先生の出先を教えられた。先生は例月その日になると雑司ヶ谷ぞうしが
やの墓地にある或ある仏へ花を手向たむけに行く習慣なのだそうである。「たった今出たばかりで、十分 になるか、ならないかでございます」と奥さんは気の毒そうにいってくれた。私は会釈えしゃくして外へ
出た。賑にぎやかな町の方へ一丁ちょうほど歩くと、私も散歩がてら雑司ヶ谷へ行ってみる気になった。
先生に会えるか会えないかという好奇心も動いた。それですぐ踵きびすを回めぐらした。 私わたくしは墓地の手前にある苗畠なえばたけの左側からはいって、両方に楓かえでを植え付けた広い
道を奥の方へ進んで行った。するとその端はずれに見える茶店ちゃみせの中から先生らしい人がふいと出
て来た。私はその人の眼鏡めがねの縁ふちが日に光るまで近く寄って行った。そうして出し抜けに「先生 」と大きな声を掛けた。先生は突然立ち留まって私の顔を見た。
「どうして……、どうして……」
先生は同じ言葉を二遍へん繰り返した。その言葉は森閑しんかんとした昼の中うちに異様な調子をもっ て繰り返された。私は急に何とも応こたえられなくなった。
「私の後あとを跟つけて来たのですか。どうして……」
先生の態度はむしろ落ち付いていた。声はむしろ沈んでいた。けれどもその表情の中うちには判然はっ きりいえないような一種の曇りがあった。
私は私がどうしてここへ来たかを先生に話した。
「誰だれの墓へ参りに行ったか、妻さいがその人の名をいいましたか」 「いいえ、そんな事は何もおっしゃいません」
「そうですか。――そう、それはいうはずがありませんね、始めて会ったあなたに。いう必要がないんだ
から」 先生はようやく得心とくしんしたらしい様子であった。しかし私にはその意味がまるで解わからなかっ
た。
先生と私は通りへ出ようとして墓の間を抜けた。依撒伯拉何々イサベラなになにの墓だの、神僕しんぼ くロギンの墓だのという傍かたわらに、一切衆生悉有仏生いっさいしゅじょうしつうぶっしょうと書いた
塔婆とうばなどが建ててあった。全権公使何々というのもあった。私は安得烈と彫ほり付けた小さい墓の
前で、「これは何と読むんでしょう」と先生に聞いた。「アンドレとでも読ませるつもりでしょうね」と いって先生は苦笑した。
先生はこれらの墓標が現わす人種々ひとさまざまの様式に対して、私ほどに滑稽こっけいもアイロニー
も認めてないらしかった。私が丸い墓石はかいしだの細長い御影みかげの碑ひだのを指して、しきりにか れこれいいたがるのを、始めのうちは黙って聞いていたが、しまいに「あなたは死という事実をまだ真面
目まじめに考えた事がありませんね」といった。私は黙った。先生もそれぎり何ともいわなくなった。
墓地の区切り目に、大きな銀杏いちょうが一本空を隠すように立っていた。その下へ来た時、先生は高 い梢こずえを見上げて、「もう少しすると、綺麗きれいですよ。この木がすっかり黄葉こうようして、こ
こいらの地面は金色きんいろの落葉で埋うずまるようになります」といった。先生は月に一度ずつは必ず
この木の下を通るのであった。 向うの方で凸凹でこぼこの地面をならして新墓地を作っている男が、鍬くわの手を休めて私たちを見て
いた。私たちはそこから左へ切れてすぐ街道へ出た。
これからどこへ行くという目的あてのない私は、ただ先生の歩く方へ歩いて行った。先生はいつもより 口数を利きかなかった。それでも私はさほどの窮屈を感じなかったので、ぶらぶらいっしょに歩いて行っ
た。
「すぐお宅たくへお帰りですか」 「ええ別に寄る所もありませんから」
二人はまた黙って南の方へ坂を下りた。
「先生のお宅の墓地はあすこにあるんですか」と私がまた口を利き出した。 「いいえ」
「どなたのお墓があるんですか。――ご親類のお墓ですか」
「いいえ」 先生はこれ以外に何も答えなかった。私もその話はそれぎりにして切り上げた。すると一町ちょうほど
歩いた後あとで、先生が不意にそこへ戻って来た。
「あすこには私の友達の墓があるんです」 「お友達のお墓へ毎月まいげつお参りをなさるんですか」
「そうです」
先生はその日これ以外を語らなかった。 私はそれから時々先生を訪問するようになった。行くたびに先生は在宅であった。先生に会う度数どす
うが重なるにつれて、私はますます繁しげく先生の玄関へ足を運んだ。
けれども先生の私に対する態度は初めて挨拶あいさつをした時も、懇意になったその後のちも、あまり 変りはなかった。先生は何時いつも静かであった。ある時は静か過ぎて淋さびしいくらいであった。私は
最初から先生には近づきがたい不思議があるように思っていた。それでいて、どうしても近づかなければ
いられないという感じが、どこかに強く働いた。こういう感じを先生に対してもっていたものは、多くの 人のうちであるいは私だけかも知れない。しかしその私だけにはこの直感が後のちになって事実の上に証
拠立てられたのだから、私は若々しいといわれても、馬鹿ばかげていると笑われても、それを見越した自
分の直覚をとにかく頼もしくまた嬉うれしく思っている。人間を愛し得うる人、愛せずにはいられない人 、それでいて自分の懐ふところに入いろうとするものを、手をひろげて抱き締める事のできない人、――
これが先生であった。
今いった通り先生は始終静かであった。落ち付いていた。けれども時として変な曇りがその顔を横切る 事があった。窓に黒い鳥影が射さすように。射すかと思うと、すぐ消えるには消えたが。私が始めてその
曇りを先生の眉間みけんに認めたのは、雑司ヶ谷ぞうしがやの墓地で、不意に先生を呼び掛けた時であっ
た。私はその異様の瞬間に、今まで快く流れていた心臓の潮流をちょっと鈍らせた。しかしそれは単に一 時の結滞けったいに過ぎなかった。私の心は五分と経たたないうちに平素の弾力を回復した。私はそれぎ
り暗そうなこの雲の影を忘れてしまった。ゆくりなくまたそれを思い出させられたのは、小春こはるの尽
きるに間まのない或ある晩の事であった。 先生と話していた私は、ふと先生がわざわざ注意してくれた銀杏いちょうの大樹たいじゅを眼めの前に
想おもい浮かべた。勘定してみると、先生が毎月例まいげつれいとして墓参に行く日が、それからちょう
ど三日目に当っていた。その三日目は私の課業が午ひるで終おえる楽な日であった。私は先生に向かって こういった。
「先生雑司ヶ谷ぞうしがやの銀杏はもう散ってしまったでしょうか」
「まだ空坊主からぼうずにはならないでしょう」 先生はそう答えながら私の顔を見守った。そうしてそこからしばし眼を離さなかった。私はすぐいった
。
「今度お墓参はかまいりにいらっしゃる時にお伴ともをしても宜よござんすか。私は先生といっしょにあ すこいらが散歩してみたい」
「私は墓参りに行くんで、散歩に行くんじゃないですよ」
「しかしついでに散歩をなすったらちょうど好いいじゃありませんか」 先生は何とも答えなかった。しばらくしてから、「私のは本当の墓参りだけなんだから」といって、ど
こまでも墓参ぼさんと散歩を切り離そうとする風ふうに見えた。私と行きたくない口実だか何だか、私に
はその時の先生が、いかにも子供らしくて変に思われた。私はなおと先へ出る気になった。 「じゃお墓参りでも好いいからいっしょに伴つれて行って下さい。私もお墓参りをしますから」
実際私には墓参と散歩との区別がほとんど無意味のように思われたのである。すると先生の眉まゆがち
ょっと曇った。眼のうちにも異様の光が出た。それは迷惑とも嫌悪けんおとも畏怖いふとも片付けられな い微かすかな不安らしいものであった。私は忽たちまち雑司ヶ谷で「先生」と呼び掛けた時の記憶を強く
思い起した。二つの表情は全く同じだったのである。
「私は」と先生がいった。「私はあなたに話す事のできないある理由があって、他ひとといっしょにあす こへ墓参りには行きたくないのです。自分の妻さいさえまだ伴れて行った事がないのです」
七 私わたくしは不思議に思った。しかし私は先生を研究する気でその宅うちへ出入でいりをするのではな
かった。私はただそのままにして打ち過ぎた。今考えるとその時の私の態度は、私の生活のうちでむしろ 尊たっとむべきものの一つであった。私は全くそのために先生と人間らしい温かい交際つきあいができた
のだと思う。もし私の好奇心が幾分でも先生の心に向かって、研究的に働き掛けたなら、二人の間を繋つ
なぐ同情の糸は、何の容赦もなくその時ふつりと切れてしまったろう。若い私は全く自分の態度を自覚し ていなかった。それだから尊たっといのかも知れないが、もし間違えて裏へ出たとしたら、どんな結果が
二人の仲に落ちて来たろう。私は想像してもぞっとする。先生はそれでなくても、冷たい眼まなこで研究
されるのを絶えず恐れていたのである。 私は月に二度もしくは三度ずつ必ず先生の宅うちへ行くようになった。私の足が段々繁しげくなった時
のある日、先生は突然私に向かって聞いた。
「あなたは何でそうたびたび私のようなものの宅へやって来るのですか」 「何でといって、そんな特別な意味はありません。――しかしお邪魔じゃまなんですか」
「邪魔だとはいいません」
なるほど迷惑という様子は、先生のどこにも見えなかった。私は先生の交際の範囲の極きわめて狭い事 を知っていた。先生の元の同級生などで、その頃ころ東京にいるものはほとんど二人か三人しかないとい
う事も知っていた。先生と同郷の学生などには時たま座敷で同座する場合もあったが、彼らのいずれもは
皆みんな私ほど先生に親しみをもっていないように見受けられた。 「私は淋さびしい人間です」と先生がいった。「だからあなたの来て下さる事を喜んでいます。だからな
ぜそうたびたび来るのかといって聞いたのです」
「そりゃまたなぜです」 私がこう聞き返した時、先生は何とも答えなかった。ただ私の顔を見て「あなたは幾歳いくつですか」
といった。
この問答は私にとってすこぶる不得要領ふとくようりょうのものであったが、私はその時底そこまで押 さずに帰ってしまった。しかもそれから四日と経たたないうちにまた先生を訪問した。先生は座敷へ出る
や否いなや笑い出した。
「また来ましたね」といった。 「ええ来ました」といって自分も笑った。
私は外ほかの人からこういわれたらきっと癪しゃくに触さわったろうと思う。しかし先生にこういわれ
た時は、まるで反対であった。癪に触らないばかりでなくかえって愉快だった。 「私は淋さびしい人間です」と先生はその晩またこの間の言葉を繰り返した。「私は淋しい人間ですが、
ことによるとあなたも淋しい人間じゃないですか。私は淋しくっても年を取っているから、動かずにいら
れるが、若いあなたはそうは行かないのでしょう。動けるだけ動きたいのでしょう。動いて何かに打ぶつ かりたいのでしょう……」
「私はちっとも淋さむしくはありません」
「若いうちほど淋さむしいものはありません。そんならなぜあなたはそうたびたび私の宅うちへ来るので すか」
ここでもこの間の言葉がまた先生の口から繰り返された。
「あなたは私に会ってもおそらくまだ淋さびしい気がどこかでしているでしょう。私にはあなたのために その淋しさを根元ねもとから引き抜いて上げるだけの力がないんだから。あなたは外ほかの方を向いて今
に手を広げなければならなくなります。今に私の宅の方へは足が向かなくなります」
先生はこういって淋しい笑い方をした。 幸さいわいにして先生の予言は実現されずに済んだ。経験のない当時の私わたくしは、この予言の中う
ちに含まれている明白な意義さえ了解し得なかった。私は依然として先生に会いに行った。その内うちい
つの間にか先生の食卓で飯めしを食うようになった。自然の結果奥さんとも口を利きかなければならない ようになった。
普通の人間として私は女に対して冷淡ではなかった。けれども年の若い私の今まで経過して来た境遇か
らいって、私はほとんど交際らしい交際を女に結んだ事がなかった。それが源因げんいんかどうかは疑問 だが、私の興味は往来で出合う知りもしない女に向かって多く働くだけであった。先生の奥さんにはその
前玄関で会った時、美しいという印象を受けた。それから会うたんびに同じ印象を受けない事はなかった
。しかしそれ以外に私はこれといってとくに奥さんについて語るべき何物ももたないような気がした。 これは奥さんに特色がないというよりも、特色を示す機会が来なかったのだと解釈する方が正当かも知
れない。しかし私はいつでも先生に付属した一部分のような心持で奥さんに対していた。奥さんも自分の
夫の所へ来る書生だからという好意で、私を遇していたらしい。だから中間に立つ先生を取り除のければ 、つまり二人はばらばらになっていた。それで始めて知り合いになった時の奥さんについては、ただ美し
いという外ほかに何の感じも残っていない。
ある時私は先生の宅うちで酒を飲まされた。その時奥さんが出て来て傍そばで酌しゃくをしてくれた。 先生はいつもより愉快そうに見えた。奥さんに「お前も一つお上がり」といって、自分の呑のみ干した盃
さかずきを差した。奥さんは「私は……」と辞退しかけた後あと、迷惑そうにそれを受け取った。奥さん
は綺麗きれいな眉まゆを寄せて、私の半分ばかり注ついで上げた盃を、唇の先へ持って行った。奥さんと 先生の間に下しものような会話が始まった。
「珍らしい事。私に呑めとおっしゃった事は滅多めったにないのにね」
「お前は嫌きらいだからさ。しかし稀たまには飲むといいよ。好いい心持になるよ」 「ちっともならないわ。苦しいぎりで。でもあなたは大変ご愉快ゆかいそうね、少しご酒しゅを召し上が
ると」
「時によると大変愉快になる。しかしいつでもというわけにはいかない」 「今夜はいかがです」
「今夜は好いい心持だね」
「これから毎晩少しずつ召し上がると宜よござんすよ」 「そうはいかない」
「召し上がって下さいよ。その方が淋さむしくなくって好いから」
先生の宅うちは夫婦と下女げじょだけであった。行くたびに大抵たいていはひそりとしていた。高い笑 い声などの聞こえる試しはまるでなかった。或ある時ときは宅の中にいるものは先生と私だけのような気
がした。
「子供でもあると好いんですがね」と奥さんは私の方を向いていった。私は「そうですな」と答えた。し かし私の心には何の同情も起らなかった。子供を持った事のないその時の私は、子供をただ蒼蠅うるさい
もののように考えていた。
「一人貰もらってやろうか」と先生がいった。 「貰もらいッ子じゃ、ねえあなた」と奥さんはまた私の方を向いた。
「子供はいつまで経たったってできっこないよ」と先生がいった。
奥さんは黙っていた。「なぜです」と私が代りに聞いた時先生は「天罰だからさ」といって高く笑った 私わたくしの知る限り先生と奥さんとは、仲の好いい夫婦の一対いっついであった。家庭の一員として
暮した事のない私のことだから、深い消息は無論解わからなかったけれども、座敷で私と対坐たいざして いる時、先生は何かのついでに、下女げじょを呼ばないで、奥さんを呼ぶ事があった。(奥さんの名は静
しずといった)。先生は「おい静」といつでも襖ふすまの方を振り向いた。その呼びかたが私には優やさ
しく聞こえた。返事をして出て来る奥さんの様子も甚はなはだ素直であった。ときたまご馳走ちそうにな って、奥さんが席へ現われる場合などには、この関係が一層明らかに二人の間あいだに描えがき出される
ようであった。
先生は時々奥さんを伴つれて、音楽会だの芝居だのに行った。それから夫婦づれで一週間以内の旅行を した事も、私の記憶によると、二、三度以上あった。私は箱根はこねから貰った絵端書えはがきをまだ持
っている。日光にっこうへ行った時は紅葉もみじの葉を一枚封じ込めた郵便も貰った。
当時の私の眼に映った先生と奥さんの間柄はまずこんなものであった。そのうちにたった一つの例外が あった。ある日私がいつもの通り、先生の玄関から案内を頼もうとすると、座敷の方でだれかの話し声が
した。よく聞くと、それが尋常の談話でなくって、どうも言逆いさかいらしかった。先生の宅は玄関の次
がすぐ座敷になっているので、格子こうしの前に立っていた私の耳にその言逆いさかいの調子だけはほぼ 分った。そうしてそのうちの一人が先生だという事も、時々高まって来る男の方の声で解った。相手は先
生よりも低い音おんなので、誰だか判然はっきりしなかったが、どうも奥さんらしく感ぜられた。泣いて
いるようでもあった。私はどうしたものだろうと思って玄関先で迷ったが、すぐ決心をしてそのまま下宿 へ帰った。
妙に不安な心持が私を襲って来た。私は書物を読んでも呑のみ込む能力を失ってしまった。約一時間ば
かりすると先生が窓の下へ来て私の名を呼んだ。私は驚いて窓を開けた。先生は散歩しようといって、下 から私を誘った。先刻さっき帯の間へ包くるんだままの時計を出して見ると、もう八時過ぎであった。私
は帰ったなりまだ袴はかまを着けていた。私はそれなりすぐ表へ出た。
その晩私は先生といっしょに麦酒ビールを飲んだ。先生は元来酒量に乏しい人であった。ある程度まで 飲んで、それで酔えなければ、酔うまで飲んでみるという冒険のできない人であった。
「今日は駄目だめです」といって先生は苦笑した。
「愉快になれませんか」と私は気の毒そうに聞いた。 私の腹の中には始終先刻さっきの事が引ひっ懸かかっていた。肴さかなの骨が咽喉のどに刺さった時の
ように、私は苦しんだ。打ち明けてみようかと考えたり、止よした方が好よかろうかと思い直したりする
動揺が、妙に私の様子をそわそわさせた。 「君、今夜はどうかしていますね」と先生の方からいい出した。「実は私も少し変なのですよ。君に分り
ますか」
私は何の答えもし得なかった。 「実は先刻さっき妻さいと少し喧嘩けんかをしてね。それで下くだらない神経を昂奮こうふんさせてしま
ったんです」と先生がまたいった。
「どうして……」 私には喧嘩という言葉が口へ出て来なかった。
「妻が私を誤解するのです。それを誤解だといって聞かせても承知しないのです。つい腹を立てたのです
」 「どんなに先生を誤解なさるんですか」
先生は私のこの問いに答えようとはしなかった。
「妻が考えているような人間なら、私だってこんなに苦しんでいやしない」 先生がどんなに苦しんでいるか、これも私には想像の及ばない問題であった。
十 二人が帰るとき歩きながらの沈黙が一丁ちょうも二丁もつづいた。その後あとで突然先生が口を利きき
出した。 「悪い事をした。怒って出たから妻さいはさぞ心配をしているだろう。考えると女は可哀かわいそうなも
のですね。私わたくしの妻などは私より外ほかにまるで頼りにするものがないんだから」
先生の言葉はちょっとそこで途切とぎれたが、別に私の返事を期待する様子もなく、すぐその続きへ移 って行った。
「そういうと、夫の方はいかにも心丈夫のようで少し滑稽こっけいだが。君、私は君の眼にどう映ります
かね。強い人に見えますか、弱い人に見えますか」 「中位ちゅうぐらいに見えます」と私は答えた。この答えは先生にとって少し案外らしかった。先生はま
た口を閉じて、無言で歩き出した。
先生の宅うちへ帰るには私の下宿のつい傍そばを通るのが順路であった。私はそこまで来て、曲り角で 分れるのが先生に済まないような気がした。「ついでにお宅たくの前までお伴ともしましょうか」といっ
た。先生は忽たちまち手で私を遮さえぎった。
「もう遅いから早く帰りたまえ。私も早く帰ってやるんだから、妻君さいくんのために」 先生が最後に付け加えた「妻君のために」という言葉は妙にその時の私の心を暖かにした。私はその言
葉のために、帰ってから安心して寝る事ができた。私はその後ごも長い間この「妻君のために」という言
葉を忘れなかった。 先生と奥さんの間に起った波瀾はらんが、大したものでない事はこれでも解わかった。それがまた滅多
めったに起る現象でなかった事も、その後絶えず出入でいりをして来た私にはほぼ推察ができた。それど
ころか先生はある時こんな感想すら私に洩もらした。 「私は世の中で女というものをたった一人しか知らない。妻さい以外の女はほとんど女として私に訴えな
いのです。妻の方でも、私を天下にただ一人しかない男と思ってくれています。そういう意味からいって
、私たちは最も幸福に生れた人間の一対いっついであるべきはずです」 私は今前後の行ゆき掛がかりを忘れてしまったから、先生が何のためにこんな自白を私にして聞かせた
のか、判然はっきりいう事ができない。けれども先生の態度の真面目まじめであったのと、調子の沈んで
いたのとは、いまだに記憶に残っている。その時ただ私の耳に異様に響いたのは、「最も幸福に生れた人 間の一対であるべきはずです」という最後の一句であった。先生はなぜ幸福な人間といい切らないで、あ
るべきはずであると断わったのか。私にはそれだけが不審であった。ことにそこへ一種の力を入れた先生
の語気が不審であった。先生は事実はたして幸福なのだろうか、また幸福であるべきはずでありながら、 それほど幸福でないのだろうか。私は心の中うちで疑うたぐらざるを得なかった。けれどもその疑いは一
時限りどこかへ葬ほうむられてしまった。
私はそのうち先生の留守に行って、奥さんと二人差向さしむかいで話をする機会に出合った。先生はそ の日横浜よこはまを出帆しゅっぱんする汽船に乗って外国へ行くべき友人を新橋しんばしへ送りに行って
留守であった。横浜から船に乗る人が、朝八時半の汽車で新橋を立つのはその頃ころの習慣であった。私
はある書物について先生に話してもらう必要があったので、あらかじめ先生の承諾を得た通り、約束の九 時に訪問した。先生の新橋行きは前日わざわざ告別に来た友人に対する礼義れいぎとしてその日突然起っ
た出来事であった。先生はすぐ帰るから留守でも私に待っているようにといい残して行った。それで私は
座敷へ上がって、先生を待つ間、奥さんと話をした。 その時の私わたくしはすでに大学生であった。始めて先生の宅うちへ来た頃ころから見るとずっと成人
した気でいた。奥さんとも大分だいぶ懇意になった後のちであった。私は奥さんに対して何の窮屈も感じ
なかった。差向さしむかいで色々の話をした。しかしそれは特色のないただの談話だから、今ではまるで 忘れてしまった。そのうちでたった一つ私の耳に留まったものがある。しかしそれを話す前に、ちょっと
断っておきたい事がある。
先生は大学出身であった。これは始めから私に知れていた。しかし先生の何もしないで遊んでいるとい う事は、東京へ帰って少し経たってから始めて分った。私はその時どうして遊んでいられるのかと思った
。
先生はまるで世間に名前を知られていない人であった。だから先生の学問や思想については、先生と密 切みっせつの関係をもっている私より外ほかに敬意を払うもののあるべきはずがなかった。それを私は常
に惜おしい事だといった。先生はまた「私のようなものが世の中へ出て、口を利きいては済まない」と答
えるぎりで、取り合わなかった。私にはその答えが謙遜けんそん過ぎてかえって世間を冷評するようにも 聞こえた。実際先生は時々昔の同級生で今著名になっている誰彼だれかれを捉とらえて、ひどく無遠慮な
批評を加える事があった。それで私は露骨にその矛盾を挙げて云々うんぬんしてみた。私の精神は反抗の
意味というよりも、世間が先生を知らないで平気でいるのが残念だったからである。その時先生は沈んだ 調子で、「どうしても私は世間に向かって働き掛ける資格のない男だから仕方がありません」といった。
先生の顔には深い一種の表情がありありと刻まれた。私にはそれが失望だか、不平だか、悲哀だか、解わ
からなかったけれども、何しろ二の句の継げないほどに強いものだったので、私はそれぎり何もいう勇気 が出なかった。
私が奥さんと話している間に、問題が自然先生の事からそこへ落ちて来た。
「先生はなぜああやって、宅で考えたり勉強したりなさるだけで、世の中へ出て仕事をなさらないんでし ょう」
「あの人は駄目だめですよ。そういう事が嫌いなんですから」
「つまり下くだらない事だと悟っていらっしゃるんでしょうか」 「悟るの悟らないのって、――そりゃ女だからわたくしには解りませんけれど、おそらくそんな意味じゃ
ないでしょう。やっぱり何かやりたいのでしょう。それでいてできないんです。だから気の毒ですわ」
「しかし先生は健康からいって、別にどこも悪いところはないようじゃありませんか」 「丈夫ですとも。何にも持病はありません」
「それでなぜ活動ができないんでしょう」
「それが解わからないのよ、あなた。それが解るくらいなら私だって、こんなに心配しやしません。わか らないから気の毒でたまらないんです」
奥さんの語気には非常に同情があった。それでも口元だけには微笑が見えた。外側からいえば、私の方
がむしろ真面目まじめだった。私はむずかしい顔をして黙っていた。すると奥さんが急に思い出したよう にまた口を開いた。
「若い時はあんな人じゃなかったんですよ。若い時はまるで違っていました。それが全く変ってしまった
んです」 「若い時っていつ頃ですか」と私が聞いた。
「書生時代よ」
「書生時代から先生を知っていらっしゃったんですか」 奥さんは東京の人であった。それはかつて先生からも奥さん自身からも聞いて知っていた。奥さんは「
本当いうと合あいの子こなんですよ」といった。奥さんの父親はたしか鳥取とっとりかどこかの出である のに、お母さんの方はまだ江戸といった時分じぶんの市ヶ谷いちがやで生れた女なので、奥さんは冗談半
分そういったのである。ところが先生は全く方角違いの新潟にいがた県人であった。だから奥さんがもし
先生の書生時代を知っているとすれば、郷里の関係からでない事は明らかであった。しかし薄赤い顔をし た奥さんはそれより以上の話をしたくないようだったので、私の方でも深くは聞かずにおいた。
先生と知り合いになってから先生の亡くなるまでに、私はずいぶん色々の問題で先生の思想や情操に触
れてみたが、結婚当時の状況については、ほとんど何ものも聞き得なかった。私は時によると、それを善 意に解釈してもみた。年輩の先生の事だから、艶なまめかしい回想などを若いものに聞かせるのはわざと
慎つつしんでいるのだろうと思った。時によると、またそれを悪くも取った。先生に限らず、奥さんに限
らず、二人とも私に比べると、一時代前の因襲のうちに成人したために、そういう艶つやっぽい問題にな ると、正直に自分を開放するだけの勇気がないのだろうと考えた。もっともどちらも推測に過ぎなかった
。そうしてどちらの推測の裏にも、二人の結婚の奥に横たわる花やかなロマンスの存在を仮定していた。
私の仮定ははたして誤らなかった。けれども私はただ恋の半面だけを想像に描えがき得たに過ぎなかっ た。先生は美しい恋愛の裏に、恐ろしい悲劇を持っていた。そうしてその悲劇のどんなに先生にとって見
惨みじめなものであるかは相手の奥さんにまるで知れていなかった。奥さんは今でもそれを知らずにいる
。先生はそれを奥さんに隠して死んだ。先生は奥さんの幸福を破壊する前に、まず自分の生命を破壊して しまった。
私は今この悲劇について何事も語らない。その悲劇のためにむしろ生れ出たともいえる二人の恋愛につ
いては、先刻さっきいった通りであった。二人とも私にはほとんど何も話してくれなかった。奥さんは慎 みのために、先生はまたそれ以上の深い理由のために。
ただ一つ私の記憶に残っている事がある。或ある時花時分はなじぶんに私は先生といっしょに上野うえ
のへ行った。そうしてそこで美しい一対いっついの男女なんにょを見た。彼らは睦むつまじそうに寄り添 って花の下を歩いていた。場所が場所なので、花よりもそちらを向いて眼を峙そばだてている人が沢山あ
った。
「新婚の夫婦のようだね」と先生がいった。 「仲が好よさそうですね」と私が答えた。
先生は苦笑さえしなかった。二人の男女を視線の外ほかに置くような方角へ足を向けた。それから私に
こう聞いた。 「君は恋をした事がありますか」
私はないと答えた。
「恋をしたくはありませんか」 私は答えなかった。
「したくない事はないでしょう」
「ええ」 「君は今あの男と女を見て、冷評ひやかしましたね。あの冷評ひやかしのうちには君が恋を求めながら相
手を得られないという不快の声が交まじっていましょう」
「そんな風ふうに聞こえましたか」 「聞こえました。恋の満足を味わっている人はもっと暖かい声を出すものです。しかし……しかし君、恋
は罪悪ですよ。解わかっていますか」
私は急に驚かされた。何とも返事をしなかった。 我々は群集の中にいた。群集はいずれも嬉うれしそうな顔をしていた。そこを通り抜けて、花も人も見
えない森の中へ来るまでは、同じ問題を口にする機会がなかった。
「恋は罪悪ですか」と私わたくしがその時突然聞いた。 「罪悪です。たしかに」と答えた時の先生の語気は前と同じように強かった。
「なぜですか」
「なぜだか今に解ります。今にじゃない、もう解っているはずです。あなたの心はとっくの昔からすでに 恋で動いているじゃありませんか」
私は一応自分の胸の中を調べて見た。けれどもそこは案外に空虚であった。思いあたるようなものは何
にもなかった。 「私の胸の中にこれという目的物は一つもありません。私は先生に何も隠してはいないつもりです」
「目的物がないから動くのです。あれば落ち付けるだろうと思って動きたくなるのです」
「今それほど動いちゃいません」 「あなたは物足りない結果私の所に動いて来たじゃありませんか」
「それはそうかも知れません。しかしそれは恋とは違います」
「恋に上のぼる楷段かいだんなんです。異性と抱き合う順序として、まず同性の私の所へ動いて来たので す」
「私には二つのものが全く性質を異ことにしているように思われます」
「いや同じです。私は男としてどうしてもあなたに満足を与えられない人間なのです。それから、ある特 別の事情があって、なおさらあなたに満足を与えられないでいるのです。私は実際お気の毒に思っていま
す。あなたが私からよそへ動いて行くのは仕方がない。私はむしろそれを希望しているのです。しかし…
…」 私は変に悲しくなった。
「私が先生から離れて行くようにお思いになれば仕方がありませんが、私にそんな気の起った事はまだあ
りません」 先生は私の言葉に耳を貸さなかった。
「しかし気を付けないといけない。恋は罪悪なんだから。私の所では満足が得られない代りに危険もない
が、――君、黒い長い髪で縛られた時の心持を知っていますか」 私は想像で知っていた。しかし事実としては知らなかった。いずれにしても先生のいう罪悪という意味
は朦朧もうろうとしてよく解わからなかった。その上私は少し不愉快になった。
「先生、罪悪という意味をもっと判然はっきりいって聞かして下さい。それでなければこの問題をここで 切り上げて下さい。私自身に罪悪という意味が判然解るまで」
「悪い事をした。私はあなたに真実まことを話している気でいた。ところが実際は、あなたを焦慮じらし
ていたのだ。私は悪い事をした」 先生と私とは博物館の裏から鶯渓うぐいすだにの方角に静かな歩調で歩いて行った。垣の隙間すきまか
ら広い庭の一部に茂る熊笹くまざさが幽邃ゆうすいに見えた。
「君は私がなぜ毎月まいげつ雑司ヶ谷ぞうしがやの墓地に埋うまっている友人の墓へ参るのか知っていま すか」
先生のこの問いは全く突然であった。しかも先生は私がこの問いに対して答えられないという事もよく
承知していた。私はしばらく返事をしなかった。すると先生は始めて気が付いたようにこういった。 「また悪い事をいった。焦慮じらせるのが悪いと思って、説明しようとすると、その説明がまたあなたを
焦慮せるような結果になる。どうも仕方がない。この問題はこれで止やめましょう。とにかく恋は罪悪で
すよ、よござんすか。そうして神聖なものですよ」 私には先生の話がますます解わからなくなった。しかし先生はそれぎり恋を口にしなかった。
十四 年の若い私わたくしはややともすると一図いちずになりやすかった。少なくとも先生の眼にはそう映っ
ていたらしい。私には学校の講義よりも先生の談話の方が有益なのであった。教授の意見よりも先生の思 想の方が有難いのであった。とどの詰まりをいえば、教壇に立って私を指導してくれる偉い人々よりもた
だ独ひとりを守って多くを語らない先生の方が偉く見えたのであった。
「あんまり逆上のぼせちゃいけません」と先生がいった。 「覚さめた結果としてそう思うんです」と答えた時の私には充分の自信があった。その自信を先生は肯う
けがってくれなかった。
「あなたは熱に浮かされているのです。熱がさめると厭いやになります。私は今のあなたからそれほどに 思われるのを、苦しく感じています。しかしこれから先のあなたに起るべき変化を予想して見ると、なお
苦しくなります」
「私はそれほど軽薄に思われているんですか。それほど不信用なんですか」 「私はお気の毒に思うのです」
「気の毒だが信用されないとおっしゃるんですか」
先生は迷惑そうに庭の方を向いた。その庭に、この間まで重そうな赤い強い色をぽたぽた点じていた椿 つばきの花はもう一つも見えなかった。先生は座敷からこの椿の花をよく眺ながめる癖があった。
「信用しないって、特にあなたを信用しないんじゃない。人間全体を信用しないんです」
その時生垣いけがきの向うで金魚売りらしい声がした。その外ほかには何の聞こえるものもなかった。 大通りから二丁ちょうも深く折れ込んだ小路こうじは存外ぞんがい静かであった。家うちの中はいつもの
通りひっそりしていた。私は次の間まに奥さんのいる事を知っていた。黙って針仕事か何かしている奥さ
んの耳に私の話し声が聞こえるという事も知っていた。しかし私は全くそれを忘れてしまった。 「じゃ奥さんも信用なさらないんですか」と先生に聞いた。
先生は少し不安な顔をした。そうして直接の答えを避けた。
「私は私自身さえ信用していないのです。つまり自分で自分が信用できないから、人も信用できないよう になっているのです。自分を呪のろうより外ほかに仕方がないのです」
「そうむずかしく考えれば、誰だって確かなものはないでしょう」
「いや考えたんじゃない。やったんです。やった後で驚いたんです。そうして非常に怖こわくなったんで す」
私はもう少し先まで同じ道を辿たどって行きたかった。すると襖ふすまの陰で「あなた、あなた」とい
う奥さんの声が二度聞こえた。先生は二度目に「何だい」といった。奥さんは「ちょっと」と先生を次の 間まへ呼んだ。二人の間にどんな用事が起ったのか、私には解わからなかった。それを想像する余裕を与
えないほど早く先生はまた座敷へ帰って来た。
「とにかくあまり私を信用してはいけませんよ。今に後悔するから。そうして自分が欺あざむかれた返報 に、残酷な復讐ふくしゅうをするようになるものだから」
「そりゃどういう意味ですか」
「かつてはその人の膝ひざの前に跪ひざまずいたという記憶が、今度はその人の頭の上に足を載のせさせ ようとするのです。私は未来の侮辱を受けないために、今の尊敬を斥しりぞけたいと思うのです。私は今
より一層淋さびしい未来の私を我慢する代りに、淋しい今の私を我慢したいのです。自由と独立と己おの
れとに充みちた現代に生れた我々は、その犠牲としてみんなこの淋しみを味わわなくてはならないでしょ う」
私はこういう覚悟をもっている先生に対して、いうべき言葉を知らなかった。 十五
その後ご私わたくしは奥さんの顔を見るたびに気になった。先生は奥さんに対しても始終こういう態度 に出るのだろうか。もしそうだとすれば、奥さんはそれで満足なのだろうか。
奥さんの様子は満足とも不満足とも極きめようがなかった。私はそれほど近く奥さんに接触する機会が
なかったから。それから奥さんは私に会うたびに尋常であったから。最後に先生のいる席でなければ私と 奥さんとは滅多めったに顔を合せなかったから。
私の疑惑はまだその上にもあった。先生の人間に対するこの覚悟はどこから来るのだろうか。ただ冷た
い眼で自分を内省したり現代を観察したりした結果なのだろうか。先生は坐すわって考える質たちの人で あった。先生の頭さえあれば、こういう態度は坐って世の中を考えていても自然と出て来るものだろうか
。私にはそうばかりとは思えなかった。先生の覚悟は生きた覚悟らしかった。火に焼けて冷却し切った石
造せきぞう家屋の輪廓りんかくとは違っていた。私の眼に映ずる先生はたしかに思想家であった。けれど もその思想家の纏まとめ上げた主義の裏には、強い事実が織り込まれているらしかった。自分と切り離さ
れた他人の事実でなくって、自分自身が痛切に味わった事実、血が熱くなったり脈が止まったりするほど
の事実が、畳み込まれているらしかった。 これは私の胸で推測するがものはない。先生自身すでにそうだと告白していた。ただその告白が雲の峯
みねのようであった。私の頭の上に正体の知れない恐ろしいものを蔽おおい被かぶせた。そうしてなぜそ
れが恐ろしいか私にも解わからなかった。告白はぼうとしていた。それでいて明らかに私の神経を震ふる わせた。
私は先生のこの人生観の基点に、或ある強烈な恋愛事件を仮定してみた。(無論先生と奥さんとの間に
起った)。先生がかつて恋は罪悪だといった事から照らし合せて見ると、多少それが手掛てがかりにもな った。しかし先生は現に奥さんを愛していると私に告げた。すると二人の恋からこんな厭世えんせいに近
い覚悟が出ようはずがなかった。「かつてはその人の前に跪ひざまずいたという記憶が、今度はその人の
頭の上に足を載のせさせようとする」といった先生の言葉は、現代一般の誰彼たれかれについて用いられ るべきで、先生と奥さんの間には当てはまらないもののようでもあった。
雑司ヶ谷ぞうしがやにある誰だれだか分らない人の墓、――これも私の記憶に時々動いた。私はそれが
先生と深い縁故のある墓だという事を知っていた。先生の生活に近づきつつありながら、近づく事のでき ない私は、先生の頭の中にある生命いのちの断片として、その墓を私の頭の中にも受け入れた。けれども
私に取ってその墓は全く死んだものであった。二人の間にある生命いのちの扉を開ける鍵かぎにはならな
かった。むしろ二人の間に立って、自由の往来を妨げる魔物のようであった。 そうこうしているうちに、私はまた奥さんと差し向いで話をしなければならない時機が来た。その頃こ
ろは日の詰つまって行くせわしない秋に、誰も注意を惹ひかれる肌寒はださむの季節であった。先生の附
近ふきんで盗難に罹かかったものが三、四日続いて出た。盗難はいずれも宵の口であった。大したものを 持って行かれた家うちはほとんどなかったけれども、はいられた所では必ず何か取られた。奥さんは気味
をわるくした。そこへ先生がある晩家を空あけなければならない事情ができてきた。先生と同郷の友人で
地方の病院に奉職しているものが上京したため、先生は外ほかの二、三名と共に、ある所でその友人に飯 めしを食わせなければならなくなった。先生は訳を話して、私に帰ってくる間までの留守番を頼んだ。私
はすぐ引き受けた。 十六
私わたくしの行ったのはまだ灯ひの点つくか点かない暮れ方であったが、几帳面きちょうめんな先生は もう宅うちにいなかった。「時間に後おくれると悪いって、つい今しがた出掛けました」といった奥さん
は、私を先生の書斎へ案内した。
書斎には洋机テーブルと椅子いすの外ほかに、沢山の書物が美しい背皮せがわを並べて、硝子越ガラス ごしに電燈でんとうの光で照らされていた。奥さんは火鉢の前に敷いた座蒲団ざぶとんの上へ私を坐すわ
らせて、「ちっとそこいらにある本でも読んでいて下さい」と断って出て行った。私はちょうど主人の帰
りを待ち受ける客のような気がして済まなかった。私は畏かしこまったまま烟草タバコを飲んでいた。奥 さんが茶の間で何か下女げじょに話している声が聞こえた。書斎は茶の間の縁側を突き当って折れ曲った
角かどにあるので、棟むねの位置からいうと、座敷よりもかえって掛け離れた静かさを領りょうしていた
。ひとしきりで奥さんの話し声が已やむと、後あとはしんとした。私は泥棒を待ち受けるような心持で、 凝じっとしながら気をどこかに配った。
三十分ほどすると、奥さんがまた書斎の入口へ顔を出した。「おや」といって、軽く驚いた時の眼を私
に向けた。そうして客に来た人のように鹿爪しかつめらしく控えている私をおかしそうに見た。 「それじゃ窮屈でしょう」
「いえ、窮屈じゃありません」
「でも退屈でしょう」 「いいえ。泥棒が来るかと思って緊張しているから退屈でもありません」
奥さんは手に紅茶茶碗こうちゃぢゃわんを持ったまま、笑いながらそこに立っていた。
「ここは隅っこだから番をするには好よくありませんね」と私がいった。 「じゃ失礼ですがもっと真中へ出て来て頂戴ちょうだい。ご退屈たいくつだろうと思って、お茶を入れて
持って来たんですが、茶の間で宜よろしければあちらで上げますから」
私は奥さんの後あとに尾ついて書斎を出た。茶の間には綺麗きれいな長火鉢ながひばちに鉄瓶てつびん が鳴っていた。私はそこで茶と菓子のご馳走ちそうになった。奥さんは寝ねられないといけないといって
、茶碗に手を触れなかった。
「先生はやっぱり時々こんな会へお出掛でかけになるんですか」 「いいえ滅多めったに出た事はありません。近頃ちかごろは段々人の顔を見るのが嫌きらいになるようで
す」
こういった奥さんの様子に、別段困ったものだという風ふうも見えなかったので、私はつい大胆になっ た。
「それじゃ奥さんだけが例外なんですか」
「いいえ私も嫌われている一人なんです」 「そりゃ嘘うそです」と私がいった。「奥さん自身嘘と知りながらそうおっしゃるんでしょう」
「なぜ」
「私にいわせると、奥さんが好きになったから世間が嫌いになるんですもの」 「あなたは学問をする方かただけあって、なかなかお上手じょうずね。空からっぽな理屈を使いこなす事
が。世の中が嫌いになったから、私までも嫌いになったんだともいわれるじゃありませんか。それと同お
んなじ理屈で」 「両方ともいわれる事はいわれますが、この場合は私の方が正しいのです」
「議論はいやよ。よく男の方は議論だけなさるのね、面白そうに。空からの盃さかずきでよくああ飽きず
に献酬けんしゅうができると思いますわ」 奥さんの言葉は少し手痛てひどかった。しかしその言葉の耳障みみざわりからいうと、決して猛烈なも
のではなかった。自分に頭脳のある事を相手に認めさせて、そこに一種の誇りを見出みいだすほどに奥さ
んは現代的でなかった。奥さんはそれよりもっと底の方に沈んだ心を大事にしているらしく見えた。 私わたくしはまだその後あとにいうべき事をもっていた。けれども奥さんから徒いたずらに議論を仕掛
ける男のように取られては困ると思って遠慮した。奥さんは飲み干した紅茶茶碗こうちゃぢゃわんの底を
覗のぞいて黙っている私を外そらさないように、「もう一杯上げましょうか」と聞いた。私はすぐ茶碗を 奥さんの手に渡した。
「いくつ? 一つ? 二ッつ?」
妙なもので角砂糖をつまみ上げた奥さんは、私の顔を見て、茶碗の中へ入れる砂糖の数かずを聞いた。 奥さんの態度は私に媚こびるというほどではなかったけれども、先刻さっきの強い言葉を力つとめて打ち
消そうとする愛嬌あいきょうに充みちていた。
私は黙って茶を飲んだ。飲んでしまっても黙っていた。 「あなた大変黙り込んじまったのね」と奥さんがいった。
「何かいうとまた議論を仕掛けるなんて、叱しかり付けられそうですから」と私は答えた。
「まさか」と奥さんが再びいった。 二人はそれを緒口いとくちにまた話を始めた。そうしてまた二人に共通な興味のある先生を問題にした
。
「奥さん、先刻さっきの続きをもう少しいわせて下さいませんか。奥さんには空からな理屈と聞こえるか も知れませんが、私はそんな上うわの空そらでいってる事じゃないんだから」
「じゃおっしゃい」
「今奥さんが急にいなくなったとしたら、先生は現在の通りで生きていられるでしょうか」 「そりゃ分らないわ、あなた。そんな事、先生に聞いて見るより外ほかに仕方がないじゃありませんか。
私の所へ持って来る問題じゃないわ」
「奥さん、私は真面目まじめですよ。だから逃げちゃいけません。正直に答えなくっちゃ」 「正直よ。正直にいって私には分らないのよ」
「じゃ奥さんは先生をどのくらい愛していらっしゃるんですか。これは先生に聞くよりむしろ奥さんに伺
っていい質問ですから、あなたに伺います」 「何もそんな事を開き直って聞かなくっても好いいじゃありませんか」
「真面目くさって聞くがものはない。分り切ってるとおっしゃるんですか」
「まあそうよ」 「そのくらい先生に忠実なあなたが急にいなくなったら、先生はどうなるんでしょう。世の中のどっちを
向いても面白そうでない先生は、あなたが急にいなくなったら後でどうなるでしょう。先生から見てじゃ
ない。あなたから見てですよ。あなたから見て、先生は幸福になるでしょうか、不幸になるでしょうか」 「そりゃ私から見れば分っています。(先生はそう思っていないかも知れませんが)。先生は私を離れれ
ば不幸になるだけです。あるいは生きていられないかも知れませんよ。そういうと、己惚おのぼれになる
ようですが、私は今先生を人間としてできるだけ幸福にしているんだと信じていますわ。どんな人があっ ても私ほど先生を幸福にできるものはないとまで思い込んでいますわ。それだからこうして落ち付いてい
られるんです」
「その信念が先生の心に好よく映るはずだと私は思いますが」 「それは別問題ですわ」
「やっぱり先生から嫌われているとおっしゃるんですか」
「私は嫌われてるとは思いません。嫌われる訳がないんですもの。しかし先生は世間が嫌いなんでしょう 。世間というより近頃ちかごろでは人間が嫌いになっているんでしょう。だからその人間の一人いちにん
として、私も好かれるはずがないじゃありませんか」
奥さんの嫌われているという意味がやっと私に呑のみ込めた。 私わたくしは奥さんの理解力に感心した。奥さんの態度が旧式の日本の女らしくないところも私の注意
に一種の刺戟しげきを与えた。それで奥さんはその頃ころ流行はやり始めたいわゆる新しい言葉などはほ
とんど使わなかった。 私は女というものに深い交際つきあいをした経験のない迂闊うかつな青年であった。男としての私は、
異性に対する本能から、憧憬どうけいの目的物として常に女を夢みていた。けれどもそれは懐かしい春の
雲を眺ながめるような心持で、ただ漠然ばくぜんと夢みていたに過ぎなかった。だから実際の女の前へ出 ると、私の感情が突然変る事が時々あった。私は自分の前に現われた女のために引き付けられる代りに、
その場に臨んでかえって変な反撥力はんぱつりょくを感じた。奥さんに対した私にはそんな気がまるで出
なかった。普通男女なんにょの間に横たわる思想の不平均という考えもほとんど起らなかった。私は奥さ んの女であるという事を忘れた。私はただ誠実なる先生の批評家および同情家として奥さんを眺めた。
「奥さん、私がこの前なぜ先生が世間的にもっと活動なさらないのだろうといって、あなたに聞いた時に
、あなたはおっしゃった事がありますね。元はああじゃなかったんだって」 「ええいいました。実際あんなじゃなかったんですもの」
「どんなだったんですか」
「あなたの希望なさるような、また私の希望するような頼もしい人だったんです」 「それがどうして急に変化なすったんですか」
「急にじゃありません、段々ああなって来たのよ」
「奥さんはその間あいだ始終先生といっしょにいらしったんでしょう」 「無論いましたわ。夫婦ですもの」
「じゃ先生がそう変って行かれる源因げんいんがちゃんと解わかるべきはずですがね」
「それだから困るのよ。あなたからそういわれると実に辛つらいんですが、私にはどう考えても、考えよ うがないんですもの。私は今まで何遍なんべんあの人に、どうぞ打ち明けて下さいって頼んで見たか分り
ゃしません」
「先生は何とおっしゃるんですか」 「何にもいう事はない、何にも心配する事はない、おれはこういう性質になったんだからというだけで、
取り合ってくれないんです」
私は黙っていた。奥さんも言葉を途切とぎらした。下女部屋げじょべやにいる下女はことりとも音をさ せなかった。私はまるで泥棒の事を忘れてしまった。
「あなたは私に責任があるんだと思ってやしませんか」と突然奥さんが聞いた。
「いいえ」と私が答えた。 「どうぞ隠さずにいって下さい。そう思われるのは身を切られるより辛いんだから」と奥さんがまたいっ
た。「これでも私は先生のためにできるだけの事はしているつもりなんです」
「そりゃ先生もそう認めていられるんだから、大丈夫です。ご安心なさい、私が保証します」 奥さんは火鉢の灰を掻かき馴ならした。それから水注みずさしの水を鉄瓶てつびんに注さした。鉄瓶は
忽たちまち鳴りを沈めた。
「私はとうとう辛防しんぼうし切れなくなって、先生に聞きました。私に悪い所があるなら遠慮なくいっ て下さい、改められる欠点なら改めるからって、すると先生は、お前に欠点なんかありゃしない、欠点は
おれの方にあるだけだというんです。そういわれると、私悲しくなって仕様がないんです、涙が出てなお
の事自分の悪い所が聞きたくなるんです」 始め私わたくしは理解のある女性にょしょうとして奥さんに対していた。私がその気で話しているうち
に、奥さんの様子が次第に変って来た。奥さんは私の頭脳に訴える代りに、私の心臓ハートを動かし始め た。自分と夫の間には何の蟠わだかまりもない、またないはずであるのに、やはり何かある。それだのに
眼を開あけて見極みきわめようとすると、やはり何なんにもない。奥さんの苦にする要点はここにあった
。 奥さんは最初世の中を見る先生の眼が厭世的えんせいてきだから、その結果として自分も嫌われている
のだと断言した。そう断言しておきながら、ちっともそこに落ち付いていられなかった。底を割ると、か
えってその逆を考えていた。先生は自分を嫌う結果、とうとう世の中まで厭いやになったのだろうと推測 していた。けれどもどう骨を折っても、その推測を突き留めて事実とする事ができなかった。先生の態度
はどこまでも良人おっとらしかった。親切で優しかった。疑いの塊かたまりをその日その日の情合じょう
あいで包んで、そっと胸の奥にしまっておいた奥さんは、その晩その包みの中を私の前で開けて見せた。 「あなたどう思って?」と聞いた。「私からああなったのか、それともあなたのいう人世観じんせいかん
とか何とかいうものから、ああなったのか。隠さずいって頂戴ちょうだい」
私は何も隠す気はなかった。けれども私の知らないあるものがそこに存在しているとすれば、私の答え が何であろうと、それが奥さんを満足させるはずがなかった。そうして私はそこに私の知らないあるもの
があると信じていた。
「私には解わかりません」 奥さんは予期の外はずれた時に見る憐あわれな表情をその咄嗟とっさに現わした。私はすぐ私の言葉を
継ぎ足した。
「しかし先生が奥さんを嫌っていらっしゃらない事だけは保証します。私は先生自身の口から聞いた通り を奥さんに伝えるだけです。先生は嘘うそを吐つかない方かたでしょう」
奥さんは何とも答えなかった。しばらくしてからこういった。
「実は私すこし思いあたる事があるんですけれども……」 「先生がああいう風ふうになった源因げんいんについてですか」
「ええ。もしそれが源因だとすれば、私の責任だけはなくなるんだから、それだけでも私大変楽になれる
んですが、……」 「どんな事ですか」
奥さんはいい渋って膝ひざの上に置いた自分の手を眺めていた。
「あなた判断して下すって。いうから」 「私にできる判断ならやります」
「みんなはいえないのよ。みんないうと叱しかられるから。叱られないところだけよ」
私は緊張して唾液つばきを呑のみ込んだ。 「先生がまだ大学にいる時分、大変仲の好いいお友達が一人あったのよ。その方かたがちょうど卒業する
少し前に死んだんです。急に死んだんです」
奥さんは私の耳に私語ささやくような小さな声で、「実は変死したんです」といった。それは「どうし て」と聞き返さずにはいられないようないい方であった。
「それっ切りしかいえないのよ。けれどもその事があってから後のちなんです。先生の性質が段々変って
来たのは。なぜその方が死んだのか、私には解らないの。先生にもおそらく解っていないでしょう。けれ どもそれから先生が変って来たと思えば、そう思われない事もないのよ」
「その人の墓ですか、雑司ヶ谷ぞうしがやにあるのは」
「それもいわない事になってるからいいません。しかし人間は親友を一人亡くしただけで、そんなに変化 できるものでしょうか。私はそれが知りたくって堪たまらないんです。だからそこを一つあなたに判断し
て頂きたいと思うの」
私の判断はむしろ否定の方に傾いていた。 私わたくしは私のつらまえた事実の許す限り、奥さんを慰めようとした。奥さんもまたできるだけ私に
よって慰められたそうに見えた。それで二人は同じ問題をいつまでも話し合った。けれども私はもともと
事の大根おおねを攫つかんでいなかった。奥さんの不安も実はそこに漂ただよう薄い雲に似た疑惑から出 て来ていた。事件の真相になると、奥さん自身にも多くは知れていなかった。知れているところでも悉皆
すっかりは私に話す事ができなかった。したがって慰める私も、慰められる奥さんも、共に波に浮いて、
ゆらゆらしていた。ゆらゆらしながら、奥さんはどこまでも手を出して、覚束おぼつかない私の判断に縋 すがり付こうとした。
十時頃ごろになって先生の靴の音が玄関に聞こえた時、奥さんは急に今までのすべてを忘れたように、
前に坐すわっている私をそっちのけにして立ち上がった。そうして格子こうしを開ける先生をほとんど出 合であい頭がしらに迎えた。私は取り残されながら、後あとから奥さんに尾ついて行った。下女げじょだ
けは仮寝うたたねでもしていたとみえて、ついに出て来なかった。
先生はむしろ機嫌がよかった。しかし奥さんの調子はさらによかった。今しがた奥さんの美しい眼のう ちに溜たまった涙の光と、それから黒い眉毛まゆげの根に寄せられた八の字を記憶していた私は、その変
化を異常なものとして注意深く眺ながめた。もしそれが詐いつわりでなかったならば、(実際それは詐り
とは思えなかったが)、今までの奥さんの訴えは感傷センチメントを玩もてあそぶためにとくに私を相手 に拵こしらえた、徒いたずらな女性の遊戯と取れない事もなかった。もっともその時の私には奥さんをそ
れほど批評的に見る気は起らなかった。私は奥さんの態度の急に輝いて来たのを見て、むしろ安心した。
これならばそう心配する必要もなかったんだと考え直した。 先生は笑いながら「どうもご苦労さま、泥棒は来ませんでしたか」と私に聞いた。それから「来ないん
で張合はりあいが抜けやしませんか」といった。
帰る時、奥さんは「どうもお気の毒さま」と会釈した。その調子は忙しいところを暇を潰つぶさせて気 の毒だというよりも、せっかく来たのに泥棒がはいらなくって気の毒だという冗談のように聞こえた。奥
さんはそういいながら、先刻さっき出した西洋菓子の残りを、紙に包んで私の手に持たせた。私はそれを
袂たもとへ入れて、人通りの少ない夜寒よさむの小路こうじを曲折して賑にぎやかな町の方へ急いだ。 私はその晩の事を記憶のうちから抽ひき抜いてここへ詳くわしく書いた。これは書くだけの必要がある
から書いたのだが、実をいうと、奥さんに菓子を貰もらって帰るときの気分では、それほど当夜の会話を
重く見ていなかった。私はその翌日よくじつ午飯ひるめしを食いに学校から帰ってきて、昨夜ゆうべ机の 上に載のせて置いた菓子の包みを見ると、すぐその中からチョコレートを塗った鳶色とびいろのカステラ
を出して頬張ほおばった。そうしてそれを食う時に、必竟ひっきょうこの菓子を私にくれた二人の男女な
んにょは、幸福な一対いっついとして世の中に存在しているのだと自覚しつつ味わった。 秋が暮れて冬が来るまで格別の事もなかった。私は先生の宅うちへ出ではいりをするついでに、衣服の
洗あらい張はりや仕立したて方かたなどを奥さんに頼んだ。それまで繻絆じゅばんというものを着た事の
ない私が、シャツの上に黒い襟のかかったものを重ねるようになったのはこの時からであった。子供のな い奥さんは、そういう世話を焼くのがかえって退屈凌たいくつしのぎになって、結句けっく身体からだの
薬だぐらいの事をいっていた。
「こりゃ手織ておりね。こんな地じの好いい着物は今まで縫った事がないわ。その代り縫い悪にくいのよ そりゃあ。まるで針が立たないんですもの。お蔭かげで針を二本折りましたわ」
こんな苦情をいう時ですら、奥さんは別に面倒めんどうくさいという顔をしなかった。 二十一
冬が来た時、私わたくしは偶然国へ帰らなければならない事になった。私の母から受け取った手紙の中 に、父の病気の経過が面白くない様子を書いて、今が今という心配もあるまいが、年が年だから、できる
なら都合して帰って来てくれと頼むように付け足してあった。
父はかねてから腎臓じんぞうを病んでいた。中年以後の人にしばしば見る通り、父のこの病やまいは慢 性であった。その代り要心さえしていれば急変のないものと当人も家族のものも信じて疑わなかった。現
に父は養生のお蔭かげ一つで、今日こんにちまでどうかこうか凌しのいで来たように客が来ると吹聴ふい
ちょうしていた。その父が、母の書信によると、庭へ出て何かしている機はずみに突然眩暈めまいがして 引ッ繰り返った。家内かないのものは軽症の脳溢血のういっけつと思い違えて、すぐその手当をした。後
あとで医者からどうもそうではないらしい、やはり持病の結果だろうという判断を得て、始めて卒倒と腎
臓病とを結び付けて考えるようになったのである。 冬休みが来るにはまだ少し間まがあった。私は学期の終りまで待っていても差支さしつかえあるまいと
思って一日二日そのままにしておいた。するとその一日二日の間に、父の寝ている様子だの、母の心配し
ている顔だのが時々眼に浮かんだ。そのたびに一種の心苦しさを嘗なめた私は、とうとう帰る決心をした 。国から旅費を送らせる手数てかずと時間を省くため、私は暇乞いとまごいかたがた先生の所へ行って、
要いるだけの金を一時立て替えてもらう事にした。
先生は少し風邪かぜの気味で、座敷へ出るのが臆劫おっくうだといって、私をその書斎に通した。書斎 の硝子戸ガラスどから冬に入いって稀まれに見るような懐かしい和やわらかな日光が机掛つくえかけの上
に射さしていた。先生はこの日あたりの好いい室へやの中へ大きな火鉢を置いて、五徳ごとくの上に懸け
た金盥かなだらいから立ち上あがる湯気ゆげで、呼吸いきの苦しくなるのを防いでいた。 「大病は好いいが、ちょっとした風邪かぜなどはかえって厭いやなものですね」といった先生は、苦笑し
ながら私の顔を見た。
先生は病気という病気をした事のない人であった。先生の言葉を聞いた私は笑いたくなった。 「私は風邪ぐらいなら我慢しますが、それ以上の病気は真平まっぴらです。先生だって同じ事でしょう。
試みにやってご覧になるとよく解わかります」
「そうかね。私は病気になるくらいなら、死病に罹かかりたいと思ってる」 私は先生のいう事に格別注意を払わなかった。すぐ母の手紙の話をして、金の無心を申し出た。
「そりゃ困るでしょう。そのくらいなら今手元にあるはずだから持って行きたまえ」
先生は奥さんを呼んで、必要の金額を私の前に並べさせてくれた。それを奥の茶箪笥ちゃだんすか何か の抽出ひきだしから出して来た奥さんは、白い半紙の上へ鄭寧ていねいに重ねて、「そりゃご心配ですね
」といった。
「何遍なんべんも卒倒したんですか」と先生が聞いた。 「手紙には何とも書いてありませんが。――そんなに何度も引ッ繰り返るものですか」
「ええ」
先生の奥さんの母親という人も私の父と同じ病気で亡くなったのだという事が始めて私に解った。 「どうせむずかしいんでしょう」と私がいった。
「そうさね。私が代られれば代ってあげても好いいが。――嘔気はきけはあるんですか」
「どうですか、何とも書いてないから、大方おおかたないんでしょう」 「吐気さえ来なければまだ大丈夫ですよ」と奥さんがいった。
私はその晩の汽車で東京を立った。 二十二
父の病気は思ったほど悪くはなかった。それでも着いた時は、床とこの上に胡坐あぐらをかいて、「み んなが心配するから、まあ我慢してこう凝じっとしている。なにもう起きても好いいのさ」といった。し
かしその翌日よくじつからは母が止めるのも聞かずに、とうとう床を上げさせてしまった。母は不承無性
ふしょうぶしょうに太織ふとおりの蒲団ふとんを畳みながら「お父さんはお前が帰って来たので、急に気 が強くおなりなんだよ」といった。私わたくしには父の挙動がさして虚勢を張っているようにも思えなか
った。
私の兄はある職を帯びて遠い九州にいた。これは万一の事がある場合でなければ、容易に父母ちちはは を嬉うれしく思うくらいなものです。けれども彼の安心がもしお嬢さんに対してであるとすれば、私は決
して彼を許す事ができなくなるのです。不思議にも彼は私のお嬢さんを愛している素振そぶりに全く気が
付いていないように見えました。無論私もそれがKの眼に付くようにわざとらしくは振舞いませんでした 二十九
「私は思い切って自分の心をKに打ち明けようとしました。もっともこれはその時に始まった訳でもなか ったのです。旅に出ない前から、私にはそうした腹ができていたのですけれども、打ち明ける機会をつら
まえる事も、その機会を作り出す事も、私の手際てぎわでは旨うまくゆかなかったのです。今から思うと
、その頃私の周囲にいた人間はみんな妙でした。女に関して立ち入った話などをするものは一人もありま せんでした。中には話す種たねをもたないのも大分だいぶいたでしょうが、たといもっていても黙ってい
るのが普通のようでした。比較的自由な空気を呼吸している今のあなたがたから見たら、定めし変に思わ
れるでしょう。それが道学どうがくの余習よしゅうなのか、または一種のはにかみなのか、判断はあなた の理解に任せておきます。
Kと私は何でも話し合える中でした。偶たまには愛とか恋とかいう問題も、口に上のぼらないではあり
ませんでしたが、いつでも抽象的な理論に落ちてしまうだけでした。それも滅多めったには話題にならな かったのです。大抵は書物の話と学問の話と、未来の事業と、抱負と、修養の話ぐらいで持ち切っていた
のです。いくら親しくってもこう堅くなった日には、突然調子を崩くずせるものではありません。二人は
ただ堅いなりに親しくなるだけです。私はお嬢さんの事をKに打ち明けようと思い立ってから、何遍なん べん歯がゆい不快に悩まされたか知れません。私はKの頭のどこか一カ所を突き破って、そこから柔らか
い空気を吹き込んでやりたい気がしました。
あなたがたから見て笑止千万しょうしせんばんな事もその時の私には実際大困難だったのです。私は旅 先でも宅うちにいた時と同じように卑怯ひきょうでした。私は始終機会を捕える気でKを観察していなが
ら、変に高踏的な彼の態度をどうする事もできなかったのです。私にいわせると、彼の心臓の周囲は黒い
漆うるしで重あつく塗り固められたのも同然でした。私の注そそぎ懸けようとする血潮は、一滴もその心 臓の中へは入らないで、悉ことごとく弾はじき返されてしまうのです。
或ある時はあまりKの様子が強くて高いので、私はかえって安心した事もあります。そうして自分の疑
いを腹の中で後悔すると共に、同じ腹の中で、Kに詫わびました。詫びながら自分が非常に下等な人間の ように見えて、急に厭いやな心持になるのです。しかし少時しばらくすると、以前の疑いがまた逆戻りを
して、強く打ち返して来ます。すべてが疑いから割り出されるのですから、すべてが私には不利益でした
。容貌ようぼうもKの方が女に好かれるように見えました。性質も私のようにこせこせしていないところ が、異性には気に入るだろうと思われました。どこか間まが抜けていて、それでどこかに確しっかりした
男らしいところのある点も、私よりは優勢に見えました。学力がくりきになれば専門こそ違いますが、私
は無論Kの敵でないと自覚していました。――すべて向うの好いいところだけがこう一度に眼先めさきへ 散らつき出すと、ちょっと安心した私はすぐ元の不安に立ち返るのです。
Kは落ち付かない私の様子を見て、厭いやならひとまず東京へ帰ってもいいといったのですが、そうい
われると、私は急に帰りたくなくなりました。実はKを東京へ帰したくなかったのかも知れません。二人 は房州ぼうしゅうの鼻を廻まわって向う側へ出ました。我々は暑い日に射いられながら、苦しい思いをし
て、上総かずさのそこ一里いちりに騙だまされながら、うんうん歩きました。私にはそうして歩いている
意味がまるで解わからなかったくらいです。私は冗談じょうだん半分Kにそういいました。するとKは足 があるから歩くのだと答えました。そうして暑くなると、海に入って行こうといって、どこでも構わず潮
しおへ漬つかりました。その後あとをまた強い日で照り付けられるのですから、身体からだが倦怠だるく
てぐたぐたになりました。 「こんな風ふうにして歩いていると、暑さと疲労とで自然身体からだの調子が狂って来るものです。もっ
とも病気とは違います。急に他ひとの身体の中へ、自分の霊魂が宿替やどがえをしたような気分になるの
です。私わたくしは平生へいぜいの通りKと口を利ききながら、どこかで平生の心持と離れるようになり ました。彼に対する親しみも憎しみも、旅中りょちゅう限かぎりという特別な性質を帯おびる風になった
のです。つまり二人は暑さのため、潮しおのため、また歩行のため、在来と異なった新しい関係に入る事
ができたのでしょう。その時の我々はあたかも道づれになった行商ぎょうしょうのようなものでした。い くら話をしてもいつもと違って、頭を使う込み入った問題には触れませんでした。
我々はこの調子でとうとう銚子ちょうしまで行ったのですが、道中たった一つの例外があったのを今に
忘れる事ができないのです。まだ房州を離れない前、二人は小湊こみなとという所で、鯛たいの浦うらを 見物しました。もう年数ねんすうもよほど経たっていますし、それに私にはそれほど興味のない事ですか
ら、判然はんぜんとは覚えていませんが、何でもそこは日蓮にちれんの生れた村だとかいう話でした。日
蓮の生れた日に、鯛が二尾び磯いそに打ち上げられていたとかいう言伝いいつたえになっているのです。 それ以来村の漁師が鯛をとる事を遠慮して今に至ったのだから、浦には鯛が沢山いるのです。我々は小舟
を傭やとって、その鯛をわざわざ見に出掛けたのです。
その時私はただ一図いちずに波を見ていました。そうしてその波の中に動く少し紫がかった鯛の色を、 面白い現象の一つとして飽かず眺めました。しかしKは私ほどそれに興味をもち得なかったものとみえま
す。彼は鯛よりもかえって日蓮の方を頭の中で想像していたらしいのです。ちょうどそこに誕生寺たんじ
ょうじという寺がありました。日蓮の生れた村だから誕生寺とでも名を付けたものでしょう、立派な伽藍 がらんでした。Kはその寺に行って住持じゅうじに会ってみるといい出しました。実をいうと、我々はず
いぶん変な服装なりをしていたのです。ことにKは風のために帽子を海に吹き飛ばされた結果、菅笠すげ
がさを買って被かぶっていました。着物は固もとより双方とも垢あかじみた上に汗で臭くさくなっていま した。私は坊さんなどに会うのは止よそうといいました。Kは強情ごうじょうだから聞きません。厭いや
なら私だけ外に待っていろというのです。私は仕方がないからいっしょに玄関にかかりましたが、心のう
ちではきっと断られるに違いないと思っていました。ところが坊さんというものは案外丁寧ていねいなも ので、広い立派な座敷へ私たちを通して、すぐ会ってくれました。その時分の私はKと大分だいぶ考えが
違っていましたから、坊さんとKの談話にそれほど耳を傾ける気も起りませんでしたが、Kはしきりに日
蓮の事を聞いていたようです。日蓮は草日蓮そうにちれんといわれるくらいで、草書そうしょが大変上手 であったと坊さんがいった時、字の拙まずいKは、何だ下らないという顔をしたのを私はまだ覚えていま
す。Kはそんな事よりも、もっと深い意味の日蓮が知りたかったのでしょう。坊さんがその点でKを満足
させたかどうかは疑問ですが、彼は寺の境内けいだいを出ると、しきりに私に向って日蓮の事を云々うん ぬんし出しました。私は暑くて草臥くたびれて、それどころではありませんでしたから、ただ口の先で好
いい加減な挨拶あいさつをしていました。それも面倒になってしまいには全く黙ってしまったのです。
たしかその翌あくる晩の事だと思いますが、二人は宿へ着いて飯めしを食って、もう寝ようという少し 前になってから、急にむずかしい問題を論じ合い出しました。Kは昨日きのう自分の方から話しかけた日
蓮の事について、私が取り合わなかったのを、快く思っていなかったのです。精神的に向上心がないもの
は馬鹿だといって、何だか私をさも軽薄もののようにやり込めるのです。ところが私の胸にはお嬢さんの 事が蟠わだかまっていますから、彼の侮蔑ぶべつに近い言葉をただ笑って受け取る訳にいきません。私は
私で弁解を始めたのです。 三十一
「その時私はしきりに人間らしいという言葉を使いました。Kはこの人間らしいという言葉のうちに、私 が自分の弱点のすべてを隠しているというのです。なるほど後から考えれば、Kのいう通りでした。しか
し人間らしくない意味をKに納得させるためにその言葉を使い出した私には、出立点しゅったつてんがす
でに反抗的でしたから、それを反省するような余裕はありません。私はなおの事自説を主張しました。す るとKが彼のどこをつらまえて人間らしくないというのかと私に聞くのです。私は彼に告げました。――
君は人間らしいのだ。あるいは人間らし過ぎるかも知れないのだ。けれども口の先だけでは人間らしくな
いような事をいうのだ。また人間らしくないように振舞おうとするのだ。 私がこういった時、彼はただ自分の修養が足りないから、他ひとにはそう見えるかも知れないと答えた
だけで、一向いっこう私を反駁はんばくしようとしませんでした。私は張合いが抜けたというよりも、か
えって気の毒になりました。私はすぐ議論をそこで切り上げました。彼の調子もだんだん沈んで来ました 。もし私が彼の知っている通り昔の人を知るならば、そんな攻撃はしないだろうといって悵然ちょうぜん
としていました。Kの口にした昔の人とは、無論英雄でもなければ豪傑でもないのです。霊のために肉を
虐しいたげたり、道のために体たいを鞭むちうったりしたいわゆる難行苦行なんぎょうくぎょうの人を指 すのです。Kは私に、彼がどのくらいそのために苦しんでいるか解わからないのが、いかにも残念だと明
言しました。
Kと私とはそれぎり寝てしまいました。そうしてその翌あくる日からまた普通の行商ぎょうしょうの態 度に返って、うんうん汗を流しながら歩き出したのです。しかし私は路々みちみちその晩の事をひょいひ
ょいと思い出しました。私にはこの上もない好いい機会が与えられたのに、知らない振ふりをしてなぜそ
れをやり過ごしたのだろうという悔恨の念が燃えたのです。私は人間らしいという抽象的な言葉を用いる 代りに、もっと直截ちょくせつで簡単な話をKに打ち明けてしまえば好かったと思い出したのです。実を
いうと、私がそんな言葉を創造したのも、お嬢さんに対する私の感情が土台になっていたのですから、事
実を蒸溜じょうりゅうして拵こしらえた理論などをKの耳に吹き込むよりも、原もとの形かたちそのまま を彼の眼の前に露出した方が、私にはたしかに利益だったでしょう。私にそれができなかったのは、学問
の交際が基調を構成している二人の親しみに、自おのずから一種の惰性があったため、思い切ってそれを
突き破るだけの勇気が私に欠けていたのだという事をここに自白します。気取り過ぎたといっても、虚栄 心が祟たたったといっても同じでしょうが、私のいう気取るとか虚栄とかいう意味は、普通のとは少し違
います。それがあなたに通じさえすれば、私は満足なのです。
我々は真黒になって東京へ帰りました。帰った時は私の気分がまた変っていました。人間らしいとか、 人間らしくないとかいう小理屈こりくつはほとんど頭の中に残っていませんでした。Kにも宗教家らしい
様子が全く見えなくなりました。おそらく彼の心のどこにも霊がどうの肉がどうのという問題は、その時
宿っていなかったでしょう。二人は異人種のような顔をして、忙しそうに見える東京をぐるぐる眺ながめ ました。それから両国りょうごくへ来て、暑いのに軍鶏しゃもを食いました。Kはその勢いきおいで小石
川こいしかわまで歩いて帰ろうというのです。体力からいえばKよりも私の方が強いのですから、私はす
ぐ応じました。 宅うちへ着いた時、奥さんは二人の姿を見て驚きました。二人はただ色が黒くなったばかりでなく、む
やみに歩いていたうちに大変瘠やせてしまったのです。奥さんはそれでも丈夫そうになったといって賞ほ
めてくれるのです。お嬢さんは奥さんの矛盾がおかしいといってまた笑い出しました。旅行前時々腹の立 った私も、その時だけは愉快な心持がしました。場合が場合なのと、久しぶりに聞いたせいでしょう。
三十二 「それのみならず私わたくしはお嬢さんの態度の少し前と変っているのに気が付きました。久しぶりで旅
から帰った私たちが平生へいぜいの通り落ち付くまでには、万事について女の手が必要だったのですが、 その世話をしてくれる奥さんはとにかく、お嬢さんがすべて私の方を先にして、Kを後廻あとまわしにす
るように見えたのです。それを露骨にやられては、私も迷惑したかもしれません。場合によってはかえっ
て不快の念さえ起しかねなかったろうと思うのですが、お嬢さんの所作しょさはその点で甚だ要領を得て いたから、私は嬉うれしかったのです。つまりお嬢さんは私だけに解わかるように、持前もちまえの親切
を余分に私の方へ割り宛あててくれたのです。だからKは別に厭いやな顔もせずに平気でいました。私は
心の中うちでひそかに彼に対する※(「りっしんべん+豈」、第3水準1-84-59)歌がいかを奏し ました。
やがて夏も過ぎて九月の中頃なかごろから我々はまた学校の課業に出席しなければならない事になりま
した。Kと私とは各自てんでんの時間の都合で出入りの刻限にまた遅速ができてきました。私がKより後 おくれて帰る時は一週に三度ほどありましたが、いつ帰ってもお嬢さんの影をKの室へやに認める事はな
いようになりました。Kは例の眼を私の方に向けて、「今帰ったのか」を規則のごとく繰り返しました。
私の会釈もほとんど器械のごとく簡単でかつ無意味でした。 たしか十月の中頃と思います。私は寝坊ねぼうをした結果、日本服にほんふくのまま急いで学校へ出た
事があります。穿物はきものも編上あみあげなどを結んでいる時間が惜しいので、草履ぞうりを突っかけ
たなり飛び出したのです。その日は時間割からいうと、Kよりも私の方が先へ帰るはずになっていました 。私は戻って来ると、そのつもりで玄関の格子こうしをがらりと開けたのです。するといないと思ってい
たKの声がひょいと聞こえました。同時にお嬢さんの笑い声が私の耳に響きました。私はいつものように
手数てかずのかかる靴を穿はいていないから、すぐ玄関に上がって仕切しきりの襖ふすまを開けました。 私は例の通り机の前に坐すわっているKを見ました。しかしお嬢さんはもうそこにはいなかったのです。
私はあたかもKの室へやから逃のがれ出るように去るその後姿うしろすがたをちらりと認めただけでした
。私はKにどうして早く帰ったのかと問いました。Kは心持が悪いから休んだのだと答えました。私が自 分の室にはいってそのまま坐っていると、間もなくお嬢さんが茶を持って来てくれました。その時お嬢さ
んは始めてお帰りといって私に挨拶あいさつをしました。私は笑いながらさっきはなぜ逃げたんですと聞
けるような捌さばけた男ではありません。それでいて腹の中では何だかその事が気にかかるような人間だ ったのです。お嬢さんはすぐ座を立って縁側伝えんがわづたいに向うへ行ってしまいました。しかしKの
室の前に立ち留まって、二言ふたこと三言みこと内と外とで話をしていました。それは先刻さっきの続き
らしかったのですが、前を聞かない私にはまるで解りませんでした。 そのうちお嬢さんの態度がだんだん平気になって来ました。Kと私がいっしょに宅うちにいる時でも、
よくKの室へやの縁側へ来て彼の名を呼びました。そうしてそこへ入って、ゆっくりしていました。無論
郵便を持って来る事もあるし、洗濯物を置いてゆく事もあるのですから、そのくらいの交通は同じ宅にい る二人の関係上、当然と見なければならないのでしょうが、ぜひお嬢さんを専有したいという強烈な一念
に動かされている私には、どうしてもそれが当然以上に見えたのです。ある時はお嬢さんがわざわざ私の
室へ来るのを回避して、Kの方ばかりへ行くように思われる事さえあったくらいです。それならなぜKに 宅を出てもらわないのかとあなたは聞くでしょう。しかしそうすれば私がKを無理に引張ひっぱって来た
主意が立たなくなるだけです。私にはそれができないのです。 三十三
「十一月の寒い雨の降る日の事でした。私わたくしは外套がいとうを濡ぬらして例の通り蒟蒻閻魔こんに ゃくえんまを抜けて細い坂路さかみちを上あがって宅うちへ帰りました。Kの室は空虚がらんどうでした
けれども、火鉢には継ぎたての火が暖かそうに燃えていました。私も冷たい手を早く赤い炭の上に翳かざ
そうと思って、急いで自分の室の仕切しきりを開けました。すると私の火鉢には冷たい灰が白く残ってい るだけで、火種ひだねさえ尽きているのです。私は急に不愉快になりました。
その時私の足音を聞いて出て来たのは、奥さんでした。奥さんは黙って室の真中に立っている私を見て
、気の毒そうに外套を脱がせてくれたり、日本服を着せてくれたりしました。それから私が寒いというの を聞いて、すぐ次の間まからKの火鉢を持って来てくれました。私がKはもう帰ったのかと聞きましたら
、奥さんは帰ってまた出たと答えました。その日もKは私より後おくれて帰る時間割だったのですから、
私はどうした訳かと思いました。奥さんは大方おおかた用事でもできたのだろうといっていました。 私はしばらくそこに坐すわったまま書見しょけんをしました。宅の中がしんと静まって、誰だれの話し
声も聞こえないうちに、初冬はつふゆの寒さと佗わびしさとが、私の身体からだに食い込むような感じが
しました。私はすぐ書物を伏せて立ち上りました。私はふと賑にぎやかな所へ行きたくなったのです。雨 はやっと歇あがったようですが、空はまだ冷たい鉛のように重く見えたので、私は用心のため、蛇じゃの
目めを肩に担かついで、砲兵ほうへい工廠こうしょうの裏手の土塀どべいについて東へ坂を下おりました
。その時分はまだ道路の改正ができない頃ころなので、坂の勾配こうばいが今よりもずっと急でした。道 幅も狭くて、ああ真直まっすぐではなかったのです。その上あの谷へ下りると、南が高い建物で塞ふさが
っているのと、放水みずはきがよくないのとで、往来はどろどろでした。ことに細い石橋を渡って柳町や
なぎちょうの通りへ出る間が非道ひどかったのです。足駄あしだでも長靴でもむやみに歩く訳にはゆきま せん。誰でも路みちの真中に自然と細長く泥が掻かき分けられた所を、後生ごしょう大事だいじに辿たど
って行かなければならないのです。その幅は僅わずか一、二尺しゃくしかないのですから、手もなく往来
に敷いてある帯の上を踏んで向うへ越すのと同じ事です。行く人はみんな一列になってそろそろ通り抜け ます。私はこの細帯の上で、はたりとKに出合いました。足の方にばかり気を取られていた私は、彼と向
き合うまで、彼の存在にまるで気が付かずにいたのです。私は不意に自分の前が塞ふさがったので偶然眼
を上げた時、始めてそこに立っているKを認めたのです。私はKにどこへ行ったのかと聞きました。Kは ちょっとそこまでといったぎりでした。彼の答えはいつもの通りふんという調子でした。Kと私は細い帯
の上で身体を替かわせました。するとKのすぐ後ろに一人の若い女が立っているのが見えました。近眼の
私には、今までそれがよく分らなかったのですが、Kをやり越した後あとで、その女の顔を見ると、それ このスレッドは1000を超えました。
新しいスレッドを立ててください。
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