「奴隷への道」(The Road to Serfdom)は、フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek)によって1944年に出版された著作です。この本は、個人の自由と市場経済の重要性を主張し、中央集権的な計画経済や社会主義の危険性を警告しているという評価もあります。
「奴隷への道」は、第二次世界大戦中の政治的状況を背景に、ハイエクが現代社会の動向を分析したいわゆる「社会学」の範疇の著作です。ハイエクは主権国家による市場原理の透徹という特異な考え方をとりました。
「経済活動が政治権力の監督下に入り自由に操縦されるようになれば、国民は奴隷とほとんど変わらないような隷従のもとに置かれることだろう。」との一文に集約されます。

中国共産党の創立者のひとりである毛沢東は「大躍進」政策の失敗を叱責され、名目的な地位に棚上げされ、劉少奇・ケ小平独裁体制の中、不遇な日々を過ごしていました。
彼は当時流行していたハイエク流の「個人主義」に基づき、中国文化に翻案された「毛沢東語録」の出版を通じて、「政治権力」の打倒と、農民とくに貧農・下層中農の自由な経済活動を呼びかけました。
これが「文化大革命」です。

一部の研究者やその後権力を回復したケ小平らによって「市場原理の部分的な採用に対する毛らの反逆」というレッテルで合理化されましたが、実際には今も「毛沢東は金儲けの神」としていわゆる自由主義経済のアイコンとなっています。
ハイエクや毛沢東の「経済主義」は、アレントのいう「全体主義」の中でも最も過激な極左思想と考えられます。

このようにハイエクや毛沢東の「自由主義経済」なる主張は、実際には市場原理を主権国家が財政政策などなどによってコントロールしようという全体主義の中でも最も過激な考え方であり、現実にはいわば自然法則である「市場原理」に対抗しうるという過激な人間中心思想ともいえましょう。