ナショナル ジオグラフィック

2024年3月15日 5:00

市場を混乱させるほど一時的に大流行したものといえば、オランダのチューリップや不動産が思い浮かぶだろう。
19世紀においては、ヨーロッパの医療用ヒル(Hirudo medicinalis、イヨウ(医用)ビル)の需要が、このヒルを絶滅寸前まで追い込むほど高まっていた。
万能薬としてその医療効果がヨーロッパ中で宣伝され、がんから結核、精神疾患まであらゆる病気の治療に使われた。

誰もが欲しがった医用ビルは、焦げ茶色あるいは黒色で、背中には黄色、緑、または赤の細い縞模様があり、優しい手触りでありながら、重要なことに食欲(吸血欲)が旺盛であるため人気があった。

当時の医師は、患者の病気を治療するために何十匹ものヒルを処方することがよくあった。例えば、肺炎だと疑われる患者には、1回の治療で最大80匹のヒルを胸にあてがった。
胃炎の治療では、最大で20〜40匹ものヒルが処方されることもあった。その結果、野生の医療用ヒルはヨーロッパ全域でだんだん希少になっていった。





ヒル人気を高めたフランスの医師
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC01AGT0R00C24A3000000/