な時期の血清を採取した。さらに、脂肪細胞も採取して培養した。論文の著者の一人で同大学の博士研究員であるブレア・ペリー氏は、「この方法により、完全に成熟したクマではできないような実験もできました」と話す。

血清と脂肪細胞を組み合わせて違いをあぶりだすこの実験から、クマが遺伝子的にインスリン抵抗性をコントロールしている秘密を、8つの主要なタンパク質にまで絞り込むことができた。これらはクマの生態において独特な役割を果たしており、単独でまたは連携して冬眠中のクマのインスリン抵抗性を調整している。

ヒトとクマの遺伝子は大半が共通しているため、この8つのタンパク質の働きが解明できれば、ヒトにおけるインスリン抵抗性についても、より多くのことが明らかになるかもしれない。

・糖尿病の予防に一歩近づけるか

インスリンに対する抵抗性とそれがもたらす結果はよく理解されている。しかし、遺伝子との関係はまだよくわかっていない。ペリー氏は、それを解明する絶好の方法は、クマがどのようにして毎年、インスリンの抵抗性を上げたり下げたりしているのかを調べることだと言う。

例えば、ヒトの体内でこれら8つのタンパク質を操作する方法が見つかれば、「高まったインスリン抵抗性を再び低下させる」ことも可能になるかもしれない。このような糖尿病の治療法や進行予防法が可能になるのはまだ先のことだろうが、ペリー氏は「少しずつそこに近づいています」と話す。

サワヤ氏も同意見だ。「これは間違いなくパズルの新たなピースの1つです」と述べ、クマの生理機能の謎を解くことが糖尿病の予防につながることを期待している。

研究チームは今後、8つのタンパク質がどのようにインスリン抵抗性を低下させているのかを突き止める計画だ。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD061EX0W2A001C2000000/