チームは、ニュージーランド南島の町ダニーデン付近の沿岸部、約100キロにわたり大量のコンブを採取して、遺伝子分析を行ないました。コンブの見た目は、ほとんど見分けがつきません。

ところが、DNA分析の結果、遺伝子の異なるコンブのグループが、約24キロにわたって存在したのです。
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■地震で新しくできた海底に「新グループ」が移住

これについて、研究主任のジョン・ウォーターズ博士は、次のように説明します。

まず、地震の発生以前、沿岸部に生息するコンブはすべて同じグループでした。ところが、巨大地震のせいで地殻変動が起こり、海底の一部が水面より高い位置に隆起します。

すると、そこに住んでいたコンブのグループは、水がないことで全滅。一方で、隆起した部分の代わりに新しくできた海底に、別のコンブのグループが移住してきました。

24キロの範囲だけコンブの遺伝子が違うのは、旧コンブと異なる新参者が割り込んできたからなのです。
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興味深いのは、新しく住み着いたコンブたちが、800年もの間、両隣の旧グループと遺伝的にまったく混ざり合っていないことでした。

自然界のルールで考えると、数で劣る新参者はすぐに制圧されても不思議ではありません。

しかし、遺伝子は両グループが一切干渉していないことを示し、その境界線は完璧に守られていたのです。

これは「自分たちの陣地は絶対に渡さない」というコンブ界の掟がいかに強いかを示します。

また、今回の結果により、ある地域における生物群の遺伝的違いを調べることで、過去に劇的な環境変化が起きたかどうかの解明に役立つかもしれません。

研究の詳細は、7月8日付けで「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に掲載されました。

The genomic footprint of coastal earthquake uplift
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2020.0712

https://nazology.net/archives/65036