人類は2万〜4万年前に絶滅したとされるネアンデルタール人と交雑し、そのDNAを受け継いできたことが知られています。新型コロナウイルス(COVID-19)に関する研究により、現生人類が持つネアンデルタール人のDNAが「COVID-19の重症化と深い関わりがあった」ことが新たに示唆されました。

The major genetic risk factor for severe COVID-19 is inherited from Neandertals - 2020.07.03.186296v1.full.pdf
(PDFファイル)https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.07.03.186296v1.full.pdf

DNA Linked to Covid-19 Was Inherited From Neanderthals, Study Finds - The New York Times
https://www.nytimes.com/2020/07/04/health/coronavirus-neanderthals.html

今回、ネアンデルタール人のDNAがCOVID-19の重症化を招いている可能性があることを突き止めたのは、スウェーデンにあるカロリンスカ研究所の神経学者であるHugo Zeberg氏らの研究チームです。Zeberg氏によると、これまでCOVID-19とDNAの関係について多くの研究が行われており、その中で「第9染色体と第3染色体がCOVID-19の重症化と関係がある可能性が高い」ことが分かったとのこと。その後の研究により第9染色体の影響が除外され、「第3染色体の遺伝子の一部がCOVID-19の重症化と関係している」ことが確認されました。

また、第3染色体に存在する問題のDNAには、「遺伝子配列が全長約49万塩基対と長く、遺伝子の変異率も異様に低い」という特徴がありました。このことからZeberg氏は、問題のDNAが「4万〜6万年前という比較的新しい時代に、ネアンデルタール人もしくはネアンデルタール人から分岐したデニソワ人によりもたらされたもの」だと推測しました。
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そこで、Zeberg氏が問題のDNAを詳しく解析し、これまで見つかった化石人類のDNAと比較したところ、クロアチアのヴィンディヤ洞窟で見つかったネアンデルタール人のDNAのうち、33個のサンプルに問題のDNAが含まれていることが分かりました。その一方で、デニソワ人のサンプルからは見つからなかったことから、DNAがデニソワ人由来である可能性は除外されました。

このことからZeberg氏らの研究チームは論文の中で、「ネアンデルタール人からもたらされたDNAが、COVID-19のパンデミックに悲劇的な結果をもたらしていることは明らかです」と結論付けました。

これまでも、ネアンデルタール人由来のDNAは現代人の健康を損ねたり、子どもを生まれにくくしたりする働きがあることが分かっていますが、今回特定されたDNAは、少なくとも以前は有益な働きをしていた可能性があります。

ヴァンダービルト大学の遺伝子学者であるトニー・カプラ氏は「ネアンデルタール人のDNAは、もともとは4万年以上前に存在していた別のウイルスに対する免疫をつかさどっていたかもしれません」と述べました。カプラ氏によると、人体がCOVID-19を発症すると、免疫物質であるサイトカインが分泌され、ウイルスに感染した組織を攻撃して感染の影響を抑制します。しかし、その働きが過剰になると正常な肺の組織まで損傷し、その結果COVID-19が重症化してしまうとのことです。

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https://gigazine.net/news/20200706-coronavirus-neanderthals-dna/