米バイオ医薬ベンチャーのモデルナは18日、開発中の新型コロナウイルスワクチンの初期の治験の結果が有望だったと発表した。異なる量を投与した治験グループの全てで抗体の獲得を確認できたという。7月には数千人規模が参加する最終段階の治験に移行し、早期の量産を目指す。有効なワクチンの供給体制が整えば、経済の本格的な再開を後押しする可能性がある。

モデルナは新型コロナの有力なワクチン候補「mRNA-1273」を開発している。今回の治験には18〜55歳の男女45人が参加。ワクチン量に応じて3つのグループに分けて効果を調べたところ、全てのグループで抗体を確認できた。一部の参加者には、ウイルスの感染を予防する働きをする「中和抗体」も確認された。これまでのところ、重篤な副作用も見られないという。

モデルナは開発と並行し量産に向けた準備も本格化する。

1日にスイスの製薬会社ロンザと同ワクチンの生産で10年契約の協業を発表した。米生物医学先端研究開発局(BARDA)の資金援助を得て、まずロンザが持つ米国とスイスの製造拠点でワクチンの生産体制を整える。7月には最初の出荷を見込んでおり、2021年以降は年間10億本規模の生産能力確保を目指す。

モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)は「今後も、安全性を確保しながらできる範囲で最速のペースで開発に取り組んでいく」とコメントした。600人規模が参加する次の治験をまもなく始め、7月には数千人規模が参加する最終段階の治験に移行する見通しだ。

新型コロナのワクチンを巡っては、国や企業の開発競争が激しくなっている。

トランプ米大統領は先週、ワクチン開発を迅速化するための「ワープ・スピード作戦」を実行に移すと表明。有望なワクチン候補を絞り込んだ上で、有効かどうかの確認作業と並行して企業の生産体制構築を資金面で支援するなどし、開発・生産プロセスを短縮する。年内の供給開始を目指す。

英オックスフォード大は製薬大手と組んで年内に1億回分の生産を目指すほか、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、9月までに複数のサンプルの臨床試験を行い、21年初頭の供給を目指す。

経済の本格的な再開には、有効な治療薬やワクチンの実用化が不可欠だ。新型コロナは科学的に解明できていない部分も多く、実用化には時間がかかる可能性もある。欧米メディアによると英国やイタリアの首脳の間で、有効なワクチンが早期に開発されることに懐疑的な見方を示したという。

ワクチンの開発には通常、治験などのために10年近くかかる。各国政府は規制緩和など特例措置により早期開発を後押しするが、通常よりも開発期間が短いだけに副作用を含め安全性をどう確保するかも課題になる。

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