■焦点は年齢より高血圧や糖尿病などの基礎疾患へ、図表とともに詳しく解説

 高血圧に糖尿病、心臓病。いずれも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を引き起こしうる基礎疾患だ。大半の人の身近に、このどれかひとつを抱えている人がいるのではないだろうか。

 新型コロナウイルス感染者の80%は軽症で済んでいる。だが、初期の統計を見ると、重症化の危険があるのは体力のない高齢者だけではない。

 世界保健機関(WHO)は3月4日、新型コロナウイルス感染症による致死率を新たに修正した。それによると、全年齢平均の致死率は3.4%で、高齢になるほど確率は上がる。数字を見る限り、確かに高齢者だけが危ないと思ってしまいそうだ。

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しかし、全ての年齢で、新型コロナウイルスの致死率は季節性インフルエンザよりも高いことがわかっている。50歳未満の致死率はインフルエンザより6〜10倍も高い。死に至らないまでも、若年層の重症患者は意外と多い。

 2月28日付けの医学誌「New England Journal of Medicine」に発表された研究では、1099人のコロナウイルス感染者を年齢別に分けてみたところ、軽症者の60%が15歳から49歳だった。やはりこの年齢は重症化を免れているということだろうか。

 しかし、若い成人の重症患者の割合は、単純な統計で割り出される値よりも若干高い。実際には、163人のうち41%が若い成人で、31%が50〜64歳、27%が65歳以上だった。重症患者がゼロだった年齢層は、14歳以下の子どもだけだ。

 中国疾病対策センターが2月21日に発表した臨床報告書でも、若者と高齢者の感染率はそれほど変わらないことがわかっている。こうしたことから、年齢で危険度を測るよりも、よくある基礎疾患が致死率とどう関係しているかを調べたほうが予防策を講じやすいのでは、と医師たちは考え始めている。

■高血圧や糖尿病などの心血管系

新型コロナウイルスに感染してまずやられるのは肺だが、重症化の要因として最も多い基礎疾患が、心血管系の病気だ。
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米国では成人の半分近くが高血圧といわれている。糖尿病患者も多く、10人に1人が代謝異常を抱えている。高血圧も糖尿病も、心血管系の様々な疾患を引き起こす要因となり、それによって米国ではおよそ37秒に1人が死亡している。

 新型コロナウイルスへの感染が具体的に心血管系にどう影響するのかはまだわかっていない。しかし、米国心臓病学会によると、「新型コロナウイルス感染で集中的な治療が必要となった患者を中心に、急性心外傷、不整脈、血圧低下、頻脈が報告されており、心血管の合併症も高い確率で起こっている」という。武漢で150人を対象にした調査でも、心血管疾患の患者がウイルスに感染するとかなり高い確率で死に至るという結果が出た。

 心臓と肺は、驚くほど密接につながっている。速く呼吸すれば、脈拍も自動的に速くなる。既に心臓が弱かったり動脈が詰まっていたりすると、体中に血液と酸素を送るために、健康な人よりも余計に心臓が働かなければならない。

 インフルエンザ患者が心臓発作を起こすことは、以前から知られている。インフルエンザウイルスが心臓発作の直接の原因ではないかという専門家もいる。2018年に「New England Journal of Medicine」に発表された研究では、インフルエンザと診断されてから7日間は、心臓発作を起こす確率が普段と比べて6倍になると報告されている。

 さらに言えば、2種類以上の感染症に同時にかかることもある。武漢での初期調査では、新型コロナウイルス感染者の4%が、別のウイルスにも感染していたことがわかった。そのほとんどはインフルエンザウイルスだった。同時に複数のウイルスにやられれば、疲弊した心臓にかかる負担がさらに増えるのは間違いない。

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