日本の観測史上最大のマグニチュード(M)9.0の地震によって東北地方一帯を襲った巨大津波について、東北大学大学院の研究チームは震源域の地質を調査し、プレートの境界付近に広がる柔らかい岩石が断層の破壊を食い止められず、大きなすべりを引き起こした可能性があると発表した。

 2011年3月11日に宮城県牡鹿半島沖で起きた巨大地震では、東日本の太平洋沿岸を中心に北海道から沖縄までの広い範囲を津波が押し寄せ、特に東北から関東地方の太平洋沿岸では多数の集落が大津波に飲み込まれ、多くの犠牲者を出した。
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■プレート境界型地震の謎とは

 この地震は日本海溝から沈み込む太平洋プレートと、その上に乗った北米プレートの境界で起きた海溝型(プレート境界型とも)地震として知られるが、地震の発生メカニズムには9年経った現在も、依然として多くの謎が残されている。

 なかでも最大は、日本海溝付近でなぜ大すべりが起きたのかという疑問だ。というのも従来の研究では、プレートが沈み込んで海底が溝状にくぼんでいる海溝付近には柔らかな堆積物が多いので、大きなすべりを発生するのに必要なひずみが溜まりにくいと考えられてきたからだ。

■異なる硬さの岩石が分布

東北大大学院「地震・噴火予知研究観測センター」の趙大鵬(ちょう たいほう)教授らの研究チームは、海底に設置された150カ所の地震計のデータをもとに、震源域周辺の地下構造を立体的画像に再現。
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 地震波が伝わる速度の違いを分析した結果、プレートの境界付近の岩石の構造は、成分が同じではなく、ところどころで硬さが異なる岩石が分布していることがわかった。さらに地震で最初に破壊が起こった場所は、プレート境界面に対して、深い側は岩石が硬く、浅い側の柔らかい岩石は日本海溝付近まで広がっていることを確認した。

 このため、いったんプレートの境界で破壊が起こると、柔らかい岩石では食い止められず、広範囲に及んだ大すべりによって巨大津波を引き起こした可能性を突きとめた。

 研究チームは「地震発生時に最初にガタガタッと突き上がるような震動を伝えるP波は硬い岩盤域で発生することがこれまでに明らかにされている。一方、巨大地震の前に起こる体に感じないスロースリップ(ゆっくり地震)や超低周波地震は柔らかい岩石が広がる場所で起こっていることがわかった」として、今回の研究成果が巨大地震発生のメカニズム解明に役立つ手がかりになるとしている。

 この研究成果は今月3日、科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。

■動画

地球内部構造の3D表示 〜2011年東北地方太平洋沖地震の地震時すべりと地殻変動の分布〜
https://youtu.be/nWewzHPqGK4
地球内部構造の3D表示 〜2011年東北地方太平洋沖地震の津波伝播シミュレーション〜
https://youtu.be/QVppFlML-n8

https://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/3/3/33427.html