南極を調査していた「スウェイツ氷河オフショア・リサーチ(THOR)」の科学者たちは、パイン・アイランド湾の氷河棚の沖で地図にない島に遭遇した。
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 その島は長い間氷に埋もれていたが、氷河が解けたことで海面に姿を現したという。島の大きさは350メートルほどだ。
 

■新たに発見された地図にない島

 岩石の陸塊を発見したのは、西南極のパイン・アイランド湾周辺を調査していた「スウェイツ氷河オフショア・リサーチ(THOR)」の研究グループだ。

 海洋地質学者ジュリア・スミス・ウェルナー氏は、「こんな島、どの地図にも載ってないよ!」とツイート。彼女によれば島は花崗岩でできており、島では氷棚の名残と数頭のアシカを発見したそうだ。

今朝、船橋の仲間が岩だらけの海岸線を発見。こんな島、どの地図にも載ってないよ! 明日上陸して石を採取するのが楽しみ。 小さな陸の名前はどうしようかしら。

 THORは、南極でももっとも不安定とされるスウェイツ氷河ならびにアムンゼン海パイン・アイランド湾周辺を対象とした、アメリカとイギリスの共同調査プロジェクトだ。

 プロジェクト名が北欧神話の雷神トールと同じであることから、島は現在、その妻である女神の名前にちなんで「シヴ(Sif)」と呼ばれている。


■南極でも特に速く融解が進んでいる氷河

 スウェイツ氷河もパイン・アイランド氷河も、氷の下を循環するアムンゼン海の暖かい海水のおかげで、南極でもっとも速く融解が進んでいる氷河の1つだ。

 氷河の氷が解けると、その下にある岩盤との結びつきが弱まり、そのためにいっそう速く、奥深くまで海水が流れ込むようになる。

 見たところ、元々シヴ島の氷は、パイン・アイランド氷河の氷棚の一部であったようだ。人工衛星データも併せて考えると、温暖化によって氷河が後退したおかげで、ここ10年の間に姿を現した島であるらしい。

 『Nature』(2月21日付)で報告されているように、この辺りを航海する船はほとんどないことに加えて、まだ氷が残っているために人工衛星からもなかなか発見されなかったようだ。


・Google Earthのタイムラプスをチラッと見る限り、スウェイツ氷河近くの「シヴ島」からの氷の後退は、2010年代初頭から続いているようだね。

・初上陸後、シヴ島が花崗岩でできており、氷棚の名残におおわれていることを確認。数頭のアシカにも遭遇。


■氷河融解が南極大陸に与える影響

 温暖化の影響で出現した島と聞くとやや複雑な気分だが、地質学者や氷河学者にとっては素晴らしい研究チャンスであることは間違いない。

 氷河が融解すると、地殻から圧力が逃げる。すると岩石がズレて、マントルの下にあったものが”滲み”出る。これが地球の形状を変化させる。

 シヴ島での地質学的な調査からは、温暖化と氷河の後退が南極大陸に与える影響について理解を深めることができると期待されているそうだ。

http://karapaia.com/archives/52288590.html