2019/12/12 12:00/ナゾロジー
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ESA(欧州宇宙機関)が、スペースデブリ問題の新たな解決プランを発表(2025年に始動)
「ClearSpace-1」というロボットが、デブリを捕まえて、大気圏に突入し、デブリもろとも消滅する計画

使い終わった人工衛星やはがれ落ちたロケットの塗装など、宇宙空間にある人工物体である「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」。

この宇宙ゴミが、現在地球をぐるりと囲むようにして無数に浮かんでおり、宇宙ミッションを妨害しています。

そこで、ESA(欧州宇宙機関)は、デブリ問題の解決プラン「ClearSpace」を新たに発表しました。この計画では、デブリを捕まえて自滅する自殺型ロボット「ClearSpace-1」が使用される予定です。
新しいデブリ処理は「カミカゼ方式」

現在、地球の低軌道帯(地表から高度2000km以下)には、破損した人工衛星が3000機以上、小さな破片が数千万単位で散らばっています。

宇宙ゴミは、時速数万kmのスピードで移動し、時々、大きなデブリ同士が衝突して、さらに粉々に砕け、ゴミの数を増やします。こうした小さな破片は、宇宙空間を弾丸のように飛翔するため、人工衛星や宇宙船を破損させる危険性があるのです。

また、映画『ゼロ・グラビティ』のように、船外作業をする宇宙飛行士にぶつかって、虚空のかなたに吹き飛ばしてしまうかもしれません。

そこで開発されたのが自滅型ロボット「ClearSpace-1」です。
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このロボットは、4本のアームを使ってデブリとなった人工衛星をキャッチし、そのまま地球の大気圏に突っ込んでゴミとともに消滅します。つまり、カミカゼ特攻隊のように、ミッションの始まりから片道切符という悲しき運命を背負っているのです。

専門家によると、低軌道から1機のデブリ衛星を取り除くことは、「スペリオル湖(世界最大の淡水湖)からバケツ1杯の水を取り除く程度に等しい」そうですが、それでもESA研究チームは、この計画がデブリ問題への新たな道を切り開くことに期待しています。

ClearSpace設立者のリュク・ピゲット氏は「デブリ問題はかつてないほど差し迫っており、今日、宇宙には、活動中の人工衛星2000機の他に、デブリとなった衛星が3000機以上ある。また今後数年の内に、人工衛星は増えつづけ、それと同時にデブリも増加するだろう」と懸念を寄せています。

そのためにも、ClearSpace-1のようなゴミ処理ロボットが必要なのです。

ClearSpace-1の試験ミッションは2025年に開始予定で、「Vespa」と呼ばれる中型サイズのデブリ(100kg前後)がターゲットにされます。キャッチした後は、計画通り、Vespaもろとも大気圏に突入する予定です。

1回のミッションにつき、1億3300万ドル(約144億円)という莫大な費用がかかるそうですが、活動中の人工衛星の破損を防ぐことができれば、高いコストパフォーマンスも実現できるでしょう。

reference: livescience / written by くらのすけ
https://www.livescience.com/esa-space-junk-removal-kamikaze-robot.html