餌不足で「共食い形態」に激変、驚異の両生類 環境の違いにより遺伝子の働き方が変化、元にも戻れる
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2019/7/1
NATIONAL GEOGRAPHIC

写真:ユビナガサラマンダー(Ambystoma macrodactylum)の成体。
   米オレゴン州デシューツ郡で撮影。幼生期、生息する池の餌が不足すると、頭と鋤骨歯が大きく発達する。
   (PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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写真:環境ストレスによる「変形」プロセスは、表現型の可塑性と呼ばれる。ユビナガサラマンダーの場合、変形は幼生期でのみ起こる。
   この写真のような完全に成長した個体では、こうした変形はもう見られない。
   (PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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写真:スキアシガエルのオタマジャクシは、雑食形態(左)に成長するのが通常だ。
   しかし、甲殻類(中)など大きな動物を食べると、
   エビや他のオタマジャクシなど、より大きな獲物を食べることに特化した独特な肉食形態(右)になる。
   (PHOTOGRAPH BY DAVID PFENNIG)
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【科学(学問)ニュース+】

 米オレゴン州中部、カスケード山脈。スリーシスターズ連峰の高地にある静かな水たまりに行くには、
 山を歩き、スキーで移動しなければならなかった。
 水中には、他に大したものはなかったが、奇妙な見かけのサラマンダーがいた。

 「そのサラマンダーの幼生が、とても痩せた体と大きな頭をしているのに気づきました」
 と米国地質調査所の生物学者スーザン・ウォールズ氏は振り返る。
 そこには両生類のユビナガサラマンダー(Ambystoma macrodactylum)の幼生がいたのだが、
 よく見ると、どの個体も頭と顎が通常よりはるかに大きかった。
 のちに、その大きな口は、非常に特殊な目的に役立つことが判明した。共食いである。

 この大きな顎には、牙のように大きく成長した鋤骨歯(じょこつし)が生えていた、と同氏は初期の論文に書いている。
 通常、ユビナガサラマンダーの鋤骨歯は、前歯列の後ろにある小さな突起にすぎない。
 大きな鋤骨歯は、共食いをするのには都合がいいのだろう。
 だが、そもそもなぜ共食いをするのだろうか?
 (参考記事:「定説覆すコブラの共食い、しかもオス同士のみ」)

 陸に上がる前の幼生期、ユビナガサラマンダーは「変形」することがある。
 頭と顎が体の割に大きくなり、鋤骨歯はより目立つようになる。
 もし十分な食料と水がある場合、こうした変形は起きない。
 だが、何日も餌が不足したり、すぐに池から出る必要があったりする場合(比較的乾燥する春や夏など)には、
 頭や歯が大きく「変形」するし、あとで元に戻ることもある。

 口や牙が大きいほど、より大きな餌を食べられる。
 大きな餌には、自分の仲間や兄弟も含まれる。
 高タンパクの食事によって、餓死を回避し、成長を早めて、池が干上がる前に陸に上がれるようにするのだ。

 このように、環境により動物の性質が変化することを「表現型の可塑性」という。
 ユビナガサラマンダーだけでなく、さまざまな両生類や動物でも確認されている。
 「頭の大きな形態と小さな形態がある昆虫、歯のある共食い形態を持つ線虫、
  増えすぎると共食い形態になる原生生物(単細胞生物)などがいます」
 と米ノースカロライナ大学の生物学教授デイビッド・フェニック氏は説明する。
 同氏は、トラフサンショウウオやスキアシガエルにおける表現型の可塑性を研究してきた。

 表現型の可塑性の背後にあるメカニズムの解明は、両生類を保護する上で重要である。
 両生類は、すでに全世界で43%も減少しており、脊椎動物では最も速く多様性が失われている。
 (参考記事:「501種の両生類が減少、90種が絶滅、ツボカビ症で」)

■■以下、小見出しのみ抜粋。続きはソースをご覧ください。

 ・餌が少ないと共食いになる
 ・環境によって変形する種は他にも
 ・進化の最中?