200兆トンもある超巨大な金属塊が月の裏側に眠っているという報告
https://gigazine.net/news/20190613-mass-on-moon/
2019年06月13日 19時00分
GigaZiNE,GIGAZINE

画像:by NASA
https://i.gzn.jp/img/2019/06/13/mass-on-moon/02_m.jpg
画像:by NASA/JPL
https://i.gzn.jp/img/2019/06/13/mass-on-moon/01_m.jpg
画像:by NASA/JPL
https://i.gzn.jp/img/2019/06/13/mass-on-moon/03.jpg

 ASAが測定した月の重力分布をベイラー大学の研究チームが分析したところ、月のクレーターの地下深くに異常な重力源があることが判明。
 さらに詳細な分析を行った結果、研究チームはクレーターの地下に少なくとも200兆トン以上の質量をもつ超巨大な物体が存在する可能性が高いと発表しました。

 Deep Structure of the Lunar South Pole‐Aitken Basin - James - - Geophysical Research Letters - Wiley Online Library
 https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1029/2019GL082252

 Mass Anomaly Detected Under the Moon’s Largest Crater | Media and Public Relations | Baylor University
 https://www.baylor.edu/mediacommunications/news.php?action=story&;story=210457

 Mass on moon, discovered as by Baylor University scientists, may contain metal from asteroid - CBS News
 https://www.cbsnews.com/news/mass-on-moon-discovered-baylor-university-scientists-metal-asteroid/

 2011年、月周回軌道上を飛ぶ探査機「GRAIL」2機によって月の重力分布を高精度で測定する計画がNASAによって遂行されました。
 ベイラー大学の研究チームがこの重力分布データを分析したところ、月の裏側にある「南極エイトケン盆地」というクレーターに異常な重力分布を発見したとのこと。

 南極エイトケン盆地は月の南極付近にあり、直径約2500km・深さ約13kmと太陽系内でも最大級の大きさとなるクレーター。
 日本の月探査船「かぐや」のデータを元にマーキングされた以下の画像で、紫色で示されているクレーターが南極エイトケン盆地です。

 今回、GRAILの重力分布から見えてきた南極エイトケン盆地の重力異常から重力源を推測したところ、地下およそ300kmという深さに、何百kmもの大きさの金属が埋まっている計算になったとのこと。
 また、その質量は正確にはわからないものの、少なくとも2.18×1018kg、およそ218兆トンもあると見積もられました。
 ベイラー大学の惑星地球物理学教授のピーター・ジェイムズ博士は「ハワイ島(約1万400km2)の5倍の大きさをもつ金属塊を地中に埋めたようなものと想像してください」と例えています。

 研究チームによると、この巨大な金属塊の正体は月内部にあるマグマが結晶化して酸化したものか、あるいは約40億年前に月へ衝突した小惑星の残骸かもしれないとのこと。
 実際にコンピューターで衝突をシミュレーションした結果、小惑星の鉄やニッケルでできた核が衝突して月の地下深くにめり込み、その後月のマントルに押し上げられて地殻近くまで浮き上がってきた可能性が高いとわかったそうです。

 南極エイトケン盆地周辺で謎の物質の存在がほのめかされたのはこれが初めてではありません。
 2015年にかぐやによって南極エイトケン盆地周辺に強い磁気異常が検出され、JAXAは「南極エイトケン盆地の表層近くに磁気異常を招くような物質が分布していると推定される」と報告しています。

 月周回衛星「かぐや(SELENE)」 - セレーネの科学 - 「かぐや」の成果
 http://www.kaguya.jaxa.jp/ja/science/result_of_kaguya_j_info_201503.htm

 今回のベイラー大学の研究チームによる報告はあくまでも重力分布のデータに基づくものであり、実際に金属塊を目視で確認したわけではありません。
 しかし、NASAは「2024年までに有人月面探査を目指す」というアルテミス計画を発表するなど、これまで以上に月面探査に積極的な姿勢をみせていることから、
 今後のさらなる探査と研究によって、月に眠る謎の巨大金属の全貌が明らかになると期待できます。