学術雑誌Applied Physics Lettersに「宇宙の寒さ」から直接エネルギーを生み出す手法が確立されたとの論文がが掲載されました。これによると、絶対零度に近い宇宙空間に半導体ダイオードを向けることで、あたかもソーラーパネルが太陽光で発電するかのように、寒さからエネルギー取り出すことが可能だとのことです。

Experimental demonstration of energy harvesting from the sky using the negative illumination effect of a semiconductor photodiode: Applied Physics Letters: Vol 114, No 16
https://aip.scitation.org/doi/figure/10.1063/1.5089783

Experimental device generates electricity from the coldness of the universe
https://phys.org/news/2019-05-experimental-device-electricity-coldness-universe.html

「宇宙の寒さ」を利用した発電技術を発表したのは、富士フイルム先進研究所の小野修司氏らの国際研究チームです。この技術では、宇宙空間に向けたフォトダイオードを使用して寒暖差からエネルギーを得ることが可能だとのこと。

以下の画像は発電デバイスの概略図です。装置の中心にある半球状のフォトダイオードが、放物面鏡を介して空に向いている構造が見てとれます。
https://i.gzn.jp/img/2019/05/09/electricity-coldness/1734_m.png

この技術では、熱が物体から放射される際に発生する「negative illumination effect(負の照明効果)」により生じる、わずかな電気を集約してエネルギーに変換するのだとのこと。ただし、2019年現在のところ、絶対零度からほんの数度だけ温度が高い場所でしか電気を発生させることができません。

夜中の冷え込みで発電することはできそうにありませんが、十分に活用できそうな場所があります。それは、ほぼ絶対零度に近い宇宙空間です。

実用的な発電量ではないものの、研究チームは既に1平方メートルあたり約64ナノワット(10億分の1ワット)の電気を発生させることに成功しています。また、理論的には1平方メートルあたり約4ワットの電力を生み出すことができるとのことで、実用化されれば人工衛星や宇宙探査機などに搭載し、地球や天体の影に入ってしまって太陽光発電ができない時の補助電力などに利用できそうです。

https://gigazine.net/news/20190509-electricity-coldness/