◆ 大気に含まれる二酸化炭素の量が過去300万年で最大である可能性。地球は劇的な気候変動の中にある(ドイツ研究)

現在、大気に含まれる二酸化炭素の量は、過去300万年で最大である可能性が濃厚であるようだ。
これほどのレベルともなれば、この期間全体で初となる劇的な気温の上昇をもたらすかもしれない、と最新の研究は主張している。

現代は「第四紀」という地質時代に区分されている。258万8000年前から現在までの期間だ。
第四紀の始まりは氷河期で、グリーンランドから拡大した氷床が北アメリカやヨーロッパ北部の大半までをも覆っていた。

そして、こうした氷河は、地球の軌道の位置に応じて、4万1000年のサイクルで拡大と後退を繰り返していた。
しかし125万年から70万年前にもなると、不思議なことにこのサイクルが10万年間隔に延びた。
これを「中期更新世気候遷移」というが、地球の軌道自体は変わっていないのに、このような変化が生じた理由は大きな謎である。

この謎に挑んだのが、ドイツ・ポツダム気候影響研究所のマッテオ・ウィライト氏らだ。
彼らは、大気の条件、海洋の条件、植生、地球規模の炭素量、塵、氷床といった多彩な変数を含めたコンピューターモデルで、中期更新世気候遷移の原因を突き止めようとした。

すると4万1000年のサイクルが10万年に延びるには、2つの現象が必要であると判明した――大気中の二酸化炭素が減少することと、氷河が「表土」という堆積層を削りとることだ。
二酸化炭素が減少する原因はいくつか考えられる。

たとえば、火山からの排出が減ったこと。あるいは岩石の風化速度が変化し、海底に運ばれる堆積物の中に閉じ込められる量が増加したことなどだ。
大気中の二酸化炭素が減れば、そこにとらわれる熱も減ることになり、その分気候が低下。氷床も形成されやすくなる。

2つめの地質学的プロセスもまたサイクルの変化に大きく関わっている。
陸上に氷がない状態では、地表の一番上に表土(月の分厚い塵層がその好例)という未固結の岩石がたまる。

この表土の上に形成される氷は、しっかりとした岩盤の上に形成されるものよりも不安定となる。
そのために氷床はより速く流れるし、厚さも薄いままになる。

地球の軌道内での位置が変わると、地球表面にあたる日光の熱量が変化するが、熱くなった場合に特に解けやすいのはこうした不安定で薄い氷床だ。
一方で、氷河には表土を押しのけ、再び岩盤を露出させる働きもある。

初期第四紀にいくどか到来した氷河期では、この作用のおかげで岩盤が露出し、新しく形成される氷床はしっかりとした場所に固着することができただろう。
氷河期が延び、間氷期が短くなったのは、寒冷化した気候と、回復力のある氷床が原因であるというのが今回の研究の結論だ。

こうした発見は、現在の都市が今後も住めるのかといったことを予測するうえで重要なことだが、現在の気候変動の動向を知るうえでも大切なことだ。
ウィライト氏らのモデル研究によれば、初期第四紀における大気中の二酸化炭素は400ppm以下だったという。
だが現在の世界平均は405ppmで、まだまだ増加を続けている。

250万年前の後期鮮新世(第四紀の前の新第三紀に区分される)の世界平均気温は、化石燃料の使用が普及する以前の平均よりも1.5度高かったとモデルは示している。
そして、この気温は現時点で第四紀をとおして一番高い気温である??しかし、それもすぐ変わるかもしれない。

すでに地球は産業革命以前と比べて1.2度暖かい。2016年のパリ協定では、気温上昇を1.4度以内に抑えることが合意されたが、これは250万年前の気温に相当する。
万が一、この範囲に抑えることができず、それまでの目標だった2度まで気温が上昇することになれば、この地質学時代において最高平均気温の時代が到来することになる。

カラパイア 2019年04月09日
http://karapaia.com/archives/52272994.html