■有人月・火星探査を目指した、ISSに次ぐ大規模な宇宙計画

国際宇宙ステーション(ISS)計画に参加する各国の宇宙機関は2019年3月5日、ISSの次の計画として、月を回る有人の宇宙ステーション「ゲートウェイ(Gateway)」の開発を進める方針を固め、共同声明を発表した。

実現すれば、ISSに次ぐ大型の宇宙計画になると同時に、月や火星の有人探査に向けた大きな足がかりとなる。日本も居住モジュールの開発や物資補給などでかかわる予定となっている。

ゲートウェイとはいったいどんなものなのか、そして実現する可能性はあるのだろうか。
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■月軌道プラットフォーム・ゲートウェイ

今回開催されたのは、国際宇宙ステーション多数者間調整会合(International Space Station Multilateral Coordination Board:ISS MCB)と呼ばれるもので、ISS計画の上級国際調整会合であり、ISSの運用や利用などに関する重要な事項について、定期的に議論することを目的としたものである。

会合には、ISS計画に参加する米国航空宇宙局(NASA)、カナダ宇宙庁(CSA)、欧州宇宙機関(ESA)、ロシア国営宇宙企業ロスコスモス、そして日本からは文部科学省と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が参加した。

この中で、ISSの次のステップとして、人類の活動領域を月、さらには火星へと拡大するために、月を回る有人の宇宙ステーション「ゲートウェイ」の開発を進める方針が固められた。

ゲートウェイは、正式には「月軌道プラットフォーム・ゲートウェイ(Lunar Orbital Platform-Gateway)」と呼ばれているもので、ISSのようにモジュールを複数回に分けて打ち上げ、月を回る軌道でドッキングして建設する。そして、有人月探査の前哨基地として、また深宇宙で宇宙飛行士が長期間滞在する訓練施設として、さらに有人火星飛行に向けた土台にもなるという、壮大な計画である。

検討は2017年から始まり、徐々に姿かたちや、どこの国がどの部分の開発や打ち上げを担当するのかといった分担案が練られ、2018年中にはほぼ固まった。また今年2月には、CSAが計画に参加することを正式に表明している。
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■ゲートウェイの構成、分担案とは

ゲートウェイは現時点で、大きく6つのモジュールを組み合わせて造ることが検討されている。

1つ目は「電力・推進要素(Power and Propulsion Element:PPE)」で、巨大な太陽電池でゲートウェイの電力を作り出し、また電気推進エンジンを搭載し、軌道変更などを行うことを目的としている。開発はNASAが担当する。

2つ目は「エスプリ(ESPRIT)」と名付けられたモジュールで、名前からもわかるように欧州のESAが開発する。エスプリとはEuropean System Providing Refuelling, Infrastructure and Telecommunicationsの略で、PPEの電気推進エンジンの燃料となるキセノンや、スラスターの燃料であるヒドラジンのタンクをもつほか、通信設備やエアロックなどももつ。

3つ目は「米国利用モジュール(U.S. Utilization Module)」で、宇宙船のドッキング・ポートをもつほか、小さいながらも居住区や倉庫として使うこともできる。開発はNASAが担当する。

4つ目は「国際パートナー居住区(International Partner Habitat)」で、宇宙飛行士が滞在、生活を行う場となる。開発はESAとJAXAが担当する。また5つ目として、NASAが開発する「米国居住区(U.S. Habitat)」もある。

6つ目が「多目的モジュール(Multi-Purpose Module)」で、エアロックや、宇宙船がドッキングするドッキング・ポートなどをもつ。開発はロスコスモスが担当する。

ゲートウェイの建設は2022年から始まり、最初にPPEが打ち上げられる。ロケットは、スペースXなどの民間のロケットを使うことが予定されている。
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