大阪大学の吉森保教授と中村修平准教授らは「オートファジー」と呼ぶ細胞内の新陳代謝の機能が年齢とともに下がる原因を解明した。ブレーキ役のたんぱく質「ルビコン」が増えていた。動物実験でルビコンを抑えると寿命が延びたり老化による運動機能低下が改善したりした。2019年度にスタートアップを設立し、健康寿命を延ばす医薬品や食品の開発を目指す。

オートファジーは大隅良典東京工業大栄誉教授が仕組みを解明し、ノーベル生理学・医学賞を受けた。細胞内の不要なたんぱく質を分解して再利用する。生活習慣病やがんなどの病気とも関わりがあると注目を集める。

オートファジーは加齢に伴って低下することが知られている。研究チームはオートファジーを抑えるルビコンと老化の関係を線虫やハエ、マウスで詳しく調べた。ルビコンは加齢に伴い約1.5〜2倍に増えた。ルビコンを働かなくした線虫やハエは寿命が約20%延びた。老化による運動機能低下も改善した。

マウスでルビコンを働かなくすると腎臓の組織が硬くなる「線維化」が抑えられた。パーキンソン病を起こす実験では病気の原因たんぱく質の塊が大きくならなかった。人でも同様の仕組みがあるとみている。ルビコンが増えてしまうのを抑える物質が、自立して生活できる健康寿命を延ばせると期待する。寿命も延びる可能性がある。

スタートアップを立ち上げる吉森教授は「役に立つか分からない基礎研究から大きなイノベーションが生まれることを自ら実証したい」と話す。成果は英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに19日掲載された。

日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41469050Z10C19A2000000/