■北米を数千キロにわたって大移動するオオカバマダラ、西部個体群は86%減少

オオカバマダラというチョウは、毎年秋に大移動をすることで知られる。夏のすみかである米国北部とカナダから、冬の生息地であるカリフォルニア州とメキシコへ集団で移動するのだ。だが、最長4800キロにも及ぶ壮大な渡りは、過去のものになるかもしれない。

 2018年11月にオオカバマダラの西部個体群(北米西部に生息)を調査したところ、カリフォルニア州で冬を越す個体数が、わずか2万456匹にまで急減したことがわかった。昨年と比べて86%も減少している。また全米野生生物連盟によると、今年メキシコで越冬している東部個体群(北米東部に生息)は、昨年に比べて15%減り、過去20年で合計80%以上の落ち込みだという。

 昆虫の渡りとしては最長クラスの距離を移動するこのチョウをめぐっては、近年、悪いニュースが相次いでいる。2018年の計数結果はその最新版でしかない。減少した原因は、人間にある。人間の活動による気候変動と生息地の喪失という2つの圧力が、北米のオオカバマダラを絶滅の危機に追い込んでいる。

 調査によっていくつかの原因が浮かび上がりつつある。一つは、オオカバマダラの幼虫が食べる唯一の餌、トウワタに起きた異変。さらには、気温上昇にともなってオオカバマダラの移動が困難になっている可能性も指摘されている。「環境上の多くの脅威が重なり合うことがありえます」と、米ウィスコンシン大学の昆虫学者で、同大学の植物園園長でもあるカレン・オーバーハウザー氏は話す。

 しかし専門家らは、まだすべて失われたわけではないと言う。気候変動へのさらなる対策はもちろん、トウワタをうまく増やしてやれば、旅するチョウに欠かせない食料と居場所を提供できるかもしれない。

■トウワタはどこへ消えた?

 米カンザス大学の昆虫学者チップ・テイラー氏がオオカバマダラの危機に気付いたのは、2004年、ある農家からのメールがきっかけだった。除草剤耐性のあるトウモロコシと大豆が生み出されたことで、トウワタなどの雑草や低層植物を農家が根絶できるようになったのだ。

 オオカバマダラを研究していたテイラー氏は、不安を覚えた。中西部の渡りルートに生えたトウワタは、このチョウにとって不可欠な植物。だが新しい作物品種の出現は、トウワタの死を意味した。

 その後数年にわたるデータは、テイラー氏が最も恐れていたことを裏付けていた。オオカバマダラの数が急激に減り始めたのだ。「ごくわずかな期間でオオカバマダラは大打撃を受け、重大な影響が出ました」

 農場からトウワタが消えたことに加えて、干ばつも悪影響を及ぼした。テキサス州では2013年に干ばつでトウワタが大幅に減り、その年のオオカバマダラ減少につながった。

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