アメーバはべん毛や繊毛を持たず、細胞質を突出させた仮足を用いて移動する原生生物の総称です。日本の研究チームがモジホコリというアメーバの一種を使い、数学の難問として知られる「巡回セールスマン問題」を解くことに成功したと発表しています。

Remarkable problem-solving ability of unicellular amoeboid organism and its mechanism | Royal Society Open Science
https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rsos.180396

Amoeba finds approximate solutions to NP-hard problem in linear time
https://phys.org/news/2018-12-amoeba-approximate-solutions-np-hard-problem.html

An Amoeba-Based Computer Calculated Approximate Solutions to a Very Hard Math Problem - Motherboard
https://motherboard.vice.com/en_us/article/gy7994/an-amoeba-based-computer-calculated-approximate-solutions-to-a-very-hard-math-problem

慶應義塾大学の環境情報学部准教授である青野真士氏らの研究チームは、原形質流動によって移動して落ち葉や朽ち木の表面などに生息するアメーバの一種「モジホコリ」を使い、巡回セールスマン問題の解決に当たらせるという実験を行いました。モジホコリは脳を持たないにもかかわらず、高度な知能に匹敵するような記憶力・判断力を持っていることで知られる単細胞生物です。

巡回セールスマン問題とは組合わせ最適化問題の一種であり、同じ都市を2度訪問せずに複数の都市全てを訪問し、出発点に戻ってくる最短ルートを導き出すというもの。巡回セールスマン問題は巡回するべき都市の数が増えるにつれて、コンピューターが問題を解決するのに必要な時間が指数関数的に増えることで知られています。たとえば訪問都市が4つである場合は最適解のルートが3つしかありませんが、訪問都市が8つに増えた場合、最適解のルートが2520個にまで増加してしまいます。

研究チームは計64個の狭いルートを持つ星形プレートの下にモジホコリの栄養源となる寒天プレートを置き、その上にモジホコリをのせました。実験では研究チームがモジホコリに「巡回セールスマン問題を解くアルゴリズム」を与え、モジホコリはそのアルゴリズムに従って解を導き出すという一種のコンピューター的役割を果たしています。実験をまとめたムービーがこれ。

■動画
Physarum: Remarkable problem-solving ability of unicellular amoeboid organism and its mechanism
https://youtu.be/8GCJq-HQbyk

モジホコリは秒速1mmのスピードで原形質を動かして仮足を伸ばし、プレート上を自由に動くことが可能です。モジホコリはなるべく多くの面積を寒天プレートと接触することで栄養を最大限吸収しようとしますが、光を嫌う性質を持っているために光で照らされた部分に体を広げることはできません。研究チームは星形プレートのルートを選択的に光で照らすことができる装置を開発し、狙ったルートからモジホコリを後退させることができるようになっていました。

続きはソースで
https://i.gzn.jp/img/2018/12/25/amoeba-solves-hard-math-problem/img-snap08038_m.jpg


GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20181225-amoeba-solves-hard-math-problem/