世界で数千万人を悩ませているアルツハイマー病は、早期に見つけることがとても難しい病気です。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)放射線医学画像診断学科のジェ・ホン・ソン教授らは、脳のスキャン画像を用いてニューラルネットワークのトレーニングを行い、40件の事例で、アルツハイマー病の早期診断に成功しました。
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A Deep Learning Model to Predict a Diagnosis of Alzheimer Disease by Using 18F-FDG PET of the Brain | Radiology
https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2018180958
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Computer vision identifies signs of early Alzheimer's up to 6 years before clinical diagnosis | VentureBeat
https://venturebeat.com/2018/11/06/ai-identifies-early-alzheimers-disease-up-to-6-years-before-clinical-diagnosis/

Researchers train AI to spot Alzheimer’s disease ahead of diagnosis
https://www.engadget.com/2018/11/06/researchers-train-ai-spot-alzheimers-disease/

アルツハイマー病の診断にAIを用いる試みはほかでも行われていますが、UCSFの研究チームではこれまで学習に用いられてこなかったバイオマーカーに着目。アルツハイマー病研究を進めているアルツハイマー病神経イメージングイニシアチブ(ADNI)のデータセットに含まれる、1002名の患者から得られた2109例のFDG-PET画像を使用しました。FDG-PETは、FDG(放射性グルコース化合物)を血流内に投与して体組織に取り込ませ、FDGがどれぐらい取り込まれているかに応じて組織の代謝活動を測定できるというイメージング技術です。

データセットの90%で深部学習アルゴリズムをトレーニングし、残り10%でテストを行った結果、アルゴリズムはアルツハイマー病に対応する代謝パターンを学びました。

これがFDG-PET画像の一例。Aはアルツハイマー病の76歳の男性の画像、Bは軽度認識障害の83歳の女性の画像、Cはどちらでもない80歳の男性の画像で、AはCに比べてやや灰色に見えます。一方で、BとCを肉眼で見分けることは困難です。

by Radiological Society of North America

この学習を経て、患者40名の2006年から2016年の間のスキャンデータを検査した結果、アルゴリズムは精度100%でアルツハイマー病を見つけることに成功し、さらに「アルツハイマー病ではない」という診断も82%の精度で下せたとのこと。医師による最終診断よりも平均で6年早く、アルツハイマー病を検出できたそうです。

アルゴリズムの性能について非常に満足した結果だと語ったソン教授。今回の研究の対象は小規模なものであり、さらなる研究が必要であると断りを入れつつ、症状が現れてからアルツハイマー病であると診断するのでは脳の損失が大きすぎるが、早期に発見することで病気の進行を遅らせたり食い止めたりするためのより良い方法を見つけられる可能性が出てくると語りました。

なお、FDG-PETをAIを用いて分析することでアルツハイマー病の早期予測が可能になるのであれば、βアミロイド斑やタウタンパク質を用いた手法でも、別の何らかの予測が可能であることをソン教授は示唆しています。

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20181107-alzheimer-diagnosis/