■本研究成果のポイント

世界に生息する28種のカエルについて性染色体注1を同定した結果、過去5500万年の間に13回、性染色体の高頻度な取り替え現象が明らかになりました。
性染色体の取り替えはランダムではなく、5本の染色体の間で繰り返されていることが明らかになりました。
哺乳類では1億7千万年、鳥類では1億年の間、性染色体の取り替えは生じていません。それに対し、カエルでは5種類の性染色体を高頻度で取り替えるという、性染色体進化の新しい様式が解明されました。

■概要

広島大学両生類研究センターの三浦郁夫准教授および、スイス、アメリカ、イタリア、フランス、カナダ、メキシコ、スペイン、韓国そしてアルメニアの国際共同研究チームは、世界に生息する19種のアカガエル類注2について性染色体を同定しました。そして、これまで調べられた9種と合わせ合計28種において、系統進化に伴う性染色体の進化様式について解析しました。その結果、アカガエル類には5種類の性染色体が存在し、種の間で非ランダムな取り替えが生じていたこと、さらに、過去5500万年の間に13回という、非常に高い取り替え率が明らかになりました。ヒトや鳥類の安定した性染色体とは異なり、非ランダムな高頻度置換という、性染色体の新しい進化様式が明らかになりました。

この研究成果は、「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

■用語解説

(注1)性染色体
オスないしメスの性を決める染色体を性染色体と呼び、性を決定する遺伝子が乗っています。それ以外の染色体を常染色体と呼びます。

(注2)アカガエル類(True frog)
アカガエル科に属するカエルで池や水田を主な生息地とします。わが国では、ニホンアカガエル、ヤマアカガエル、トノサマガエル、ツチガエルなどがこれに含まれます。

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図1 28種のアカガエル類における性染色体の取り替え
5種類の性染色体を左上に色付けで示してあります。なお、グレーを含む合計10本の染色体はネッタイツメガエルの全染色体に相当します。5色の染色体の下には、それぞれを性染色体にもつカエル名をリストで表しました。右側には28種のカエルの系統樹を示し、性染色体の取り替えが起きた時期を矢印で示しています。おそらく第1染色体(黒色)が元祖型の性染色体であり、それが合計13回(矢印に番号を振ってある)に渡って別の性染色体へと取り替えられました。矢印の色は取り替えられた性染色体を示します。グレーは性染色体がまだ不明のカエルです。

https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/47709